#1627 初手から全箇所ダッシュ、北側から駆け抜けろ
初手、全城へ向けてダッシュ。
これは相手の本拠地へも含まれる。
なぜか? もちろん相手の本拠地に強襲を仕掛けるための自陣マスを確保するためだ。
〈城取り〉では、自陣マスの隣接しか確保はできないルールとなっている。
巨城も本拠地も、隣接を取らないで攻撃してもノーダメージなのだ。
故に、相手の本拠地へ斬り込むための自陣マスを最初に確保しておくと、「いつでも本拠地に攻められるぞ?」というプレッシャーを与えることができるのだ。
そして対応も強いることができる。
〈キングアブソリュート〉VS〈千剣フラカル〉戦でもあった、初手の一手だ。
だが、もちろん俺はそこからさらに手を伸ばす。
まず狙うは本拠地を狙う真東ルート、〈北巨城〉を狙う北東ルート、そして南側にある〈西4巨城〉と〈東4巨城〉、さらに〈東3巨城〉を取るルート、さらに〈救済巨城〉でもある〈西2巨城〉〈西3巨城〉を確保し、〈西1巨城〉も最初に確保するルートという多岐に分かれる。
これだけバラけられるのも〈50人戦〉だからだ。
そして俺だが、もちろん〈北巨城〉へ続く北東ルートに参加していた。
ここが一番の難所なのだ。
「カルア、全力で行くぞ!」
「ん!!」
「『移動タイムブースト』!」
試合開始直後、ルキアから移動速度上昇バフが全体に撒かれ、一瞬で飛び出して行くメンバーたち。
俺はカルアとツーマンセルを組み、まずは北東へ斜めに真っ直ぐ進む。
すぐに観客席という名の障害物が見えてくるが、初手から斜めに走ることで、ギリギリを掠めるようにして北ヘと抜けることが可能だ。(図T―19)
さらに斜めへ突っ走り、〈北巨城〉の真南まで最速で進むことが秘訣になる。ここが中継点、抑えておくべき場所だ。(図Y―14)
「よし、向こうは俺たちの速度に追いつけてないな!」
「ゼフィルス、いつもよりも速い、すっごく速い」
「あたぼうよ! そのために移動速度特化装備まで引っ張り出してきたんだぜ!」
初手の移動速度、超大事。
特に俺のツーマンセルの相手はカルアなのだ。カルアは〈エデン〉最速。
『素早さブースト』もLV10に上げきり、AGIがパッシブで1.6倍になって超速状態になっているのだ。新装備も合わさってその数値、なんと2600!!
速い速い! こんなのに合わせられるのはうちではレグラムのスキルくらいだ!
だが、今回は非常に大事な一手なため、俺が代わりに参加。
カルアに追いつくために俺は『移動速度上昇』や『疾風』、『追い風』、『AGI+◯◯』といったスキルの付いている武器防具を全身装備しているくらいである。『AGI』系特化装備だ。無論、巨城に着けば即換装する予定である。初動の移動のみ採用した装備品だな。これによって相当な速度になっており、カルアと同等の速度までなんとか出せるようになっている。
見れば〈天下一パイレーツ〉のツーマンセルは2マス以上遅れていた。
いや、思ったよりも向こうも速いな!
結構驚いた。これだけ『AGI』積んで2マスしか引き離せてないのか。
だが、それは向こうも同じらしい。「こんなに速い俺たちが、2マスも先に行かれるだと!?」みたいな、そんな顔をしている。おそらく、ローグ系の【賊職】持ちだろう。斥候系の職業なので速い速い。
それに向こうも〈スタダロード戦法〉を使っており、最速のツーマンセルで〈北巨城〉を狙ってきていた。かなり研究しているというのが一目で分かる。
だが、俺たちの戦法には続きがある。
「カルア、そこで北に進路を変更!」
「おけ」
相手が思ったよりも速かったので、〈北巨城〉の真南に真っ直ぐ行くルートを少し変更。
中継点の1マス手前(図X―15)で進路を北に修正。そこから、
「東に1マス、北に1マス!」
「ん!」
斜めでは無く、右と左。ジグザグにマスを取りながら、中継点を経由して1マス北に出る。(図Y―13)
斜めに進めば1マスでたどり着けるマスへ、敢えて遠回りして2マスでたどり着く。相手との差は縮まってしまったが、まだ俺たちの方が1マスリード。
―――よし、ここだ!
「今だ! 東へぶちかますぞ!」
「ん!」
ここで俺たちはさらに東に進路を執る。
「な、なに~~~!?」
「な、東!? 間に合わなっ!?」
そこはまさに〈天下一パイレーツ〉が取ろうと向かっていたマス(図Z―13)。
その場所をとうせんぼうと言わんばかりに先に取ったのだ。
「よし、成功!」
「ぶい!」
「「ぐあああああああ!?」」
インターセプト大成功。
同じマスに居た〈天下一パイレーツ〉のメンバーは、保護期間が張られたことで1マス手前まで弾き出されてしまう。致命的だ。
俺たちはさらに東に向かってマスを取っていくため、もう東からは進めない。
「くっ! なら西から回り込めば――んな!?」
「西が塞がっている!?」
ここで俺たちがジグザグに進んだ手が生きてくる。
〈天下一パイレーツ〉がいる場所の西は、俺たちが通った道。つまり保護期間が張られている。
だが、本来ならば斜めに進みながらマスを取ると、隙間が出来てしまうのだ。
その隙間を通り相手も斜めに突き抜け、まるでリバーシの最初に置く白黒のように色がクロスするようなマスにして突き抜けることが可能。
これを防ぐには、斜めに抜けられないようジグザグに進むのが有効。これにより彼らから見て西、北西、北マスを取られてしまった形になり、北西や西に行けなくなったのだ。これがブロックのテクニック、相手の進みたい方向をあらかじめ潰しておく戦法だ。
とはいえ、ジグザグに進めばより多くのマスを取らなくちゃいけなくなり、それだけ進行速度が落ちるので、使うのはここぞというときだ。
俺たちがさっきしたみたいに、抜かされないように計算してから動くべし!
〈天下一パイレーツ〉はこれにより、斜め北西に抜けられない。西に行くにしても北に行くにしても、一度南へ戻らなくてはいけない。南西に一度抜け、回り込む必要があるのだ。
だが、それすらさせない。
「んなぁ!? 後続が!?」
「〈ロードローラー戦法〉だと!?」
ここで俺たちに続いてやって来た、後続メンバーの登場。
エステルとフィナのツーマンセルが、俺たちの通ってきた道の1マス隣の西側から進行してきたのである。(図S―19からW―15まで)
つまり、斜めに抜けることを封じる、〈ロードローラー戦法〉だ。
これで、〈天下一パイレーツ〉が〈北巨城〉へ行くルートを2分間完全に失わせることができる。致命的だな。
そして、エステルたちにはそのまま〈北巨城〉の攻略に取りかかってもらう。
「え? じゃあ俺たちは?」ってなるだろう?「〈北巨城〉を攻略するんじゃ無かったの?」って。実は俺たちは〈北巨城〉は狙わない。
俺たちはな、このまま東に抜けた勢いのまま、〈東1巨城〉を目指す。
しかも、それだけじゃない。そのまま〈東2巨城〉までいただいてしまおうという作戦だ。
完全に速さが求められるこの戦法。
本来ならば赤チームは、北側から抜かれて〈東1巨城〉に向かわれないように、赤本拠地から北の観客席までマスで線を引いて相手の侵入を拒むのがセオリーなのだが(図AH―13)、それよりも速く駆け抜けて〈東1巨城〉へ向かうのがこの戦法の肝だ。
もちろん〈天下一パイレーツ〉のツーマンセルの後続はかなり離されており、今から進路を塞ごうとしても間に合わない。全てが想定通り!
ほら〈天下一パイレーツ〉よ。早くしないと〈救済巨城〉である〈東2巨城〉も取っちゃうぜ?
ついに始まりました〈九角形〉フィールド。
〈エデン〉VS〈天下一パイレーツ〉の試合開始です!
まずは北側半分を見てみましょう。
〈東1巨城〉へ向かうゼフィルス・カルア
〈北巨城〉へ向かうエステル・フィナ
〈西1巨城〉へ向かいつつ相手が西側に入ってこられないようブロックする担当のアイギス・カイリ
〈西2巨城〉を落としに行くハンナやリーナやラナたち。
え? リーナやラナ、初動に動いていいの? と思うかもしれませんが、むしろ初動だからOKですね。
本拠地は隣接されなければ相手の攻撃はノーダメージ。
故に、敢えて本拠地は空にします! まあ実はシャロンだけ残っていますが。
初動でどう動くかはすでに通達してあるので、リーナが指示する必要は無いですからね。リーナも動けます。
もちろん〈西2巨城〉を落とせば本拠地にとんぼ返りする予定です。
また、〈北巨城〉〈東1巨城〉〈西1巨城〉などには後続も追っていっています。
サターンたちは――見事に〈北巨城〉を目指していました。
〈スタダロード戦法〉の後続担当ですね。
ですが、残念ながらゼフィルスたちが東へ向かったので追いかけています。
本来〈東1巨城〉へ向かわせないために、サターンたちの部隊とは別にアイギス・カイリ部隊がやっているブロック戦法を用意するべきなのですが、なにせ初手で向かわなくちゃ行けない場所がたくさんあるので人材に余裕が無いと難しい。
〈天下一パイレーツ〉は用意出来なかったみたいです。
なにせ、アイギスとカイリが現在居る場所も、ようやくブロックが完成した位置、ゼフィルスとカルアはすでにその位置を通過しているので、少なくとも〈天下一パイレーツ〉はアイギスとカイリのツーマンセル以上の速度を持つメンバーで図AH-13まで塞がなければいけなかったということです。
ゼフィルスたちが突破出来る訳ですね!
(ちなみにアイギスのAGIは1000。カイリは1170。そしてカルアは2600です)
南側半分と、本拠地同士の間の戦いはまだ秘密。
こっちはかなり複雑なので、もう少々お待ちください。




