#1698 ブリーフィング!狂化合宿(他ギルド)企画!
各地で驚愕と驚愕と驚愕で阿鼻叫喚が巻き起こったが、それはそれとして放課後、〈エデン〉でも急遽ブリーフィングが行なわれていた。
「今日の議題は、SSランク戦に向けてギルドの強化合宿をしよう、だ!」
「その強化するギルドが自分たちのギルドじゃないってどういうことかしら?」
みんなが集まるギルドハウスの大ホールで、ホワイトボードにデカデカと「ギルド強化必須!」と書かれた文字をジト目で見ながらシエラがツッコミを入れる。
シエラ、是非そのジト目をこっちに向けてくれないだろうか?
俺は詳しく説明をする。
「みんなも六段階目ツリーとなり、〈天下一パイレーツ〉戦を経験して思ったことだろう。俺たちは強くなりすぎたと!」
「ゼフィルスがやったことじゃない!」
ふぐっ! ラナ、良いツッコミするじゃないか。
俺はちょっとニヤつきそうになる顔を理性的に押さえながら説明を続けた。
「そして現在、大変なことにほとんどのギルドが六段階目ツリーに至っておらず、またSSランク戦が行なわれる2月28日までに六段階目ツリーが開放されるかは難しいかもしれないと情報が入った! このままでは、〈天下一パイレーツ〉戦と同じく、〈エデン〉が一方的に勝ってしまう!」
「えっと、それは良いことなんじゃないの?」
純粋なクイナダの疑問。
クイナダはとても純粋だ。いつまでもそのままでいてほしい。
「こほん。確かに良いことだろう。だが、他のギルドももう六段階目ツリーが目の前に来ているところが大半なんだ。そんなおり、時期的に六段階目ツリー開放が間に合わなかったから勝ったというのは、〈エデン〉的にはよろしくない」
「なるほど。ゼフィルスさんは、もう少し時期に余裕が有り、自分たちも六段階目ツリーを開放していれば勝負は分からなかったんだ、という言い分を排除したいんですわね」
「これはSSランク戦。Cランクギルドまで巻き込んだ学園一を競うランク戦。そんな中、唯一の六段階目ツリー開放ギルドが優勝した、なんて結果は出来レースに近いと、そういう感覚ですね」
「こほんこほん! まさにリーナとアイギスの言う通りだ。また、学園的にもこれは助かることで、今回六段階目ツリーを開放して卒業した最上級生の方々は、公式ギルドに配属されてもっと学園のダンジョンを盛り上げてくれるだろうという狙いもある。――決して手応えが無いとか、もうちょっと強い人たちとギルドバトルしたいとか、そういう個人的な意味じゃないんだ」(キリッ)
「…………」
俺のセリフになぜかシエラがジト目で見る。
やった! 今度はこっち向いてくれたぞ! ひゃっほー!
「だから結論として他のギルドを育てちゃおうぜって」
「ゼフィルス先輩は相変わらず考えがぶっ飛んでますの!」
「なんか最後のセリフが本命っぽかったのはあたいの気のせいか?」
ざわめくギルドメンバーたちからカグヤ、サーシャ、ゼルレカのツッコミがよく聞こえた気がしたんだぜ。ゼルレカ、気のせいだって!
「〈エデン〉は現在、〈竜ダン〉を攻略し、最上級ダンジョンの入ダン条件を満たした! レベルも〈竜ダン〉で育成できる65上限まで上げきっているし、今から慌てて未踏破のダンジョンを攻略する必要は無い」
「いえ、未踏破のダンジョンは普通そんな気軽に攻略しに行くところではないですよ?」
「というわけで、みんなにも協力してほしい。各ギルドにメンバーを派遣し、LV60まで上げられる〈巣多ダン〉の深層へ案内してあげてほしいんだ! そうすれば後は向こうが頑張るだろう。俺たちは連れていって慣れるまで多少の手ほどきをするだけでいいんだ!」
途中エステルからツッコミが入った気がしたが、きっと気のせいだろう。
なんだか今回ツッコミ多くない? ちょっとテンション上がっちゃうんだけど!
「仕方ないわね。私は構わないわ。どうせ学園のトップを決めるのだし、後で文句が言えないくらい育ててけちょんけちょんにしてあげましょ!」
「ラナ様が良いのでしたら私も構いません。〈戦艦〉での運搬も構いませんよ」
「わたくしも賛成ですわ。六段階目ツリーが相手という経験もしておきたいですし、今の最上級生さんが本当の実力を引き出した状態で戦う経験がしたいですわ」
「確かに、最上級生はもうすぐ卒業。そうしたら学園の平均的な戦力はガタ落ちしてしまうし、やるなら今が最適、ということなのね」
「その通りだ! この機会を逃せば、俺たちに敵う実力者たちがみんな卒業してしまうという悲しい結末になってしまう! 先輩たちには是非脂の乗ったこの時期に実力を発揮してもらいたいんだ!」
ラナのいいよを皮切りに、肯定的な意見が出始める。
そう、最上級生はもうすぐ卒業。というかSSランク戦が卒業式の手前だ。最上級生が一番強くなっている時期である。
そして、ほとんどのギルドではギルドマスターが最上級生なんだ。
〈ギルバドヨッシャー〉のインサー先輩、〈百鬼夜行〉のホシ先輩、〈千剣フラカル〉のリン先輩に、〈獣王ガルタイガ〉のサテンサ先輩など、強者はみんな最上級生なのだ。
これを逃せば、うま味の乗った美味しい戦いはしばらくできなくなってしまう!
ここはたっぷり餌をあげてさらに脂を付けさせて美味しくいただく場面!
すると、考えにふけっていたシエラが口を開いた。
「分かったわ。やりましょう」
「「「「おお!」」」」
シエラの一声にざわめく室内。
シエラが良いと言えばギルドに大きな影響を及ぼすのだ!
「さすがシエラ! 話が分かる! ――みんな、聞いての通りだ! これから〈エデン〉は、今週と来週を使って他のギルドを強化する! もちろん、自分たちの強化も忘れない。ローテーションを組んでボス周回もするぞ! 基本的に他のギルドは深層に連れていき、自身で力を付けてもらおうと思う。故に俺たちがするのは基本牽引だ」
決定したので作戦を説明する。
他のギルドと合同攻略してみたいという希望者がいれば叶えるし、ボス周回して自身を高めたいという要望があればもちろん希望に添うよう割り振る。これも説明した。
「じゃあ、あたいが〈獣王ガルタイガ〉を希望しても?」
「おう。里帰りならぬギルド帰りも大丈夫だぞゼルレカ」
「それは、確かに嬉しいかもしれない」
ゼルレカが率先してそう言ってくれたのが功を奏し、みんな前向きに話し合いが進むようになった。ナイスだゼルレカ!
「そういえば、〈戦艦〉の2台目が完成したのよね?」
「おう! タネテちゃん頑張ってくれたぜ! この2台目を是非アルテに使ってもらおうと思う!」
「わ、私ですか!? いいんですか!? アイギス姉さまやロゼッタ先輩は?」
「私は構いませんよ。ゼニスがいますからね」
「クワァ!」
「私も〈ブオール〉に乗ってますので構いません」
「ロゼッタの〈ブオール〉も客車を3台繋げれば40人近く乗車出来る。運搬力は段違いに高いし、期待しているぞ」
「お任せください。〈巣多ダン〉は言うほど悪路ではありませんでしたし、十分〈ブオール〉で走破可能ですから」
今回、SSランク戦は〈35人戦〉なので、出場者35人と〈エデン〉の5人で計40人運べれば問題無い。
これで大量の人を最奥に運搬できるだろう。
「問題は上級中位ダンジョンにも入っていないところですね」
「ああ。〈天下一パイレーツ〉か」
あそこはどうしよう?
35人も〈巣多ダン〉に連れて行くには時間が足りないと思われる。
その時は〈エデン〉が、いや、俺が全力で手を貸してやろう。
それに最悪、今回間に合わなくても来年度がある。あそこは1年生がギルドマスターだしな。
そう思っていたらセレスタンが来た。
「ゼフィルス様、メッセージを送ったギルドから続々とご返信が届いております」
「早いな!? 決定して一斉送信したのってついさっきだよな!?」
シエラのOK宣言のすぐ後、セレスタンにはすでに各ギルドにメッセージを送ってもらっていた。
その返事がどんどん戻って来てるらしい。全部イエスとのことだ。ニヤニヤ。
「――よし、早速動こうか!」
イエスならば問題は無い。
そして早ければ早いに超したことはない!
時間には限りがあるのだ! 今日、いや、むしろ今から動く!
「パーティや担当を分ける。それが終わったら出発だ。まずはみんな、希望を出してくれ! どこのギルドと組みたいか、それを元に今すぐスケジュールを組むぞ!」
「「「「おおー!」」」」
こうして〈エデン〉主催のギルド強化合宿(他ギルド)企画は幕を開けた。
俺は最初どこのギルドに参加しようかなぁ。




