#1564 予定通りですか学園長!?テストの結果発表も
テスト勉強は思ったよりもスムーズに進んだ。
何しろ学生が増え、〈1組〉の競争率が凄まじく上がっているのだ。
2年生はもちろん、1年生だって気を抜くことはできない。
クラス替えまでまだ4ヶ月近くあるが、テストはあと2回しかないのだ。
2学期で悪い成績を取っても、3学期で挽回すれば良い、なんて去年まであった常識も今では大きく変わっているという。
そりゃ2回とも良い成績の方が〈1組〉などの数字が若いクラスにはなりやすいだろう。
そういう背景もあり、みんな自主的に勉強していたのだ。
「この前の〈火山ダン〉を除けば、ゼフィルスはいつも夕食までに解散してくれるし、夜にはみんな自分の成長のために時間を使えるから助かっているわ」
そう言ってくれるのは、サブマスターのシエラだ。
「聞けば、ダンジョン熱に浮かされてダンジョンにこもりまくり、逆に成績が落ちたという学生も少なくないそうよ。〈エデン〉は基本放課後も集まれる人でダンジョンに向かうし、拘束時間はさほど長くはないのよね」
「そう言ってくれると嬉しいが、でもちょっと複雑な気分だな」
俺だってダンジョンにずっと潜っていられるなら潜っていたい!
ただ、〈エデン〉では女子の比率が高いので、暗くなる頃には基本解散する方針なだけである。
放課後、集まれる人だけでダンジョンというのも、ギルドでは人数が膨れ上がりすぎて全員の歩調を合わせるには、前々からスケジュールを調整しなくちゃいけないというだけだ。
なので、放課後だと週に1回か2回くらいしか全員集合しない。
まあ〈火山ダン〉では時間も無かったので平日でも毎日集まってもらったわけだが。とはいえ、本当に毎日全員が集合してくれて助かった。おかげで巻きで行く必要も無かったからな。じっくり攻略出来たぜ。
それはともかく、日が暮れたら解散しているおかげで勉強に身を投じられると感謝されるのなら、その感謝は素直に受け取っておこう。
ちなみに俺はテスト勉強の間、例の〈火山ダン〉の攻略報告書を拵えていたりする。
他の子に教えるときは別だが、自分の勉強はすでに終えちゃっているからな。
逆に教本作り的なことに精を出してしまったぜ。
また〈火山ダン〉だけではなく、その先も作っちゃったりしているのだが、これはまだ封印中。この封印、早く解いてあげたいぜ。
「よっし、〈火山ダン〉の報告書、完・成! ――シエラ! ちょっと学園長のところ行ってくる!」
「分かったわ。失礼がないようにね?」
「もちろんだ! むしろこの貴重な報告書を提出しに行くだけだぜ? 失礼な事なんてあるわけがない!」
「シエラ様」
「なにクラリス?」
「学園長秘書のコレットさんから聞いた話なのですが、ゼフィルス様が毎回学園長室でやらかしていくと――」
「…………ゼフィルス、ちょっと待ちなさい」
「それじゃあ、いってきまーす!」
何やら『直感』さんが「早く行け」と急かすので、俺は手を振って学園長室までダッシュしたのだった。
あ、そうだ。〈火山ダン〉の報告書を学園長に提出しにいくついでに例の上級上位ダンジョンの解放についても打ち合わせしておかないと!
そんなことを考えていると、到着。
「こんにちは学園長! 〈火山ダン〉の報告書を作ってきました!」
「……ほ?」
学園長室でいつも通り、 報告書を提出すると、なぜか学園長が固まった。
「学園長、こちらお茶です」
「え? いやコレット君、これすごく煮立っているのだが?」
「目が覚めますよ?」
「…………ゴホン、ゴホン、とりあえず冷ましてからいただこうかの。――それでゼフィルス君は、あー、なんだ、つい先々週辺りに〈上級の狼ダン〉の報告書を持って来てもらったばかりではなかったかね? テスト勉強はどうしたんじゃ?」
「はい! テストは次も満点を取ってやりますよ! それよりもこっちの方が大事かと思い作って参りました!」
「そうか。そうかー(テスト期間中は気が休めると思ったのに!?)」
「学園長、お茶をどうぞ」
「2杯目!? コレット君、せめていつもの熱さにしてくれないかね!? なんで2杯目も煮立ってるのだね!?」
おお、クール秘書さんのどうぞが凄い。
学園長が見たこともないリアクションをしているぞ!?
あ、俺を見てまた咳払いした。誤魔化したのかな?
「ゴホン。ゴッホン! うむ、拝見しよう――――相変わらず、良い作りじゃな」
「光栄です!」
「あ、あ~、〈亜竜〉?? 〈ワイバーン〉、〈ドレイク〉、〈ワイアーム〉???? ゼフィルス君。〈亜竜〉出てきちゃったのかい????」
「はい!」
「……そ、そうかぁ」
〈火山ダン〉の報告書を読む学園長。
なぜか読む度に冷や汗がだらだらと増えている気がするが、きっと気のせいだろう。
「ふう。ゼフィルス君。こちら、確かに受け取った。これは攻略の足がかりとして我々でしっかり周知すると約束しよう」
「お願いします! あ、それと、上級上位ダンジョンの解放の件ですが。予定通りいけそうですか? 〈エデン〉はすでに準備完了していて滞りなくテスト明けに入ダン出来ます!」
「う、うむ。こちらも順調じゃ。予定通りテスト期間が終わった日の翌日、2学期の終業式である12月19日金曜日に解放できるじゃろうて」
「その時のオープニングセレモニー、是非〈エデン〉に任せてください!」
前回〈上中ダン〉などを開けるときにやったあの鍵開け&ダンジョン門へ入場だ。
ダンジョンへ入ダンする役目が現在できるのは〈エデン〉しかいないだろう。
「う、うむ。しかし大丈夫なのかね? ほとんど打ち合わせや練習もしていないが」
「前回見せていただいたことをするだけなら大丈夫です!」
「そ、そうか。確かにまだ入ダンできない先生方に任せるよりも入ダンできる学生に任せたいとは思っておったところじゃ」
「おお! それでは?」
「うむ。テスト期間中じゃからと遠慮していたが、〈エデン〉にその気があるのならやってもらおうかの」
「ありがとうございます!! とってもワクワク――じゃなくて嬉しいです!」
「まあ、なんじゃったら鍵開けやダンジョン門の探索は我々がやり、〈エデン〉はダンジョン入ダンしていくだけでもよい」
「お気遣いいただきありがとうございます! ではそのまま上級上位ダンジョンに入ダンし、攻略して来ますよ!」
「いや、あの、攻略は気が早いんじゃないのかね?(わし困惑だよ?)」
「大丈夫です! 冬休み中に2つくらいしたいところです!」
「…………そうか(あ、これは無理じゃ)」
そういうことに決まる。
あとは細かいことの摺り合わせを行なった。
結局学園長のおっしゃった案、鍵開けとダンジョン門の探索はお任せし。
〈エデン〉は開いたダンジョン門に一番乗りして、そのままダンジョンに入ダンすることになったのだった。とてもワクワクするよー!
学園長は気が抜けたような表情になっていたが、大丈夫だろうか?
そのまま茫然とした様子で無意識にお茶を啜り「あっつぁ!?」とビクンしていたのでちょっと心配だ。
ちなみに俺へ出されたクール秘書さんのお茶は普通の熱いお茶だった。
美味しかったよ。
◇ ◇ ◇
学園長には許可も取ったし、これでテストに集中できるぜ!
土日を使って丸1日ギルドメンバーの勉強会に費やしていると、テスト当日!
ふははははは! 軽い! 軽すぎるわーーー!!
〈ダン活〉のデータベースと言われた俺に死角無し!
全部100点とってやんよ! はーっはっはっは!!
テスト4日間が瞬く間に過ぎていくと、あっという間にテスト明けの金曜日になっていた。
今日はテストの結果発表と終業式。
それが終われば上級上位ダンジョンの解放式というビッグイベントが目白押しとなっている日だ。
朝からワクワクが止まらん!
「ゼフィルス君、すっごくワクワクしてるね?」
「分かるかハンナ? なんか中々テンションが下がらなくてな! 後で〈幸猫様〉にお祈りしないと!」
「もう、上級上位ダンジョンに入ダンするんでしょ? 気をつけてよゼフィルス君?」
「もちろんだハンナ! がっつり攻略して来てやんよ! 心配するなって!」
「…………本当に大丈夫かなぁ? 今まで逆にピンチなんてこと無かったけど……心配なものは心配なんだよ?」
朝食を作りに来てくれたハンナが嬉しいことを言ってくれる。
なんか心が温まるんだよ。これだからハンナとの朝食はやめられない!
ハンナといつもの分かれ道でさよならし、1人校舎に到着すると、俺は呟いた。
「セレスタン、居るか?」
「ここに」
本当に居た!?
いや、呼んだの俺だけどさ! 別に居なくても大丈夫だったんだぜ?
俺は努めて冷静に告げる。
「これからテストの順位を見に行く、付いてきてくれ!」
「お供いたします」
テストの結果が張り出されると周りは学生がたくさん。
そこへ1人で行こうとすると、なぜか『直感』さんが警報を鳴らすんだ。
危険? 危険がいっぱいなのか? ということで基本誰かと一緒に見るようにしている。
校舎に入り、掲示板へ向かうと、いつも通り学生たちがモーゼに割られた海のように左右に分かれていく。
この光景にも慣れたものだぜ。いや、本当に。
「どちらから見られますか?」
「もちろん1位からだ!」
掲示板には上位300人までの名前と点数が張られていて、あと赤点組の名前も晒されている。
赤点一覧表の前には膝と手を突く学生が量産されていたが、もちろんスルーだ。
ちなみにサターンたちはいない模様。
「さて、俺たちの点数は?」
俺が最初に見るのはもちろん1位の箇所。そこには、
第1位・ゼフィルス 点数900点
第1位・シエラ 点数900点
―――おおっしゃあああああああ!!
今回も満点だっしゃああああああ!!
ふははははははははは!!
「満点おめでとうございます!」
「――こほん。ありがとうセレスタン」
あ、あぶねぇ。セレスタンに声を掛けられなかったら高笑いするところだった。
クールだ、クールになれ。なんか周りからすっごく注目されているから!
ここで高笑いは厳禁だぞ! 最近シエラに引き留められていたからか、なんとか我慢することに成功する。シエラありがとう!
よし、続きのメンバーを見て落ち着こう!
第3位・セレスタン 点数899点
第4位・オリヒメ 点数898点
第4位・レグラム 点数898点
第4位・ヘカテリーナ 点数898点
第7位・アイシャ 点数890点
第8位・メルト 点数888点
第9位・カタリナ 点数885点
第10位・ラナ 点数883点
第10位・ラムダ 点数883点
第10位・ラウ 点数883点
第13位・ミサト 点数879点
第14位・ケイシェリア 点数878点
第15位・シヅキ 点数875点
―――――――
おお~。
なんか知り合いの名前が凄く多い!
というかシヅキ15位!? すごいな。本当に頭が良いんだな。
ちょっといつもの言動に惑わされて疑っていたのは秘密。
10位ではなんとラナがランクイン。
ラムダとラウも10位でタイか。これもすごいな。
セレスタンは――3位! さすが。
そして4位のところもオリヒメさんとレグラムとリーナで3人がタイか。
これもすごいな。
後は、カタリナが何気に9位に入っているな!
前回は11位で、ちょっと凹んでいたし、10位以内に返り咲けて嬉しいだろうなぁ。
「ゼフィルス様、そろそろ」
「おっとそうか。教室に行こう」
もう少し見ていたかったがここでタイムアップ!
他の学生さんたちもざわざわしながら見守っているからね。
大丈夫。また後で見よう!




