#1669 最強第六位の実力と〈スターライト〉の実戦!
扉の中に入ると、やはりこれまで同様、部屋という定義がぶっ壊れたオープンなボス部屋の光景が俺たちの前に広がった。
〈火山ダン〉の時と同じように、オープンフィールドなボス部屋だ。
「また広い空間に出たわね」
「あれ? ボスはどこよ?」
「ここは、廃墟、ですか?」
「……今まで教会や大聖堂などと来て、最後は廃墟、いえ、大聖堂跡地とでも言うようなかんじですね」
まずシエラが感想をこぼしながら盾を構えて警戒し、ラナがボスをキョロキョロと探し、エステルとシェリアはフィールドを観察する。
このボス部屋はシェリアの言う通り、以前はなにか大きな、大きすぎる建物が建っていたかのような跡地だった。
外壁はボロボロになって僅かに残っており、屋根などは皆無で、残っている屋根の名残も全て倒壊して地面に落ちていた。
今まで登場してきたダンジョンの最奥とはかなり形式が違う。
これまで登場してきたボス部屋に遮蔽物なんてほとんど無かった。それは遮蔽物を盾として使うことができるためにそういう設定になっていたのだが。
それがこんなにダンジョンオブジェクトの遮蔽物が落ちているなんて、いったいどういうことだろう?
俺も最初は戸惑ったものだ。まあ、ボスが飛んでいるので遮蔽物が遮蔽物としての役割をこなしてくれなかったんだが。それはともかくだ。俺はこの時点でとんでもない事実に気が付いていた。
「『四聖操盾』! みんな、上だけじゃなく周りにも気をつけて」
「いや待て、これは――」
俺の言葉に全員が俺を見る。そんな中、上空を見渡し、確信しながらも俺は口を開いた。
「―――レアボスだ!」
瞬間、上空に光が集まった。レアボスポップのエフェクトだ。
もちろんここに居るメンバーたちはすでにかなり見慣れたエフェクトだろう。
全員が驚愕の目をしていた。
マジかよ、レアボスツモだと!? 〈笛〉を使った覚えは無いぞ!?
だがちょうど良い。どうせここのレアボスは周回するつもりだったしな!
「エステル、出してくれ!」
「! はい! 出てきてください〈戦艦・スターライト〉――召喚!」
レアボスポップ中は大チャンス。
攻撃は通らないが、向こうからも基本攻撃をされない。準備するチャンスだ!
そして、俺たちがやったのはエステルの〈乗り物〉、〈戦艦〉に乗り込むことだった。
〈戦艦〉は〈天下一パイレーツ〉戦ではまだ名前を決めていなかったものの、それも今では決まっている。
「いきましょう、〈エデン〉に輝く〈スターライト〉の船! 私たちを運び、敵を討つ槍となるのです!」
エステルがまたなんか決めゼリフ言ってる!?
確かに、こんな〈戦艦〉出しちゃったらテンション上がっちゃうよな!
「バフを掛けるわ! 『大聖女の祈りは癒しの力』! 『守護の大加護』! 『獅子の大加護』! 『迅速の大加護』! 『聖魔の大加護』! 『耐魔の大加護』! 『病魔払いの大加護』! 『光守られし聖なる奇跡』!」
ラナは全大加護を使用しつつ、ユニークスキルでバフ解除を無効化。さらに前もって『大聖女の祈りは癒しの力LV10』を使い、自分の〈魔法〉全てに〈回復〉カテゴリーを付与。〈光の浄衣〉の『回復クールタイム軽減LV10』のおかげでクールタイムは半分になる。
『大聖女の祈りは癒しの力LV10』もLV10になったおかげで効果時間は凄まじく長く、これ自体も『回復クールタイム軽減LV10』の対象になっているため効果が切れる前にかけ直すことが出来るようになっていた。
常に『大聖女の祈りは癒しの力』を掛けて〈回復〉カテゴリーを維持するのが【大聖女】の戦い方だな!
凄まじく強い。【大聖女】の完成形に近い姿が目の前にあった。
「精霊よ、力を貸してください――『六精霊全召喚』! 『古式精霊術』! 『大精霊様二大降臨』! 『グラキエース』! 『テネブレア』! グラキエース様はシエラさんへ、他のみなさまへも精霊を――『パーティ・エレメントリース』!」
続いてシェリア。
『六精霊全召喚』により6種全精霊が召喚されシェリアを囲う。
だが次の瞬間にはそのうち氷属性精霊と闇属性精霊が変化し、大精霊様へと進化する。加えてここから六段階目ツリー、パッシブスキル『大精霊リース』の出番だ。
これは『リース』系スキルを使うとき、その対象に大精霊も貸し出すことができるスキルである。
シェリアのリース系は普通のバフとは違い、ステータスを上昇させる。
普通の氷属性精霊ならVITを1.3倍上昇だ。
だが、これが大精霊ともなればその上がり幅はエグくなり、なんと最大で1.6倍上昇する。とんでもないスキルへと大化けするのだ。
まだ『魔法LV』が低いためそこまでではないが、これはブースト系に加算されるために、重複するとアホみたいに強くなるのである。
例えば『防御力オーバーブースト』でVITが1.8倍になっているキャラに大精霊グラキエースを貸し出せば、合計でVIT2.4倍になってしまう!
ここにラナの防御力バフなどが加わってくるのだからクラッとくる強さだ。
まあ、大精霊を貸し出すとシェリアはその大精霊の力は使えなくなるし、自分にはリースできないなど制限はあるものの、非常に有用だというのが分かると思う。
続いて使用した『パーティ・エレメントリース』はパーティメンバー全員に1体ずつ精霊をリースする魔法。
ラナには雷属性精霊がリースされINTが1.3倍、エステルには火属性精霊がリースされてSTRが1.3倍、俺には光属性精霊がリースされてAGIが1.3倍になる。
シエラには大精霊グラキエースがリースされてVIT大上昇だ。
バフを終え、〈スターライト〉に乗り込んで準備完了。
「エステル、『戦車万乗・全方移動』を意識しつつ、左にスライド!」
「はい! 上昇後、左へスライドします!」
エステルが早速〈戦艦・スターライト〉、通称〈スターライト〉を起動し上昇、左へスライドさせていく。
今までは横移動やバックなどが制限されている〈乗り物〉もあったが、エステルの六段階目ツリー、パッシブスキルの『戦車万乗・全方移動』では全ての〈乗り物〉が前だけでは無く、横移動やバックまで可能になっている。
さらに〈スターライト〉のスキル『飛行走行』により上下移動も可能とあって、今まで射角の関係で撃てなかったスラスト砲も、狙いたい放題だ。
とここでレアボスポップのエフェクトが終わる。
「ボスは、悪魔ね」
「『看破』!」
いつも『看破』役のエステルが操舵中なので俺が〈幼若竜〉で『看破』する。
「出たぞ――奴の名は〈悪魔陣地帝王・ヌーラガンデモン〉。通称:〈ヌーガ〉と呼称する!」
「デーモンアビスエンペラー?」
まるで大気がゴゴゴゴゴゴと鳴り響くように登場したのは、4対8枚のコウモリの翼を背中に生やした、つるっ禿げのスキンヘッドとムキムキの上半身、黒い毛に覆われた偶蹄目の下半身を持つ、身長15メートルを超えるボスだった。
腕は6本あり、それぞれに槍を持っている。六槍流の使い手だ。
むろん空を飛んでおり、登場したときからこちらの〈戦艦〉に視線を向けていた。
「エステル、今こそ【戦車姫】の真の力を発揮するときだ!」
「はい! 上級ユニークスキル、発動します――『戦車姫最終奥義・戦車覚醒』です!」
瞬間、バンッとエステルの〈戦艦〉が光に包まれる。
この覚醒に制限時間は無い。
使用中はMPがどんどん減っていくが、それがゼロになるか発動をストップするまで効果が継続する。
そしてその効果は――「〈乗り物〉に同乗している者はスキル・魔法・ユニークスキルが発動出来るようになる」である!
「『オーラポイント』! 『シールドフォース』! 『ガードスタンス』!」
瞬間、スキルが発動出来るようになったシエラがヘイトを稼ぎ始め。
「『ゴッドドラゴン・カンナカムイ』!」
俺が特大の攻撃をぶっ放した。
「オオオオオオ!!」
それに対し、〈ヌーガ〉は6本の槍を交差させて防御スキルを発動。
「う、受け止めたわ!」
「ラナ、エステルも攻撃開始だ!」
「やっとこの時が来たわね! 盛大にやるわよエステル――『大聖光の無限宝剣』!」
「はい! 『インパルススラストキャノン』!」
次々と攻撃していく俺たち。もちろん攻撃しているのは――〈スターライト〉の上からだ!
「オオオオオ!」
「回避! 取り舵いっぱい!」
「『アクセルドライブ』!」
「ひゃあ!」
攻撃を食らいながらも〈ヌーガ〉が怒りの投げ槍。片腕が3本もあるものだから槍も3本だ。
しかし、これはエステルがしっかりと横に『アクセルドライブ』を決めて回避する。
急にスピードアップした〈戦艦〉に〈ヌーガ〉も恐ろしい顔を向け、投げた3本が右腕らに出現。今度は右、左と6本の槍を投擲する。うち1本が直撃コースだ。
「シエラ!」
「『ディバインシールド』!」
しかし、それはシエラが防ぐ。そうすれば反撃だ。
「『ファウ・ウール・マーゼ・スラスト』!」
それは集束砲。
〈戦艦〉の主砲は常に〈ヌーガ〉に向けられている。
そこから特大の砲撃がズドン。
槍を手放して防御スキルを発動できなかった〈ヌーガ〉は、これの直撃を受けてしまう。
「オオオオオ!?」
「ナイス! 追撃だ! 『フルライトニング・スプライト』!」
「『大聖光の四宝剣』! 『大聖光の十宝剣』! 『祈望の天柱』! 『神の天誅』!」
「『ライトニングバースト』! 『サンダーボルト』!」
「『テネブレア・ダウンダーク』! 『エレメントランス』! 『エレメントジャベリン』!」
次々放たれる攻撃が〈ヌーガ〉を苦しめる。
「オオオオオオオオオ!」
「接近戦来るぞ! エステル、『ドライブ全開』だ!」
「『ドライブ全開』!」
続いて〈ヌーガ〉は接近戦を選択。あの巨体でかなりの速度を出して一気に3本の槍を突き出してくる。
だが、これはエステルが横移動で回避。さらに全力でバックや横移動しながら攻撃を回避しまくる。
「オオオオオオオオ!」
「エステルは存分にやりなさい! 被弾はこっちで受け持つわ! 『シールド・テラ・クワトロ』! 『守陣形四聖盾』!」
〈戦艦〉を4枚の巨大な盾が守る。
回避しきれず、槍が迫るがそれをシエラの自在盾が防ぎきったのだ。
「闇の陽光をくらいなさい――『陽光の驚き・エレメントソル』!」
「オオオオオオオ!?」
さらに反撃まで撃ってくる。
「クールタイム明けたわ! 『大聖光の無限宝剣』!」
「俺も明けたぜ! 『ゴッドドラゴン・カンナカムイ』!」
「オオオ!?」
ズドドドドドドドカーーーーン!!
派手にダメージを負いながらも追いかけていた〈ヌーガ〉もついにたまらずダウンしてしまう。
「おっしゃ、総攻撃だーーーー!! 『テンペストセイバー』!」
これぞ【戦車姫】の真骨頂。そのユニークスキルの力だ。
本来〈乗り物〉などに乗っている時、同乗している者はスキルや魔法の発動がほぼできない。
これは全ての職業で共通だ。
しかし、その中でも【戦車姫】だけは例外。【戦車姫】のユニークスキルは、〈戦車〉に乗っている者のスキルや魔法、ユニークスキルを無制限に発動を許可する。
その結果がこれである。
全員が〈戦艦〉に乗ったまま移動し、常に回避行動を取りながら戦うことが出来るのだ。何それ鬼強い。
おかげでレアボス戦だというのに俺たちはほとんどダメージを負うことなく第一形態を下すことに成功する。
これぞ、〈上級部門・公式最強職業ランキング〉第六位に選ばれた職業の力だ。




