#1686 〈ドラグローブ・竜・ランスピア〉対5班戦!
「動きを封じる! 引き寄せろ引力よ――『グラビティフィールド』!」
『ぬん!』
メルトの『グラビティフィールド』は引力の形成。まるでブラックホールのような黒い球体がモンスターとその技を引き寄せる六段階目ツリーだ。
対して〈ランスピア〉は重力に引かれつつも大槍の先にドラゴンの顎を顕現して『グラビティフィールド』を攻撃せんとする。
「今度は破られないよ! 『エクサ・バリア』! 『アブソープション』!」
「ここで当てます! 『ディボルト・オウ・シードン』!」
そこへミサトが六段階目ツリー、最強のバリア『エクサ・バリア』を展開し、加えて『アブソープション』で強化した。
連続の顎の突きは『エクサ・バリア』を破れず、『グラビティフィールド』を破壊できずに動きが制限され、アイギスの光線にHPを減らす。
「『スターソニック・レインエッジ』!」
そこにカルアがソニック系の六段階目ツリーで素早く斬り込んだ。移動してから雨のように連続攻撃を叩き込み、そのまますり抜けると、続いてはリカ。
「『二刀斬・一念通天』!」
左右から挟み込むようにして〈聖属性〉の六段階目ツリーの斬撃が切り裂いた。
だが、それに反応する〈ランスピア〉がバリアへの攻撃をやめ、リカに標的を変えて大槍で突く。
『はっ!』
だが、その時にはリカは受けの姿勢を取っていた。
「『一刀斬・月光閃華』!」
カウンタースキル。
いつの間にか左の刀は無く、両手で右の刀を握る一刀流。
相手に掛かっている全ての強化を無視し、攻撃を受け流しながら反撃で斬るという正道の大技だ。もちろんこれも六段階目ツリー。
一瞬で懐に潜り一閃。
ズドンと決まれば〈ランスピア〉のHPも大きく削れた。
さすがはバフ無視のカウンター。
加えて〈ランスピア〉の身体はここでミサトの『エクサ・バリア』に貼り付けになる。メルトの重力がまだ働いているからだ。
「『ドラゴンラッシュ・エクスランスレイン』!」
ここでアイギスとゼニスが接近、ドラゴンラッシュとかなにそれ怖い。ゼニスの爪や尻尾、アイギスの突きのラッシュ技。
貼り付けにあい、カルアとリカからも圧力を受けた〈ランスピア〉はたっぷり10秒間、凄まじい攻撃に晒された。
全員が五段階目ツリーや六段階目ツリーならまともな攻撃が入ると理解する。
「いいぞ! この調子で俺とミサトとリカで動きを止める! カルアとアイギスは攻撃をし続けろ!」
「ん!」
「任せてください!」
「クワァ!」
ようやく攻撃パターンが出来始める。
好きに動かれると危険だ。故にメルトが重力で動きを制限し、ミサトがそのサポート。リカがタンクで攻撃を捌いて、その間にカルアとアイギスが攻撃しまくるという戦法が回り始めたのだ。
これが功を奏し、幾度も反撃にあいながらも〈ランスピア〉のHPを2割まで減らすことに成功する。
『見事なり! 見よ我が最終形態! 我の真の姿を倒して見せよ!』
そう言って形態変化し始めた。そう、形態変化をし始めたのだ。ただの変身じゃない、最奥ボスしかできないはずの、攻撃無視の変身機能。
それをレアイベントで登場したボスの1体が使う。
幸いHPバーは3本在るわけでは無く、2割のままだが、これにはメルトやアイギスなど、一部のメンバーが衝撃を受けた。
「形態変化だと!」
「攻撃、通りません! どんどん大きくなっていきますよ!」
「クワァ!」
〈ランスピア〉の身体をメキメキと唸らせながら巨大化し、『エクサ・バリア』が割られ、『グラビティフィールド』も粉砕され、その場に登場したのは巨大化した二足歩行に近い竜。
黒色の鱗が輝きを増し、全長は20メートルにも迫る巨大さ。先程の姿より10倍近く大きくなった〈ランスピア〉だった。
「大きい! というか大きくなりすぎだよ!」
ミサト、これにはツッコむ。
『行くぞ』
形態変化が終わった瞬間、リカに強力なクローが迫った。
「! 『制空権・神閃域』!」
あまりに速い攻撃だったが、さすがはリカ。しっかり六段階目ツリーの『制空権』を発動していた。
これは防御スキル。自分の間合いに入ったものを神速の閃撃ではじき返す。それだけじゃ無く間合いにいる敵をも刀の連続斬りにより間合いより追い立てる攻防一体の強スキルだ。だが。
「なに! 強い! それに、相当硬いぞ!」
ガガガガガガガガガガガガッと凄まじい連撃を叩き込まれているはずのクローだが、侵攻は止まれど間合いから追い出すに至らず。なんとリカの六段階目ツリーとせめぎ合ってしまう。これにはリカも相当驚いた。なにせ発動しているのは六段階目ツリーである。
これではじき返せなければ、これ以上はユニークスキルしかない。
だが、ボスを相手にしているのは1人では無いのだ。
「再び動きを封じるぞ! 凍り付け――『コキュートス・ゼロ・ディザスター』!」
「全部吸い取れ! 『オールドレイン・レジェンド』!」
「吹き飛ばします! 『真・ドラゴンブレス・ロングスラスト』!」
リカが攻撃を受け止めている間にメルトが氷属性の単体攻撃魔法をぶち込み、ミサトはドレイン系でもって全てのステータスを奪い、アイギスに付与。
アイギスはパワーアップしながら六段階目ツリーに至った『ロングスラスト』の上位ツリーで攻撃する。追加で『ドラゴンブレス』もお見舞いだ。
全ての攻撃が突き刺さると思いきや、〈ランスピア〉の行動はその巨体に合わず凄まじい速さで身を退き、回避。なんと翼を広げてその巨体で縦横無尽に壁を駆け巡りながらリカに攻撃を仕掛けてきたのである。
「速すぎる!」
「でも、私より、遅い! 『神速瞬動斬り』! 『64フォース』!」
ついていけるのはカルア1人。だが、カルアの攻撃は黒の竜鱗に阻まれてHPが全然減らない。
これは上位竜の持つスキル『上竜鱗』で、一定以上のダメージに満たないダメージを99%カットするという、とんでもない効果のスキルである。
四段階目ツリーではかすり傷にもならないのだ。
「だが、空を飛ぶのなら! 『アーカーシャ・グラビティ』! くっ! 『落下防止』持ちか!」
すぐにメルトが動きを封じるべく地面へ叩き付けようとするも、落下せず。
ならばとメルトは切り替える。
「これならば防げまい――『グラビティ・デトネーション』!」
瞬間、大量のブラックホールが出現する。これは『三十六・重穴展開』に近い魔法だが、その大きさがダイナミック。
なんと1つ1つが直径10メートルとデカく、それを大量に〈ランスピア〉の周りに出現させたことで空間がねじ曲がったようにグニャっとしたのだ。
中心の〈ランスピア〉は飛行も満足にできず囚われてしまう。
「止まった!」
『見事なり、だが、フンッ!』
「ええ!?」
「これも吹き飛ばすというのか! だが――」
しかし、それも数秒と持たず『竜波』という身体から波動を全周囲に放つ防御スキルにより粉砕されてしまう。
だが、動きは止めた。ここを逃す〈エデン〉のアタッカーではない。
「ゼニス――『神飛・ドラゴンオーバーストライク』!」
「クワァァァァァ!!」
そこに突っ込むのはゼニスとアイギス。
そのスキルは『オーバードライブ』と『騎槍突撃』の上位ツリーにして最速の突撃スキル。
「はああああああ!」
『グアァ!?』
命中。そのままアイギスの槍とゼニスの突撃は止まらず、〈ランスピア〉をボス部屋の壁に激突させた。
「ん! 『ナンバーワン・ソニックスター』! 『急所一刺し』!」
そこへ反応したのはカルア。
すぐにユニークスキルを発動すると、激突のノックバック状態で硬直する〈ランスピア〉に見事『急所一刺し』をヒットさせたのだ。
たとえダメージが99%カットされようとも1%のダメージと効果は通る。
カルアの『急所一刺し』は見事にその役目を全うし、〈ランスピア〉をダウンさせた。
「ナイスカルア! 今だ、総攻撃! ――『ジェネシス・ヘクサ・アポカリプス』! 『グラビティ・メテオ・エクスボール』! 『五隕星重力砲魔法陣』!」
「――『128スターフィニッシュ』! 『256ジ・エンド』! 『512・ヘル』!」
「『アルティメット・ドラゴンクロウ』! 『ディボルト・オウ・シードン』! 離れてください! ――『神竜の業火・ファイナルエクシードブレス』!」
ズドドドドドドドーーーーーンと凄まじい衝撃が部屋の中に響いた。
メルトの『ジェネシス・ヘクサ・アポカリプス』は六属性の混合魔法攻撃だ。
六色に光る凄まじい衝撃がヒットすると、それを皮切りにしてメテオ、さらに五芒星の魔法陣から5つの重力砲が放たれ大ダメージを与える。
カルアが斬ったのは、たった6閃。
しかし、その効果は大きく、合計896斬撃を叩き込んだ。
アイギスはダウン直後にゼニスの強力なクローを直撃させて空へと離脱。
大量の光線の乱射で攻撃したあと、超大技にしてゼニスとアイギス最強スキル、『神竜の業火・ファイナルエクシードブレス』を発射した。
凄まじい光を放つドラゴンブレスの究極版が〈ランスピア〉へと直撃した。
『見事、なり』
その言葉が響き、閃光が晴れた後には、HPがゼロになり膨大なエフェクトの海に沈む〈ランスピア〉の姿があった。
〈第二竜巣洞〉の番人、〈ドラグローブ・竜・ランスピア〉は、こうして5班が撃破した。




