#1563 ボス周回でヒャッハー!条件達成とテスト期間
「勝ったわよー!」
「勝ったぞー!!」
「だいぶカウンターのコツとタイミングが掴めてきましたわ! もう三連撃でも怖くありませんわよ!」
「だからって突っ込むのはやめてくださいお嬢様。見ているこっちがハラハラするんですから」
もう何度目かも覚えていない周回。
勝ち鬨をあげるラナたちとハイタッチ。
ほぼ全部の戦闘に出ているノーアはもうあのカウンターを取りにくい連打攻撃を見極めつつあるようだ。凄いぞ。
「見てよエフィ。信じられる? なんか〈上中ダン〉では少し前に〈上級の狼ダン〉を攻略して来たことに対して騒がれていたけれどさ、私は目の前のボス周回が一番騒ぐべきなんじゃないかって思うんだよ」
「いつ見ても驚愕の心境を隠せない。というか、1回も負けたことが無いのが信じられない。なんで全部勝ってるの?」
「間違いないのはゼフィルス先輩の指示がボスに突き刺さっているからなんだろうけど、それにしたってこれだけの大成功、むしろ超成功? は逆に落ち着かなくなってくるぜ」
こっちでは新メンバーのシヅキ、エフィ、ゼルレカが、何やら黄昏れていた。
エリアボスでのボス周回は散々やらせていたが、最奥のボス周回はランク7の時が初めて、今回2回目のダンジョンでのボス周回に、未だ慣れてはいない様子だ。
「みなさーんおめでとうございます! 冷たいドリンク用意してますのでどうぞです!」
「ありがとうマシロ! いただくわね!」
なお、マシロだけはすぐに順応して周回を終えた俺たちを手厚く労ってくれる。
ああ、これは良いものだ。
周回が終わって戻ってくるとマネージャーもかくやというマシロが満面の笑顔で出迎えてくれて、タオルや冷たいドリンクを渡してくれるんだ。
労いドリンクにはボス戦で尖りまくっていた精神が溶かされていくのを感じるんだぜ。
あの天使装備と相まって、マジマシロ天使と言いたくなる。
「ゼフィルス、もう夕方だけど、どうする? そろそろ帰還するの?」
シエラが尋ねてきて空を見れば、だいぶ日が傾いていた。
今は12月も上旬。すでに17時には日が暮れて真っ暗になる季節だ。
まだ16時台。帰るのは少し勿体なく思う時間。
それに今日は土曜日。
明後日からはテスト期間に突入してしまい、ダンジョンに入ダンできなくなってしまうため、明日でラストだ。時間全然足りないよ!
もうちょっとやりたいというのが正直なところ。
「そうだな。では撤収組と、もうちょっとやりたい組で分かれるか! 夜にはライトを点けてやる形だ」
〈海ダン〉でも使った、あのライトだ。
今日は夜までやるぞ! 素材はマリー先輩のところではなく、アルルのところ行きだから売りに行く時間も今日は省けるしな!
半数は攻略者の証も取り終えたし、残りは明日に取らせればよし。
ここからは自由行動だ! あ、でもニーコは残ってね?(ニコッ)
「分かったわ。それじゃあ私が引率として連れて戻るわね」
「いつも悪いなシエラ」
こういうことはたまにある。
基本的に暗くなったら帰らせるのだが、もうちょっとボス周回をしておきたい日もたまにはある。
そういうときは希望者を募って残り、他の人は解散する流れ。
とはいえ解散組も一度ギルドハウスに戻って温泉に入ったり着替えたりするので、シエラが引率を買って出てくれているのだ。
シエラにはいつもお世話になってます!
「よし、次も俺は周回に参加するぞ!」
「私もやるわ!」
「私も参加しますわよ!」
「それじゃあラナとノーアとニーコは確定! 残りはタンクだ!」
「あれ!? なんかぼくが強制的に入れられているんだが!?」
ボス周回続行! ニーコよ、休憩タイムは終わりだ!
「あれもびっくりしたよね」
「王女殿下、意外にアクティブ」
シヅキとエフィが目を丸くしながらラナを見ているのが、ちょっと印象的だった。
ほらラナ、王女のイメージが崩れているぞ?
無論そんなことで止まるラナでは無い。
おっと、それよりも忘れるところだった。
「あ、シヅキ、エフィ、ゼルレカ、マシロはこの後〈聖ダン〉だからな」
「「「…………へ?」」」
「?」
テストが始まるのが明後日なので、攻略者の証を早く集めなくちゃならんのです。
ゼルレカたちは後1個集めれば上級上位ダンジョンに入る条件を満たすため、この後と明日は〈聖ダン〉に潜って攻略者の証を取ってきてもらうことになっていた。
「というわけで――頼むぞラウ、ロゼッタ」
「承った。彼女たちを無事〈聖ダン〉攻略させてこよう」
「任せてください。私の〈イブキ〉で、即攻略して参ります」
「行くぞゼルレカ。この前の続きだ」
「ちょ、ラウ先輩、マジで!? 今からか!?」
「効率を求めすぎてて驚愕が止まらない」
「あーれー!? 攫われる~~」
「ゼフィルス先輩、いってきま~す」
こうしてゼルレカたちは連れて行かれてしまった。
ラウは〈獣王ガルタイガ〉にかなり世話になっている関係でゼルレカとは知っている仲だ。故にこのリーダーを務めてもらった。
ロゼッタは〈イブキ〉による運送役。本人曰く、今は〈イブキ〉を走らせていたいそうだ。ロゼッタ号が帰ってきたのはもう2週間以上も前のことだが、未だにロゼッタは〈イブキ〉にご執心らしい。他にフラーミナやカタリナたちも付いていく様子だ。
ちなみに〈聖ダン〉は聖なる何かがあるのか、日も無いくせにずっと明るい世界が保たれているので夜行っても攻略しやすいのが非常に良き。日が暮れてから行くのもアリなダンジョンなのである。みんないってらっしゃーい。
でもマシロの労いが消えることがちょっと悲しいのは秘密。
その後俺たちは、夜の20時くらいまでボス周回をやりまくり、大量の素材やドロップを稼いで帰還することにしたのだった。
翌朝、テスト期間の前日。ダンジョンに入れる最終日も同じくボス周回!
無論、この日は朝から晩までである。
送り出したゼルレカたちも、無事17時には〈聖ダン〉を攻略して戻って来た。
すでに〈火山ダン〉のボスは倒してあるので、これで晴れて上級上位ダンジョン入ダンの条件を満たしたことになる。やったな!
夕方にギルドハウスで会った4人は、ちょっと茫然としていたよ。マシロもだ。ちょっと可愛かった。
さらに昨日はボス戦に参加出来ていなかったメンバーも順に攻略してもらい、こっちも全員に攻略者の証をゲットさせることに成功!
これで今回の目標、終業式までに全員上級上位ダンジョンの入ダン条件達成は為した!
よっしゃー! 今日は打ち上げだー!
ちなみにこの2日だけで〈上級転職チケット〉は14枚も出た。当たりすぎだ。
まあレアボス級のドロップになるとドロップ率が通常の倍なので、『ドロップ革命』すると当たりやすくなってしまうのだ。
なお、それを見たシヅキやエフィたちは。
「ああ、うん。これだけ当たってれば、チケットなんて尽きないよね」
「〈エデン〉の〈上級転職チケット〉のからくり見たり。幸運値上げてボス周回。今回一番の驚愕」
と、微妙と驚愕が混じった器用な表情でそんなことを呟いていたよ。
ふっふっふ。〈エデン〉のからくりに気付いちゃったか。
いやこの〈上級転職チケット〉、どうしようね……。
その翌日からはテスト期間に突入した。
レギュラーメンバーも、新レギュラーも新メンバーも全員参加でテスト対策!
ここで良い点数を稼ぎ、赤点回避は絶対!
冬休みには上級上位ダンジョンに入ダンするのだー!
一番心配なカルアも最近は平均点を取れるようになってきたらしく、非常によろしい。
他のメンバーもみんな勉強熱心なので安心だ。
新メンバーだけは今回が〈エデン〉に入って初めてのテストなので確認する。
「シヅキとエフィはさすがの3組だな。学力もバッチリだ」
「まあね! これでも〈秩序風紀委員会〉所属で通信課をやってたから、色々学んでおく必要があったんだよ!」
「えっへん。ちょっと気分がいいかも」
意外に勉強ができていたのがシヅキだ。
どうやらギルドの活動に伴い自主的に勉強するクセが付いていたらしく、前回順位は33位とかなりの高得点を叩き出している。
エフィは実地の分野が非常に得意な反面、勉強は不得意? とも思ったのだが、やはり3組所属なだけあり、前回は111位タイという結果でこれまた悪くない。
戦闘課2年生の学生数を考えれば相当上位勢に居ることが分かる。
1組のミューが同じく111位タイだったと言えばどのくらい順位が高いかが分かるだろう。エフィも十分1組所属になれるレベルのようだ。
「マシロも必須科目はかなりの点数だな。問題は〈転課〉して〈戦闘課〉に移ったから、そっちの勉強だが。〈新学年〉は半年で必修科目全てを学ぶ必要があったはずだが、大丈夫だったか?」
「はい! がんばってます!」
マシロは国語や歴史などの、全専攻で必修科目となっている授業は全て90点台、もしくは100点もあったという高得点だった。凄まじい。この子優秀!
とはいえ、マシロは〈転職制度〉を受けて〈新学年〉に入る際、〈戦闘課〉に〈転課〉している。〈戦闘課〉の専攻科目は覚え直す必要があるのだ。マシロにとって初めて学ぶことばかりだったはずで、これはフォローが必要だろう。
ということで、去年〈戦闘課〉に〈転課〉したのにもかかわらず、2学期の期末テストで1位を叩き出したオリヒメさんにマシロのことをお願いしてみることにした。
「もちろん構いませんよ。レグラム様と勉強会もするので毎日というわけには参りませんが」
「助かるよオリヒメさん。よろしく頼む」
「よ、よろしくお願いします!」
「はい。こちらこそマシロさん。一緒に勉強頑張りましょうね」
レグラム優先なオリヒメさんだが、全てにおいてレグラム優先というわけではない。ちゃんと協調性もあるので、こうして頼めばよほどレグラムとの仲を引き裂くような案件でない限りは引き受けてくれる。
もちろん、俺たちもレグラムとの仲を引き裂くようなお願いはしないので、ギルドとの関係は良好だ。まあ、ダンジョンでは必ずレグラムとパーティを組ませるくらいの配慮は必要だが。
「最後はゼルレカだな。こっちは集中的にやらないとな」
「お、お願いします」
問題はゼルレカだ。
前回のテストでは、平均点をギリギリ超えたという辺り。つまりカルアと同じくらいだったのだ。
基礎的な知識は入学前から持っていたらしく、入学してからはレベル上げに全力で打ち込んでいたためこの点数となったようだが……。
これには、アリスやキキョウがLV的に日々自分よりも先に進んでいたのがかなり効いて焦っていたとのこと。
まあ、確かにクラス対抗戦でLV70だったからなゼルレカは。
そこまで上げるには並大抵では無理だ。
相当レベル上げメインに尽くしたのだろう。おかげで勉強が少し疎かになってしまったらしい。
「大丈夫だよゼルレカ。一緒に勉強しよ?」
「はい。私たちでゼルレカの勉強を見ます!」
「アリス、キキョウ……」
そこにやってきたのは我らが1年生ロリーズ。
アリスとキキョウだった。
ゼルレカににっこり微笑むアリスも天使だし、同じく「私が責任を持って勉強を見る」と言わんばかりに使命感に燃えるキキョウも萌える。
とはいえ2人には2人の勉強もあるので、ゼルレカの勉強は2年生メンバーも加わって交代で見ることに決まった。
1週間でガチのレベルアップだ!
ダンジョンにいけない鬱憤を、全部勉強にぶつけてやるのだ!
こうして放課後〈エデン〉のギルドハウスに集まって行なう勉強会は進み、ゼルレカもカルアもだいぶ勉強が進んだのだった。
しかしゼルレカもカルアも猫人か……猫人ってテストに弱い特性でもあったっけ?




