#1556 亜竜の跋扈する51層エリアボスは当然ボス亜竜
〈亜竜〉は中々の迫力で俺たちを出迎えてくれた。
5班が一番槍を決めてニーコが肩で息をしながら撃破した後から、次々と〈亜竜〉に遭遇。
空を飛んでいる個体も多いので、そういうの相手には重力を操るメルトがいる4班や、空を飛べる5班などが担当していた。
「3時の方角から〈ワイバーン〉! こっちに向かってきてるよ!」
「〈ワイバーン〉まで居るのか!」
「ん! えっと9時くらいの方角から〈ドレイク〉も」
「〈ワイバーン〉の方は5班を当ててくれ! 〈ドレイク〉にはラウとナキキの居る7班で対処だ!」
「ゼフィルスさん、6時の方向に〈ワイアーム〉が出現しましたわ! あとニーコさんから『もう無理~~』と連絡が」
「〈ワイアーム〉はメルトに撃ち落とさせるぞ! 4班を送ってくれ! あとニーコならやれるさ! いけるいける!」
うーん、まさに〈亜竜〉祭!
ここ、方円陣形もどきの中心地ではまさに襲い来る〈亜竜〉への対処に追われていた。
いくら単体しかエンカウントしないとはいえ、俺たちも集団で行動しているのでどうしてもエンカウント率は高くなる。
最初は〈亜竜〉という凄まじく迫力のあるモンスターにちょっとびっくりしていたメンバーたちだったが、全員に1度は〈亜竜〉と戦ってもらい、経験してもらったら、どうやら慣れたみたいだ。
まあ、〈亜竜〉よりもとんでもない見た目のボスと何度も戦ってきたからなぁ。
こいつらは所詮ただの通常モンスター、ボスよりも全然弱いため、慣れれば対処はできる。
「ギャアアアアア!?!?」
あ、〈ワイバーン〉が早速沈んだな。ほらニーコはいけた! なにも問題は無い!
「ん。〈ドレイク〉も終わった。ミジュ、また強くなってた」
カルアからも報告。
〈ドレイク〉は〈ダン活〉では〈亜竜〉に分類され、恐竜と竜のちょうど中間みたいな身体をしている。翼は中途半端にあって、羽ばたいたりはするが飛べはせず、クジャのように風で攻撃するのに使用される。
どうやら向こうの打撃班はラウとミジュ、さらにナキキの強烈な竜特効攻撃で速攻で倒したようだ。
「〈ワイアーム〉もそろそろ終わりますわ。やはりメルトさんがいると脆いですわね」
リーナから〈ワイアーム〉の撃破も時間の問題と報告が来た。
〈ワイアーム〉とは空飛ぶ〈シーサーペント〉、とでも言おうか。
手足がなく、ヒレがまるで皮膜のような見た目に異常発達していて翼みたいになっているのが特徴だ。
〈リヴァイアサン〉は鶏冠のような頭から背中まで伸びるヒレを持ち、「どうやって空飛んでるの!?」という感じなのに対し、〈ワイアーム〉はヒレで空を飛んでいるっぽい見た目で、まだ「ああ、なんか空も飛べそう」と思える感じだ。
ちなみに〈ワイアーム〉は手足がないためか、地面に叩き付けられると脆く、メルトやフィナ、エフィによって地面に落とされると、後はもう消化試合みたいになるので楽勝となる。見た目は一番強そうなのにな~。
「クリア! 12時の方角よりエリアボス接近! あと3分」
「オーケー、シエラたちの2班を当てるぞ。3班を待機させ、いつでも参戦できるように配置。リーナ、通信を頼む」
「了解ですわ!」
ここは51層、そのエリアボスとなれば――〈亜竜〉型ボスだ。
故に2班のシエラ、ラナ、エステル、シズ、パメラという、かなり強力な布陣を当てる。
〈亜竜〉ボスへ最初に当てるのにこれ以上の戦力はない。
もしものために3班のルル、シェリア、ラクリッテ、ノエル、マシロも待機させ、予想を超えるアクシデントが発生した場合に備えるのも忘れない。
まあ、2班だけで倒せるだろうなぁ。
「ラナ殿下、宝剣を発射! エリアボスに着弾、よし!」
「カルアは周りの通常モンスターに横やりを入れさせないように見張っていてくれ! エージェントは行けるか?」
「ん。エージェントアサシンだとダメージがせいぜい、倒しきれない」
「了解、なら斥候だけ続けさせてくれ」
「ラジャ」
カイリが近くに居てくれるし、周囲はカルアが見張っていてくれるから安心して見守れるなぁ。
前方では早速51層のエリアボスへラナが初撃を命中させていた。
遠距離先制攻撃だ。
ここ51層からはボス全てに〈亜竜〉が登場するようになる。
初ボスの名は――〈メタルドレイク〉。
〈ドレイク〉系がメタル装甲を纏った姿である。
防御力も攻撃力も普通の〈ドレイク〉とは全く違う、強力なボスだ。
51層ボスということもあり、先程のようにラウたちが打撃で止め、逆にぶっ飛ばすことも難しい。
となれば、受け止めるしかない。
「凄まじい突進! 2班、シエラさんが前に出ます!」
「邪魔にならないよう、俺たちの位置取りには注意してくれ!」
「周囲に指示を出しますわ! 『ギルドコネクト』!」
〈メタルドレイク〉はその強靱な足で一直線に突撃してきた。
シエラはそれを受け止める構えのようだが、避けたいこともあるだろう。
そういうとき後方に俺たち別の班がいると、避けられない、避けたらダメな状況が完成してしまう。
ボス戦を邪魔するのはNGなので、俺たちは少し離れた位置で迫り来る通常モンスターの対処に回った。
ボス戦中に〈亜竜〉の単体モンスターの襲来とか笑えないからな。
露払いが俺たちの仕事だ。
「ん、5時の方から〈ワイバーン〉」
「6班で抑えてくれ!」
「ん! 後ろ6時から2体、5時から追加で3体、4時からも1体」
「なに~? 6班と8班に加えて、エリサ投入だ!」
「まっかせてよ~!」
「報告来ました、エリアボスの名は〈メタルドレイク〉です! 大きさ8メートル超え! シエラさん、加速した〈メタルドレイク〉の突進を受け止め――弾き返した!?」
「『カウンターノヴァ』じゃん! いくら突進は攻撃の判定が分かりやすいからって初の〈亜竜〉エリアボスを相手に初手からカウンター決めるか!?」
相変わらずシエラがシエラである。
ズドーンとここまで特大のカウンターが決まった衝撃が聞こえてきたぞ。
見れば吹っ飛んだ8メートル級〈メタルドレイク〉がダウンして転がってた。
それ、ボスなんですが? シエラ、初手反撃でダウンっすか?
飛び掛かるパメラと遠距離で攻撃しまくるシズ、そして〈イブキ〉に乗って槍砲をぶっ放すエステルと〈白の玉座〉に座って悠々と宝剣をぶっ放すラナの姿が見えます。
完全に総攻撃です。ありがとうございます!
「う、む。相変わらずシエラは凄まじいな。私も見習いたいところだ」
「いや、初手からカウンター狙いにいけるのは防御力に安心感のあるシエラくらいだからな? リカは普通にパリィや相殺狙いでいいぞ?」
リカが俺の隣で唸っていたが、あれは参考にしてはダメだと思うんだ。
確かにリカのユニークスキルは突進にカウンターを取った時、凄まじい効果を発揮してくれるだろうが、初手からそれができるのはこの〈エデン〉と言えどシエラくらいだ。……いや、最近ノーアも怪しいんだよな。あの子、自分から飛び込んでカウンターを取りに行くから、受け身じゃなくて自分のタイミングでカウンターが取れますのとか言っていたし……。
話がズレたが、とにかくリカはあんな真似しなくて良いからな?
「ご主人様~今帰還したわよ~。4体も倒しちゃったんだから褒めて褒めて~」
「おうおう。頑張ったなエリサ。よしよし」
「ふにゃ~。フィナちゃんがいないことがこれほどすびゃらしいとは~。私、このダンジョン好きかも」
「そんな理由で好きになっちゃうんだこのダンジョン!?」
同じ1班のエリサだが、エリサだけは別行動。単騎で〈亜竜〉を倒せてしまうので、ちょっと出張してもらった。7体のうち4体を倒しちゃったらしい。さすが。
コウモリのカチューシャが装着された頭をなでなでするとエリサが蕩けたことを言う。フィナとは別の班というポジションが相当嬉しいらしい。
この機会に甘えまくっていた。
「あ、〈メタルドレイク〉沈黙。光に還ったよ! ドロップは〈金箱〉!」
「「〈金箱〉!」」
和んでいたらカイリから報告。
あ、いつの間にか〈メタルドレイク〉が光になってる……。
でも、そんなことより俺もカルアも〈金箱〉に反応してしまうのだった。
〈亜竜〉が跋扈する51層は、こうして順調な出だしを切った。




