#1570 ゼフィルスのグッドアイディアでガンガン進め
「さすがは上級上位ダンジョンね、これまでに見たことがないタイプのボスだったわ」
「だな。よし、ここは〈幻惑の迷路ダンジョン〉だし、通称〈幻迷ダン〉と呼称しよう」
「〈幻迷ダン〉ですか。確かに今のボスは混迷を極めていました。ぴったりだと私も思います」
「私も賛成~」
ボスがエフェクトの海に沈むのを確認すれば、シエラがボスの感想を吐露したのでそれに便乗して通称名を決めたんだぜ。
フィナとエリサも賛成してくれたし、ゲーム時代の馴染みある通称名と同じになって良かったよ。ずっとタイミングを計っていたからな。
ちなみに〈トラ・時々・オニ〉の宝箱は2つ、〈銀箱〉だった。
おっふ。なんか久しぶりだな1発目が〈銀箱〉って。
まあ、今回はラナもノーアもニーコもいないメンバーだったし仕方ない。
中に入っていたのは――レシピだった。しかも片方は装備シリーズ全集。
全集! だが〈銀箱〉産だ。騒ぐほどの性能ではない。くっ、これが〈金箱〉産だったら!
だが、もう片方の〈マイセット早着替え〉のアイテムレシピは結構な当たり。
くくく。早速ハンナにお土産ができたぜ!
「わ、私の装備の方が性能がいい……?」
「そりゃシヅキのはあの〈ホネデス〉からドロップしたレシピだぜ? 〈金箱〉産だし上級上位ダンジョンの〈銀箱〉産にも負けないさ!」
「…………なんであなたが自慢げな顔をしているのか、とても気になるわ」
ゲフンゲフン!
も、もちろん俺も今知ったんだぜ?
でもそう言うとさらに墓穴を掘りそうだったので話題を変える。
「これはマリー先輩へのお土産にするとして、いや、せっかく上級上位ダンジョンを解放してくれたんだから学園長のお土産にするか。上級上位ダンジョンではどんなものがドロップするのか気になっているはずだし」
「…………それがいいでしょうね」
よし、シエラを頷かせることに成功したぞ!
ということで大切に保管しておく。
と、そこでリーナから『ギルドコネクト』が入った。
「『ゼフィルスさん、お疲れ様ですわ。やはりすでに点灯している色を点けるのはハズレ扱いみたいですわね』」
「そっちもお疲れ様。だな、ということは今付いていないランプを全て点灯させるのが当たりということだ」
「『はい。すぐにメルトさんの5班と、セレスタンさんの6班に連絡してランプを点けてもらおうと思います。階層門が出るか、他のなにかのギミックがあるのか。とにかく注意してくださいまし』」
「了解」
通信終了。
俺たちはこの場に待機。メルトとセレスタンがコンソールのランプを起動することをこの場のみんなに周知する。
すると次の瞬間には「ズゾーーーン」という、なにかが出てきましたよ的な振動音が迷路のどこかから聞こえて来た。
「これが、階層門の出た合図かな」
「あるわね。一際大きいのが」
「ぐっ、微妙に見えそうで見えない!?」
「ルルも見えないのです!」
音がした後、俺やシエラたちの向く先には大きな階層門が見えていた。
ドーム状のダンジョンは小さいためよく見える。
まあ、ロリ組はちょっと見えていないっぽいが。
「よし、移動するぞ! みんな階層門目指して移動し始めているはずだ。だが、なにが出るかは分からない。慎重にいくぞ?」
「「「「おおー!」」」」
迷路ではあるが、方向さえ分かっていれば意外に行ける。
壁に手をついて進めば出口へ出られると言われているくらいだからな。
まあ、出口が複数ある場合はどこに出るか分からないが。
とはいえ迷路は俺がすでに把握している。
〈ダン活〉のデータベースと呼ばれたさすがの俺でも、ここの迷路は少し忘れ気味な部分もあったが、リーナの〈竜の箱庭〉を見てすでに脳内補完済みだ。
完全に思い出している。よって階層門まで最短距離で突き進んだ。
もちろん一番乗りは俺たちだったよ。
「迷わず着いた!? ゼフィルス先輩はここ知ってるのか!?」
「いや、さっきリーナの〈竜の箱庭〉を見て、全部覚えた」
「いやいやいやそれ記憶力が良いどころじゃないよ!?」
するとゼルレカが良いツッコミをしてくれたんだ。
ふはははははは!
ちょっと気分が良かったのは秘密。
次に到着したのはリーナの班だった。
そこからリーナの誘導で次々メンバーが到着する。
「うーん、これは少し非効率ですわね。人海戦術でコンソールを探すという案は良いのですが、その後みなさんを集めるのに時間が掛かってしまいます」
「とはいえ全員一緒に行動するのも、コンソールの色が分からないとあっちこっち行って時間が掛かってしまう」
「せめて階層門の位置さえ分かれば最初から待ち合わせ場所に向かうよう、道順を前もって指示できるのですが」
これはリアル的な問題だな。
階層門がどこに出るのかが分からないために、一度人海戦術でコンソールを見つけ出さなくてはいけないが、その後集まるときに道に翻弄され、余計な時間が掛かるのだ。これはある程度道が見えていてもそうなるらしい。
ゲーム時代、1人のユーザーが操作していたときは、リーダー的なパーティが階層門を潜るとなぜかばらけていたはずのメンバーが合流しているという仕様だったし。
もしくは【姫総帥】の『大号令』を使うと仲間がぞろぞろ集まってくるということもできたのだが、リアルだとそれが使えなかったのがちょっと痛いな。
『大号令』自体の音は聞こえるらしいのだが、それがどこから聞こえているのかがよく分からないらしい。
まあ、無いなら無いで別の策を用意するまでだ。
「なら、これの出番だな」
「あ! そういうことですわね!」
俺が取り出したものを見てリーナがハッと気が付いたような顔をして喜色を浮かべた。
俺が取り出したのはとある1つのアイテム。その名も――スクショ。
これで〈竜の箱庭〉の地図をパシャリと撮影し、現像して写真にする。
「そしてこの写真を全ての班に配れば道も迷わない、リーナが誘導する手間を抑えることができる」
「ゼフィルスさん、それはグッドアイディアですわ!」
要は道が迷路で分からないのがネックなわけで、道さえ分かってしまえばどうということはないのだ。
俺が一番乗りしたようにな!
このアイディアを手に、2層へと突入する。
「これは、1層よりも少し塀が高いような気がしますわ。ですが、それ以外は変わらないように見えますわね」
「リーナ、『フルマッピング』ができるか確かめてくれ」
「はい! 〈竜の箱庭〉起動――『フルマッピング』ですわ!」
「よし、2層でも『フルマッピング』は生きるな。これを撮って配れば良しっと」
パシャ。俺はスクショで〈竜の箱庭〉の全貌を撮り、それをリーナのパーティとその護衛班を除いた8班分現像した。
回数が一気に8回も減ってしまった! あまり使い勝手はよくないな。
2層の光景は、1層と変わらなかった。地面から塀とも言える壁が伸びており、途中から透明な壁に切り替わって天井まで伸びている。飛んで超えることはここでも出来そうにない。
そして目視ではあるが、階層の大きさも1層と大して変わらないように見えた。実際変わってないしな。
そして〈竜の箱庭〉を見る限り、ゴールは全部で6つ。その先にボタンがあるのだ。
これも1層と同じだ。
「リーナ、全班に写真を配り終えた」
「ではみなさん、それぞれの目的地を告げます、分担していきましょう。1班はわたくしたち10班の護衛、2班はそこの北側の壁へ、3班は1時の方角の壁へ、4班は3時の方角―――」
ここで役割分担。
誰がどの方角のゴールを担当するかを指示し、俯瞰した写真で迷路を進んで、ゴールにあるコンソールへ目指すかたちだ。
そして、この作戦は大成功に終わることになる。
全班がそれぞれのコンソールへ、リーナが指示を出さなくても迷わずに突き進むことが出来たのだ。やっぱり俯瞰して見れるのが大事だと証明されたな。
ただ、モンスターとエンカウントすると時々自分の居場所を見失うことがあるようで、そこだけ注意だな。まあ、すぐに慣れるだろう。
また、問題点が1つ。
スクショの回数ががっつり持っていかれることだ。
スクショは30回まで現像が可能だが、毎層8回現像していると、回数がすぐカツカツになってしまう。
なるべくスクショの使用を抑えなければならない! 節制だ!
それを聞いたシェリアがこの世の終わりみたいな表情をしていたが、撮ること自体には回数は減らないため、別に後で現像すれば問題はなかったりする。
ただ、それをシェリアに気付かせるのは、もう少し後にしようと思うのだ。




