#1557 今度は〈徘徊型参戦現象〉!? でも呆気なく!?
〈メタルドレイク〉からは安定の〈金箱〉だった。
〈金箱〉が安定してきてくれて大変結構。
俺もカルアも急ぎ向かう! もたもたしていたら開けられてしまうかもしれないからな!
みんなで集まって、開錠だ!
「これより〈金箱〉の開錠を行なう! 1体たりともモンスターを入れさせるなよ!」
「なんかさっきよりも指揮に気合いが入ってるよ!?」
「ゼフィルスさんらしいですわ」
俺の気合いの指示にカイリが目を丸くしていたが、きっと気のせいだろう。
幸いこの辺のモンスターは大体倒してしまったらしく、リーナの〈竜の箱庭〉に映るモンスターは近くにいなかった。
これなら安心して〈金箱〉を開けられるだろう。
「もちろん、最初に開けるのは私よね!」
〈金箱〉開け立候補はラナ。
まあ、2班のメンバーではラナ一択だろうなぁ。従者3人にシエラはあまり〈金箱〉を開けたがらないし。もっと開けても良いんだよ?
そしてラナはいつものお祈りをしてオープン。
中には〈メタルドレイク鎧〉という、かなり強力な防具が入っていた。
〈金箱〉級なので、能力はお察し。非常に高い魔法耐性を持っていて「さすがは〈亜竜〉の装備だ」と思う強力な装備だ。
さすがはランク9。上級中位ダンジョン級でほとんど最強クラスの防具だろう。
しかし、〈エデン〉の反応はというと。
「何これ? シエラが今装備しているものより弱いじゃない」
「ハズレですか?」
「魔法耐性は高いみたいデース。でも、見た目がちょっとゴツすぎデス」
「同意します。これを着て戦場を駆けるのは、ちょっと遠慮したいですね。ヴァンのような肩幅の広い男性なら似合うと思いますが」
ラナと従者一行からの評価は微妙だった。というかハズレ扱いだった。
シエラの装備と比べないであげてー。それアルルの最高傑作にして上級上位級の防具だから!
あと〈メタルドレイク〉の防具って言ったら上級中位級で言えば最高峰のはずだから。ほら、ヴァンが結構欲しがっている。
「ヴァン、装備してみるか?」
「はっ! いや、しかし」
「まあ、上級上位までの繋ぎだと思えばいいさ。見た目も他の防具に寄せる感じでデザインを出来る限り変更しよう」
「! ありがとうございます!」
ということでこれはヴァンが、〈謎ダン〉でゲットした〈守護伯爵シリーズ〉が完成するまでの繋ぎとして使うことになったのだった。
強い防具のはずなんだけどなぁ。
「……性能は高いと思うから、売れると思うわ。この先〈亜竜〉のボスはたくさん出てくるでしょうし、落胆せずにいきましょう」
シエラが落胆なる言葉を!?
どうやら〈メタルドレイク〉君、初の〈亜竜〉のボスとしてドロップにとても大きな期待をされていたようだ。ドンマイである。
やはり上級上位ダンジョンで本物の〈竜〉からドロップさせないと。
「こほん。それじゃあ出発だ! 今日中に55層に到着したいところだな!」
「「「おおー!」」」
俺たちの歩みは実に順調だった。52層、53層、54層でもエリアボスに遭遇。
〈フルート〉で呼んだわけでも、『エリアボス探知』で居場所を調べて会いに行ったわけでもないのに、向こうからやってくるので狩りが大変楽です。
メンバーのレベルも〈バトルウルフ〉狩りでほとんどが50になっているし、まったくと言っていいほど支障なし。
全部ボコボコにしてあげたよ。〈金箱〉3つゲット!
その日は55層にたどり着き、お宝フィーバーエリアで大量の〈亜竜〉系レシピもゲットした。
〈金箱〉が多くドロップするようになって〈木箱〉産のレシピや〈銀箱〉産レシピが不足気味だったからな。良いお土産が出来たぜ。
マリー先輩なんか、〈木箱〉産や〈銀箱〉産レシピも結構喜んでくれるのだ。
特にランク9である〈火山ダン〉の装備とか、たとえ〈木箱〉産だとしても上級中位ダンジョンを攻略できるくらいには使い物になる。
これから上級中位ダンジョンに入ダンしてくる学生がまだまだ多い中、こういうリーズナブルなレシピの方が売れると喜ばれるんだよ。
ここまでお宝フィーバーエリアに到着すれば、開け尽くす勢いで大量のアイテムやレシピ、装備をゲット出来ているのでホクホクです。
1番乗り気持ちいい! 見ろ、ニーコなんて今までのあれやこれやを晴らすが如く「お宝はぼくの生き甲斐だー!」なんて叫んでいる。
お宝とはつまりボスドロップ。やっぱりニーコもボス戦やりたかったんだな!
よーし俺に任せておけ!
なお、その時ニーコが「ふおおっ!? なにか今、すっごく言ってはいけないことを言ったような!?」と凄まじい悪寒に震えていたことなんて俺には知るよしもないのだった。
そして、その翌日。
俺たちを待っていたのはなんと、徘徊型ボスだった。
お宝フィーバーエリアは行き止まり。正規ルートへ戻り、53層へ侵入した時のことだ。
空を駆ける亜竜が俺たちに向けて突っ込んで来たのである。
「あれは、〈ワイバーン〉? いえ、その進化系ですか!」
「『看破』! あれは、〈ダークレッドナイトワイバーン〉と出ました!」
「! 夜が広がって行くデス!」
襲来したのはなんと徘徊型ボス、〈ダークレッドナイトワイバーン〉。
待ち受けていたというか、突っ込んで来たというか。
その名の通り、その姿は黒。そこに赤色の亀裂のような模様が何個も入っており、かなり邪悪色に染まっている。姿はワイバーンを大きくした感じだ。
〈黒竜〉ルートや〈暗黒竜〉ルートに進化する、1歩手前の〈亜竜〉種だ。
その能力は自分の周囲に闇を広げ、夜を作るというもので、なんと環境変化系スキルを使用してくる。
当然黒を基調とした身体をしている〈ダークレッドナイトワイバーン〉、長いので通称〈夜ワイン〉と呼ばれていた徘徊型は、闇夜に紛れて姿が見えなくなってしまうのである。
おいおいおいおい! 〈亜竜〉が姿を隠すアサシンスタイルってどういうこと!?
と思うかもしれないが相手は徘徊型。
徘徊型の攻撃は奇襲がメインだ。自分の姿を隠すなんて奇襲そのものである。つまりこれが普通。
問題は、相手〈亜竜〉なんだよなぁというところだ。
あの〈ワイバーン〉の強力な攻撃が闇夜に紛れて襲ってくるとかね、半端ないですよ。でもね、
「ギャアアアアア!!」
「隠れようとしても無駄よ! 私の攻撃は闇夜を照らし、必ず攻撃が当たるんだから! 『大聖光の十宝剣』!」
「ギャアアアアアアア!?」
ラナにとってはあまり関係無かったんだ。
ランダム攻撃である『大聖光の十宝剣』は〈聖属性〉と〈光属性〉の攻撃。
超ピカピカしている光の宝剣は、闇なんて何のその。
明るく照らして隠れていた〈夜ワイン〉を見つけ出し、全弾命中を成し遂げていた。
いやぁ、さすがはラナだわ。
この通り、闇夜に隠れるスタイルなら、闇夜を明るく照らしてしまうのが攻略のコツだ。
ラナの宝剣なんか、刺さった状態でもしばらく光っているからな。居場所バレバレなんだよ。
「一応やってみるか、〈打ち上げ月光雨〉! ――ダメか、それなら、ミサト、『サンライト』で引っ張り出せ!」
「! 任せてー! 『サンライト』!」
「よし、2班と4班が担当だ! 他の班は他のモンスターを近づけさせないよう対処してくれ!」
一応〈夜ダン〉の救済アイテム〈打ち上げ月光雨〉も使ってみたが、こっちは不発だった。まあ当然だ。試してみただけだからな。
続いてミサトの『サンライト』で明るく照らしてもらい、2班と4班で対応。
〈夜ワイン〉は普通に戦ったら強いボスだったんだが、シエラに防がれたり、メルトに叩き落とされたり、クラリスに剣の雨を降らされたり、ラナに宝剣をズドンされたり、シズに飛行特効攻撃をズキューンされたりして、最後は光に還っていった。
あ、呆気ない。とても呆気ないぞ〈夜ワイン〉!
相性の良いメンバーを当てたの俺だけど!
いや、うん。自由に動かれたら、それこそ上級下位ランク4の徘徊型、〈音速ロック鳥〉よりも全然強いからな〈夜ワイン〉。〈盲目〉と〈暗闇〉両方使ってきて、見えないところをズバンと狙ってくるから。シエラを当てたのは仕方のないことだった。
あといくら相手が空を飛んでいても、〈エデン〉にとってはさほど問題にならない。
結果はこの通りだ。
「私の祝福はすでに掛かっているわよ!」
「〈金箱〉は――2つですわ!」
ドロップしたのは〈金箱〉が――2つ!
よっしゃー!! 上級上位級の〈金箱〉がまた2つもドロップしたぞーーー!!
「『ゼフィルスさん報告ですわ。53層のエリアボスなのですが、こっちからは〈銀箱〉でした』」
「なにぃ!? まあ、それは仕方ないな! だが、3班はよくエリアボスの襲撃を防いでくれた!」
実は徘徊型が来襲中なのに、エリアボスも来ちゃっていたのだ。
本来ならさあ大変、となるはずが、3班のルル、シェリア、ラクリッテ、ノエル、マシロがこれを対処。
こちらはあまり認識されずにぶっ倒されてしまったのだ。
惜しむらくはラナが徘徊型と交戦していたため『プレイア・ゴッドブレス』を掛けられなかったことだろう。〈銀箱〉だった!
「さすがは〈エデン〉のメンバーだな。ボス2体が襲ってきても余裕で切り抜けるのかよ」
「なんでだろう、最近ボス2体くらいで驚かなくなりつつあるんだよ……」
ゼルレカが顎まで伝った汗を拭う仕草で賞賛すると、その横にいたクイナダが少し遠い目をしていた。いかん、クイナダが染まってしまいそう!
どうしたら止められるだろうか? 誰か教えて!
「ゼフィルス何やってるの! 〈金箱〉を開けるわよ!」
「そういえば俺、〈火山ダン〉に来てから1個も〈金箱〉を開けてない!」
まあ、サポートしていたので当たり前なのだが、ラナが2日連続でうきうきしながら〈金箱〉の前に座ったのには、ちょっと羨ましくなってしまったんだぜ。
なお共同作業という手もあるが、あれは1年生が合流してから久しくしていない。
上級生の威厳がピンチになってしまうからな!(手遅れ)
それはともかく徘徊型の〈金箱〉だ。
開けるのはラナとノーア。
まずノーアがオープンした。
「開けてみますわ! ……レシピですわね! エステルさん、お願いしますわ!」
「はい、『解読』です!」
「――読めましたわ! 〈黒竜装備シリーズ〉の全集と書いてありますわ!」
「全集レシピ来た!?」
ニーコが参加していないのに徘徊型ドロップで全集が来た!!
きっと俺たちの普段の行ないが良いからに違いない!!(確信)
しかも〈夜ワイン〉の進化系、〈黒竜〉の装備シリーズじゃねぇか!!
〈夜ワイン〉の素材を集めるのは大変だが、これは欲しいぞ!
昨日の〈メタルドレイク鎧〉なんて目じゃない性能だ!
たった1日で性能を超された〈メタルドレイク鎧〉とヴァンにはとても目を向けられない!
「次は私よ! あれ? これは何かしら? ハープみたいだけど」
「―――!!」
「アイテムですね。『解析』です! これは、〈竜共のハープ〉というアイテムみたいです。回数は3回、えっと――これは! 〈亜竜〉や〈竜〉のテイム率を大幅に上げるアイテムのようです!」
「え、本当!?」
「間違いありませんラナ様!」
「すっごいわね!!」
「「「「おお~!」」」」
これまた凄いものが来た!
そう、〈竜共のハープ〉はテイムサポートアイテム!
しかも回数系のアイテムなので実質何度も使える最強のテイムアイテムの1つだ!
こ、これ、リアルでは最高の〈竜〉軍団を作れるのでは……!?
や、やっべぇ。夢が広がりすぎるぞ!!




