#1688 〈竜巣洞〉番人全撃破!竜樹を登れそこにある
「ぜぇぜぇ。た、倒したーーー! ぼくはやりとげたーーーー!!」
『見事なり。小さな研究者よ』
「うがー! ここまでぼくに苦労を掛けたんだ、君は研究素材にしてやるよ!」
7班、ニーコ、フィナ、エリサ、シヅキ、エフィのところでは〈第五竜巣洞〉の番人、〈ドラグローブ・竜・アーチャーリー〉がエフェクトに消えるところだった。
あのニーコのHPが6割に減っており、かなりの激戦(?)だったことが伺える。
「まぁまぁニーコさん。勝てたのだから良いじゃないですか」
「そうそう。はい。『ダークハイヒール』!」
「いやぁ、強敵だったねぇエフィ?」
「大・満・足」
フィナが荒ぶるニーコを宥め、エリサが回復し、シヅキがエフィに振って勝利に満足していた。ただ、不満なこともある。
「むむむ。宝箱は、やはり出ないか」
「素材も出ないよね。すっごく不思議なんだけど」
「ダンジョンではドロップしてた〈竜〉たちも、ここではドロップ何も落とさなかった」
「つまり、ここがとても特殊なエリアだということだね。こんなのは見た事も無い。これも研究しがいがありそうだよ」
ニーコが難しい顔でエフェクトの跡を見ると、寄ってきたシヅキとエフィも少し残念そうな顔をする。
ドロップは無し。
これは、ここ試練中の〈竜〉全てに共通することだったのだ。だが、レアイベントが終われば報酬があるのはみんなの共通認識。こんな試練を課すのだ。さぞとんでもない報酬が待っているに違いない。
ニーコは心の中でほくそ笑むのだ。
と、ここでエリサがとある壁が無くなっているのに気が付いた。
「あ! 見てみてみんな! 階段が現れたわよ!」
「進め、ということでしょうか。――どうしますかニーコさん?」
フィナが7班のリーダーであるニーコに聞く。
「もちろん探索だ! 進むのだ! ぼくについてこーい!」
ニーコの答えはもちろん探索だった。
一度〈スターライト〉に戻るという選択肢もあったが、そっちはリーナから通信が来た時に応えれば良いだろう。
まずは探索。お宝発見。これ大事。
試練とやらもどうやら大詰めの予感。
「きっとこれまで倒した〈竜〉の報酬にふさわしいお宝がこの奥に隠してあるに違いない! ぼくたちが一番乗りするんだーーー!」
「楽しそう! あ、でも一応連絡はしておくね――『悪魔召喚』カイム!」
ニーコが駆け出したので、通信係のシヅキが悪魔を飛ばし、みんなでニーコを追いかけていったのだった。
◇
『見事なり、試練を乗り越えし者よ。この先へと進むがいい』
「「「やったー!」」」
ここは〈第六竜巣洞〉。
その番人である、〈ドラグローブ・竜・ハンマーシャイン〉を倒したのは8班。
サチ、エミ、ユウカ、シャロン、ルキアのパーティだった。
こっちは第五の番人よりも親切で、倒し終わった後にはちゃんと次に行くべき道を示してくれた。
というよりも、元々は第六から撃破し始め、そのまま第一まで〈竜樹〉を登っていくという仕様だったので、ここで進み方をレクチャーされるのである。
第五の番人が手抜きをしたのではなく、最初から第六の番人に教えてもらっているから道を指し示す必要は無いだろうという判断だったのだ。
ゲームでは、こんな6箇所同時攻略なんて、操作的に不可能なので普通は地上に近い第六の番人から攻略して行くのがセオリーだった。
まあ、そうは言ってもショートカットは可能だし、どこから攻略しても別に問題は無いので、ゼフィルスは仲間を信じて6箇所全てに送り出したのだが。
そのまま第六の番人が消えると、部屋の一部の壁が左右に開き、巨大な――それこそ竜でも登れそうなくらい大きな階段が現れた。
「やっほー、いっちばん乗り~!」
「あ、サチっちズルい! というか速い! え、ユウっちも?」
「残念だが一番乗りは私のようだ」
サチ、エミ、ユウカの3人の中で一番AGIが高いのはユウカだ。
最初はスタートダッシュを決めてリードしていたサチも、到着前に抜かされてしまい、一番はユウカだった。
「みんな速いよ~」
「ほらほらシャロンちゃん、頑張って~」
この中で一番遅いシャロンがルキアに手を引かれて最後に到着。
エミは魔法使いだが、装備の影響でAGIが400近いのである。
シャロンは300弱なので、100近い差があるのだ。
「さあ! この先に何があるのか! 行って確かめよ~!」
「「「「おおー!」」」」
8班はとっても明るく元気いっぱいだ。
◇
7班のニーコ班が階段を上ると、大きな広間に到着する。
だがそこに居たのは4班のメンバーだった。
「あ! ニーコお姉ちゃんなのです!」
「エリサさん、フィナさんも!」
「ルル君にシェリア君? 4班のみんなじゃないか!」
4班はルル、シェリア、アルテ、キキョウ、アリスで構成されている。
見る人が見れば分かるだろう。
あ、ロリレンジャー3人に+シェリアがいると。
そこに到着した7班には残りのロリレンジャー、エリサとフィナが居たのだ。
ルルはもちろん笑顔だったが、シェリアはもっと笑顔で再会を喜んだ。
「ほほう。ここは4班が担当していたんだね。ぼくたちの戦った相手はその場所を〈第五竜巣洞〉、そして自分をその番人と名乗ったのだが、もしかして君たちも名乗られなかったかい?」
「名乗られてましたよ! 確かここは〈第四竜巣洞〉で、えっと、お名前なんでしたっけ?」
「ガクッ。アルテさん、〈ドラグローブ・竜・マジックケイプル〉と名乗っていました」
「黒くてかっこよいドラゴンさんだったの~!」
「魔法をじゃんじゃん使ってブレスまで撃ってきたのです!」
「ほほう、第四。ぼくたちが来たのは第五だったし、つまりはあそこを登れば〈第三竜巣洞〉というところに到着する可能性が高そうだね」
「ということは第六に向かっていたメンバーも登ってくるっていうこと?」
「まあ、待機を選択していなければここまで登ってくるだろうさ」
シヅキの言葉にうむとニーコが頷く。
外から見たとき、〈竜樹〉にある竜巣洞が上下一定間隔で開いていたのをニーコは見逃していなかったのだ。
「ふむ。4班は待機を選んでいたんだね?」
「なのです! シェリアお姉ちゃんが一度アルテお姉ちゃんの騎獣に乗って〈スターライト〉に帰還した方が良いって言ったのです!」
「ほう、シェリア君が。え? シェリア君がそう言ったのかね?」
「なのです!」
「ニーコさん、なにか?」
「え? いや、何でもないんだよ?」
「何でもないならなぜ私にそんな観察するような目を向けているのですか? その取り出した『看破』アイテムはなんですか?」
悲報。
シェリア真面目バージョン、ニーコに何かを疑われる。
まあ、疑いはすぐに晴れた。なにが疑われていたのかはロリのみんなは知らない。
とここでリーナから通信が届いた。
「『みなさん、上へ向かってください。全ての竜が倒されたのを確認しましたわ。そして〈第一竜巣洞〉からさらに上へ通じる階段が現れたとのことですわ』」
「お宝はそこかね! これはジッとしてはいられないよ! すぐに行くよ!」
◇
「みんな、集まったわね」
「シエラ君! 待たせたね!」
「ひ~、階段キツかった~」
ここは〈第一竜巣洞〉。
ニーコたちと合流したサチが到着したときにはすでに〈竜〉の姿は無く、2班であるシエラ、ノーア、クラリス、レグラム、オリヒメと5班、そして6班が集まっていた。
「早速だがシエラ君、ここの番人はどなただったのか聞いても良いかね?」
「ええ。みんなが送られた竜巣洞にもそれぞれ番人が居たと聞くけれど、ここに居た竜人はこう名乗ったわ。『我は〈第一竜巣洞〉の番人〈ドラグローブ・竜・ソードン〉だ』と。名前の通り、剣使いだったわ」
ニーコの知的好奇心にシエラがしっかり答えてくれる。これにて全ての番人の名前が明らかになった。
「ふむふむ。〈第一竜巣洞〉から〈第六竜巣洞〉なるところまで、それぞれ〈剣〉〈槍〉〈斧〉〈魔〉〈弓〉〈鎚〉を使った専門の達人たちが待ち構えていたんだね。そして、これで100体の竜が倒されたことになったよ」
そう。ニーコの言う通り。
これでレアイベントに登場した100体のボス戦は終了。
今回の番人6体が最後のボスだったのだ。つまりは試練も終了。そうなれば……!
そこにリーナから改めて指示が出る。
「『その階段を上に登ってくださいみなさん。わたくしたちもすぐに参りますわ』」
「了解よ」
短くそれだけ返すクールなシエラ。
間違い無くここに集まる30人の代表でありリーダーである。
「みんな、聞いた通りよ。ゼフィルスたちとは上で合流するわ。出発しましょう」
それを聞いてみんなテンション爆アゲだ。
「おおー! ぼくの『お宝レーダー』にもビビビッてきているよ! この上にはとんでもないお宝があるに違いない!」
「ふぉー! テンション爆アゲなのです!」
「なの~!」
「か、かわゆっ!」
今すぐ走り出しそうなテンションのニーコとルル、そしてルルの真似をするアリスとその光景にぶっ倒れそうになるシェリア。
試練を突破したらお宝と相場が決まっている。テンション爆アゲは当然だった!
しかし、走り出す者は居ない。先頭で進むのはもちろんシエラだ。
それは何かあった場合、必ずシエラが守ってくれるからという信頼に他ならない。
ニーコたちもワクワクの気持ちを抑え、シエラのすぐ後ろを追随した。
そして一行は、とうとう樹冠に覆われ、周囲からは見ることのできない天辺へとたどり着いた。
――――そこではゼフィルスが待っていた。




