#1585 〈金箱〉回! 上級上位ダンジョン初攻略!
「よっしゃ〈金箱〉だー!」
「〈金箱〉だわー!」
「〈金箱〉なのです!」
「ん! 〈金箱〉!」
「…………」
〈金箱〉が出た瞬間、俺たちは自然と集まって〈金箱〉を四方から囲みよっしゃーした。
メンバーは俺、ラナ、ルル、カルアだ! バンザイした手は隣の人にハイタッチ!
シエラも来い。
そう思って振り向けば、なぜか少し微笑んでいるシエラが!
「なんだか、少し懐かしく感じたわ」
「なるほど! ならシエラも来い! 一緒に〈金箱〉を祝おうぜ!」
「なにがなるほどなのよ」
良い笑顔でシエラを誘ったのに、シエラの返答はジト目だった。
一瞬でジト目にチェンジ! これがシエラのお祝い?? ひゃっほー!
「シエラ! ぐっじょぶだったのです! 相変わらずシエラはちょー強なのです!」
「ありがとうルル。ルルもすごく強くなったわよね。何度か流れ弾みたいな攻撃を受けていたみたいだけど」
「えっへんなのです! ちょっとくらいダメージ食らわないとMPが不足しちゃうのです! ルルはとても強くなってしまったのです。上級上位ダンジョンのボスさんでも、ルルは怖くないのです!」
シエラとルルの会話が和やかな雰囲気。
「カルア、今回は渡さないわ。この〈金箱〉は私のよ!」
「そんなことない。ラナは道中十分開けてた。これは私の」
「ちょっと待ってもらおうか。初のボス攻略だぞ? ギルドマスターの俺が開けるべきだろ!」
なお、こちらのラナ、カルア、俺の方は中々に和んでいられない雰囲気だ。
気を張っておかないとギルドマスターのお役目が取られてしまう!
〈金箱〉は渡さないぞ!?
とここでボス部屋の扉から続々と〈エデン〉メンバーたちが入ってきた。
「ゼフィルスさん、ついにやったのですわね! 上級上位ダンジョンの初攻略、おめでとうございますわ!」
「おめでとうございますゼフィルスさん」
入ってきて早々にお祝いの言葉をくれるリーナとアイギスが癒し。
その言葉で気が付いた。俺の右手には攻略者の証が握られていたのだった。
なんか一気に実感してきたぜ!
「ちょ、リーナ、アイギス、私たちは!?」
「も、もちろんですわ! ラナ殿下もカルアさんも、シエラさんもルルさんもおめでとうございます!」
「はい。もちろんお祝いの言葉を贈ります。ラナ殿下、カルアさん、シエラさん、ルル。おめでとうございます」
そこから一気に戦勝モードに突入。
みんながおめでとうおめでとうと言ってくれて俺もラナもとても良い気分になったのだった。
「すげぇなぁ、ゼフィルス先輩は」
「ゼルレカもわかった?」
「いや、あたいだって最初から分かってたつもりだけど。まさか前人未踏の上級上位ダンジョンすら冬休み中に攻略しちゃうとか、しかも一発で……。あたいの常識っていうもんが音を立てて崩れていくっつうか」
「その気持ちは分かります。きっと〈エデン〉の半数くらいは共感すると思いますよ」
「半分しかいねぇのかよ!?」
ふと見れば、ゼルレカとアリス、キキョウたちが目に入った。
ゼルレカがなんか茫然としているな。ふふふ、これくらいで驚いてもらっては困るぞ?
そんなゼルレカたちの下に、今度はサーシャたちが近づいていくのを見つける。
「ゼルレカさん、その気持ちを強く持つですの!」
「そうだよ。ちょっと気を抜いたり穴があったりすると、そこから一気に広がるんだからね!」
「ゼフィルスたちはこともなげにやっているけど、普通はあんなのできないんだからね!? 常識を捨てちゃダメだよ!?」
サーシャ、カグヤ、クイナダが何か言っているぞ。
おかしいな。まるで俺がみんなの常識を捨てさせているみたいではないか??
「お、おう。気を張らないといけないな。アリスとキキョウはいつの間にか引き込まれてるし」
「そうですの! ゼルレカさんは貴重な常識枠ですの」
「そっち側に渡してはダメなんだよ!」
「ゼルレカはそっち側にいかないでね。切実に」
ふむ。ツッコミ担当の話だったのかな?
確かに、ツッコミ役は非常に貴重だ。特にこの〈エデン〉では。
ゼルレカにはそっちも期待しているのだ。
クイナダたちには是非その辺のイロハを教えてあげてほしいところ!(勘違いです)
「よし、まずは記念撮影からやるぞ!」
「いいわね!」
「そうなのです! ルルも記念が欲しいって思っていたところだったのです!」
「ん! 〈金箱〉も一緒」
「上級上位ダンジョン攻略記念……みんなノリノリのところ悪いけれど多分歴史の教科書に載るわ。まずは身を整え直して――」
おっと俺が記念撮影を提案したところ、シエラからすごく真剣な様子で歴史の教科書に載る宣言が為された。
そこからはてんやわんやだ。
セレスタンやシズが全員の姿を整え、ポーズまで指定して、セレスタンに任せたら何枚も撮影を余儀なくされてしまった。
「スクショのデータは保存しておきましょう。こちらは修正などが不可能ですから、遠い未来から見ても左右されない歴史的証拠になり得るかと」
「なんか大事になってきたな~」
「なにを今更。文字通り大事なのだけど?」
「いやぁ、実感沸かなくて」
「分かるわ」
俺とラナでうむうむと頷いているとシエラがジト目になっていた。
なんだかわからないけどやったぜ!
こうしてようやく記念撮影が終わる。
「ねぇ、そろそろ〈金箱〉を開けてもいいかしら?」
「おう。じゃあ――って開けてもいいかしら!? そこは開けましょうだろ!?」
あぶねぇ!
うっかりラナに開ける許可を出すところだった!
なんてきわどいことを言うんだ! ほら、こういう所にツッコミ担当の不足が出てる!
大変危険!
「つ、次はラナたちに開けてもらうから、この1回目はどうか俺に譲って?」
「むう、仕方ないわね」
「ご褒美カレーのため、仕方ない」
いつの間にか俺はご褒美カレーをカルアにあげることになってた。
カルアよ、いつの間にそんな策士になっていたんだ!?
まあいい。それくらいなら安いものだ!
「ではこれより、〈金箱〉を開けたいと思う!」
「最奥のボスの〈金箱〉ね。いったいどんな物が入っているのかしら?」
「ルルもちょー気になるのです!」
俺の宣言にみんなが集まり、注目する。
うちも大所帯になったなぁ。お祈り開始!
「ああ〈幸猫様〉〈仔猫様〉〈愛猫様〉! いつもありがとうございます! 最初の上級上位ダンジョン産の〈金箱〉です! どうか良いものをお願いいたします!」
そう、念入りに、念入りに、念入りに念を込める。
届けこの願い!
そして俺は〈金箱〉を開ける。
すると中には、レシピが入っていた。
「レシピだ! ――エステル頼む!」
そういえば〈幼若竜〉は俺が持っていたとエステルに渡す。
「受け取りました。――『解読』!」
「これは――〈ヒヒイロカネ武器〉、しかもシリーズだと!?」
エステルに『解読』してもらえば、レシピの内容も読み解ける。
そこには――〈ヒヒイロカネ武器〉という、武器が描かれていたのだ。
しかも、〈竜武器〉と同じく、シリーズである。
「〈ヒヒイロカネ〉武器、ですか!?」
「〈竜武器〉シリーズの〈ヒヒイロカネ〉版!?」
「〈ヒヒイロカネ鉱石〉と言えば道中にドロップしていたわね」
―――ヒヒイロカネ。
作品によってはオリハルコンの別名となることもある鉱石だが、〈ダン活〉ではもちろんオリハルコンとは別の鉱石としてカウントされている、やや赤寄りの金色の鉱石だ。
神の金属とも言われていて、〈神〉カテゴリーを内包している。
そして、主にこの上級上位ダンジョンから産出するようになる、上級上位級の鉱石でもある。これで作られた武器は最低でも上級上位級の性能を発揮するというわけだ!
上級ダンジョンでは、等級によって産出する鉱石が変わってくる。
上級下位なら〈ミスリル〉。
上級中位なら〈アダマンタイト〉。
上級上位なら〈ヒヒイロカネ〉。
という風に。
そして最上級ダンジョンでは―――〈オリハルコン〉だ。
〈ヒヒイロカネ武器〉は最上級ダンジョン装備、つまり〈ダン活〉最強装備を揃えるに辺り、そこまでの繋ぎとして使える有用装備だ。なにしろ、道中の『発掘』で手に入る鉱石で作れるからな。作製が比較的楽なのだ。
ボス素材メインで作る武器には性能でやや劣るものの、数を揃えることができるのが非常に大きな利点だった。
さらにこれがシリーズレシピである。
つまりはこのレシピ1枚で全てのヒヒイロカネ系武器を作れるという意味!
こいつは間違いなく大当たりだな!
これも帰ったらアルル行きだ!
今度ソドガガには大量に〈ヒヒイロカネ鉱石〉を『発掘』してもらわないといけない。
問題は〈竜武器〉があるおかげで俺たちには別に〈ヒヒイロカネ武器〉は必要無い点だが、ただの鉱石から作れて量産出来る上級上位級の〈金箱〉産武器というのは魅力的だ。
売れるほど作れるし、学園全体のスキルアップに繋がるだろう。〈青空と女神〉に量産を依頼するのもありだ。
「みんな! 当たったのは〈ヒヒイロカネ武器〉だ! これで道中に手に入れていた〈ヒヒイロカネ鉱石〉が武器になるぞ!」
「「「「おおー!?」」」」
ざわざわざわざわ。
俺がレシピをペラリと見せながらそう言えば、周囲にざわめきが起こった。
〈竜武器〉の方が強いとはいえ興味が無いと言えば嘘になる。
たとえ使わないにしても、みんな新しい武器のレシピに興味津々だった。
また、それだけに終わらない。ここで俺は士気を上げる!
「大当たりには間違いないだろうな! 上級上位ダンジョンのボスドロップには、こんなものがまだゴロゴロ眠っているに違いない。俺たちで掘り起こしてやろうぜ! さあ、ボス周回の時間だ! まずはみんなに攻略者の証を取ってもらうぞ!」
「「「「おおー!」」」」
上級上位ダンジョン、最初の最奥ボスは、こうして狩られまくり。
夕方には全員が攻略者の証をゲットしていたのだった。
全員で攻略者の証を掲げた記念撮影もして、俺たちは帰還した。




