#1555 ついに登場――〈亜竜〉の怪獣大決戦!
〈デブ丸〉からは〈金箱〉がドロップしていた。
さすがはラナの『プレイア・ゴッドブレス』。
〈金箱〉バンザイ!
中身は――〈溶岩鎧シリーズ〉の防具が2点。防具2点か~。うん、これは売ってしまおう。
まあ、普通はこんなもんだよな。次行ってみよう!
「5層のボスさん、見かけ倒しでしたね」
「それね! 5層のボスってまず弱いんだけど、強そうな見た目で弱いってあまり無かったかも?」
マシロの呟きにトモヨが同意する。
〈デブ丸〉は頑張ったよ。
動けなくなるくらい鎧を身に着けて自身を強化したり。転がるを身に着けて強力な攻撃と移動を身に着けたり。
最後の『噴炎転がり』なんて〈デブ丸〉の必殺技だったんだが……。
まあ、相手が悪かったな、安らかに眠ってほしい。
「それじゃあ今日の目的は達成だな! 少し『発掘』して戻ろうか!」
「賛成です! ソドガガ、出番だよ!」
「任せるぞい!」
おお? 今日は寡黙なソドガガも気合いが入っているな。
モナたちも手伝い、もの凄い速度で『発掘』を始めた。
ここまで割と急ぎ足で進んできたし、エリアボスが相手でも碌に止まらなかったため、採集もちょっと限定されていた。まあそれでも方円陣形もどきの中であっちこっち採集していたようだが。
守護型ボスのパーソナルエリア内では自由に動ける。まるで水を得た魚のようだ。
5層の守護型ボスの付近は〈発掘〉ポイントが多く、〈採集無双〉の面々はあっという間に『発掘』しまくっていく。
俺たちも〈激しいシリーズ〉を使い、ドッカンドッカン『発掘』して参加したよ。
おお! 『一日一魂』で一気にドッカーンと『発掘』するの気持ちいい~。
素材は質も良いが、なにより数が最高。数百もの素材をゲットだ。
良い素材が手に入ったな。この火山でしか手に入らない素材は、割と多いのだ。
特に『火耐性』系の防具や〈火属性〉系の武器を使う時に重宝するし、火山と言えば爆発、とでも言うように〈爆弾〉系の素材も豊富だ。
ハンナたちのお土産にも最適だろう。
こんな感じで、俺たちは順調な出だしを決めた。
これから毎日放課後は〈火山ダン〉攻略。
放課後で時間があまり取れないため、5層ずつ更新だ。
〈イブキ〉で超高速攻略を、とも思ったが、順調にいけば2週間で終わる!
ならば素材をゲットしまくろう! そして学園にいっぱい還元しようということで基本は徒歩となった。
〈火山ダン〉は全70層。うち、分かれ道の階層門があり、それも合わせれば90層を超える。
平日の10日、いやブリーフィングに1日費やしたので9日で攻略できるのが45層と考えると、約半分だ。
全員が最奥に到着し、尚且つ全員が最奥を攻略するためには、土日で15層攻略くらいしないと厳しいだろうが、なに、いざとなれば〈イブキ〉がある!
幸いみんなの士気は高く、毎日ダンジョンでも全然問題無しというのがありがたいところだ。新メンバーも加わり、新しい戦法や組み合わせをどんどん試しながら順調に進んでいった。
結果、俺たちは9日の時点で50層にたどり着いていた。中々のペースと言えるだろう。
素材は全部で万は超えるほどゲットしている。アルルだけでは使い切れないので〈生徒会〉にもたくさん流した。ハンナたちへのお土産だ!
あと平日2日と土日2日があるので十分70層へはたどり着けるペースだ。
お宝フィーバーが大変美味しいです。
だが、今までは序の口。ここからが本番。
この50層を超えたところから、この〈火山ダン〉の真の姿が見えてくるのだ。
それは51層に入った時に出会った。
「ギャアアアオオオオオオ!」
「ガアアアアアアア!」
「なに、あれ?」
「今まで見たことが無いモンスターなんだよ!?」
「しかもボスが2体、争ってる?」
「いや、あれはボスじゃない。通常モンスターだ」
「あんな大きいのに!?」
サチ、エミ、ユウカのちょっと呆然とした声に答えると、ノエルから素っ頓狂な声が上がった。
そう、あれは大型のモンスター。
小さい種類でも5メートルを超え、ボスかと見間違えるような迫力を振りまくモンスター。
鱗に覆われ、種によっては翼を持ち、空すら飛ぶことが可能。
そう、ここに登場するのは〈竜〉、いや、その下位種と言われている〈亜竜〉種だ。
〈亜竜〉系は単体モンスター。
つまりは〈猫〉系と同じだ。
群で行動することは無い分、ビッグサイズの身体とステータスを保持する。
この〈火山ダン〉の深層51層からは、こうした〈亜竜〉種が初めて登場するのである。
「クワァ!」
「ゼニス、これは気合いが入りますね」
おっと、うちで唯一の〈竜〉種であるゼニスが昂ぶっている!
何しろこの前進化したばかりだ。戦ってみたい様子だな。
今は小型化し、最近お気に入りなのがアイギスの肩の上。
全長1メートル近いとはいえ、半分は尻尾なので思いのほか小さいゼニスは肩にも乗れてしまうのだ。
「それなら一番槍はアイギスとゼニスに任せよう。あれは〈亜竜〉種のモンスターらしいぞ。『看破』で出た」
「〈亜竜〉種! 〈ワイバーン〉と同系統、ということですか!」
「〈亜竜〉がとうとう野生で出てきちゃった!?」
「この〈火山ダン〉では〈亜竜〉が登場するんですの!?」
俺が〈亜竜〉の存在を告げれば、アイギスは目を見開き、カグヤとサーシャがギルドメンバーを代表してびっくりしてくれる。
そうなんです。ここ〈火山ダン〉では、〈亜竜〉が出現するのだ! 〈ワイバーン〉も出るよ?
「ゼニスも〈亜竜〉とどっちが強いか試したいよな?」
「クワァ!」
「よし、それじゃあ決まりだ。5班のアイギス班に任せる」
「ゼフィルスさんはいつも冷静ですね。承知いたしました。〈亜竜〉への一番槍、このアイギスが務めさせていただきます!」
「よーし、頑張りましょうねアイギス姉さま! ゼニちゃんもヒナもですよ!」
「クワァ!」
「グァ!」
5班はアイギス、アルテ、ニーコ、フィナ、エフィというメンバーだ。
「ぼ、ぼくもアレに挑むのかい? ボスですらないんだよね? 勇者君?」
「大丈夫だニーコ。アルテのモンスターに騎乗させてもらえればニーコには危害は加えられないさ!」
「それでも万が一ということがあると思うんだよ!? それにぼくはボス専用で――」
「ニーコさん、いきますよ」
「大丈夫、ニーコの腕は中々。私が保証する。腕が鳴るよね?」
「そういう問題じゃないんだよー!? あとぼくの腕は鳴らないよ!?」
ニーコが亜竜の前に出るのに抵抗していたが、最終的にはフィナとエフィに連れて行かれてしまった。
ちなみに元銃使いだったエフィはニーコのことをかなり気に入っているらしく、最近よく一緒に居るところを見かける。
「フィナさん、ヘイトをお願いいたします!」
「了解です。『天空飛翔』! ニーコさんも空の旅、一緒に行きますか?」
「行かないよ!? フィナ君のそれ爆撃するやつじゃないか!?」
「あれは姉さまだけです」
タンクの側が一番安心――とは限らない。
フィナの提案にニーコはサッとアルテとヒナの影に隠れてやり過ごした。
「それにしても、なんであれは争っているんでしょう?」
「さあね。縄張り争いじゃないかい? 迫力ありすぎなんだよ。というか〈亜竜〉ってなんだい〈亜竜〉って――」
ニーコたちの前にいる〈亜竜〉は2体。
2体ともガップリ組み付いて大相撲していた。
6メートル級に迫る2体がガップリ組んでいる様子はニーコじゃなくても若干ビビるレベル。
そこへ、空から奇襲と共にフィナが落ちてきた。
「『天罰』です!」
「ギャアアアオオオオオオ!?」
「ガアアアアアアア!?」
「『宣戦布告』です!」
2体まとめてぶっ叩くフィナが素敵。
そのままヘイトを稼ぎに行くフィナ。振り向く2体の〈亜竜〉たち。
だが、上空から落ちて来たのはフィナだけでは無かった。
「いきますよゼニス! 『ドラゴンクロー・セイバーランス』!」
「クワァ!」
大型化し、16メートル級になったゼニスまで降ってきたのである。
そしてその大きな爪で、ズドン! ズバンではなくズドンである。
明らかに切り裂くよりも衝撃の方がデカい一撃だ。アイギスのランスも直撃し、大ダメージを与えて1体がダウンした。
【竜騎姫】強っ!
「いくよ――『星降りの光線』!」
そこへ天使の翼を広げるエフィも追加だ。
アイギスとゼニスが高速で2体のモンスターに強打をぶちかましてヒットアンドアウェイで距離を取ると、そこに空中から無数の光線が降り注いだのだ。
エフィは右手に長剣を、左手に銃によく似た杖を持つ〈杖剣〉スタイルだ。
ちなみに杖が銃に似ているのはエフィのこだわり。前職である【必殺人・鬼狩り】時代が〈銃剣〉スタイルだったため、それに寄せてデザインを変更している形だ。
杖にはちゃんとトリガーっぽいものも作られていて、それを引く形で魔法を発動しているのがエフィ流。
〈五ツリ〉『星降りの光線』は文字通り星降りの様に上空からビームが降り注ぐ攻撃。
今までエフィはあまり空を飛びながらの戦闘に慣れていなかったため使ってこなかったが、最近ようやく空中戦が実戦で活用できるレベルにまで習熟したため、初めて使ってみたのだ。
「うわぁ。強い。でも〈亜竜〉も飛べるっぽい。撃ち落とした方がいい?」
通常モンスターに〈五ツリ〉なんて使ったら普通はひとたまりもないだろう。
しかし、相手は〈亜竜〉。単体モンスター特有のHPを含むステータスの高さで耐えきり、ダウンしてない方の1体が空中に浮かぶフィナ、アイギスとゼニス、エフィに向かい飛んだのだ。
そこへ思わぬ攻撃が炸裂する。
「やっちゃうよーヒナ! 『クリティカルスマッシュ』!」
「なんでヒーラーが突撃しているのかねー!?」
それは背中にアルテとニーコを乗せて大ジャンプするヒナだった。
強烈なキックが1体の〈亜竜〉の脇腹に直撃。
クリティカルが発生してダウン判定、そのまま墜落してしまったのだ。
なお、ニーコだけはひえひえ叫んでいた。
「今です!」
「ほらニーコ先輩!」
「ああもう――『ファーストドロー』! 『トレジャーショット』! 『激射』!」
もちろんチャンスだと攻撃開始。フィナ、アイギス、エフィ、アルテの攻撃で大ダメージを受けていた〈亜竜〉1体は、この攻撃で撃破。『トレジャーショット』のおかげでドロップが増えたよ。やったね!
でもニーコは嬉しくなさそうだった。むしろちょっと涙目になっている。
「ギャアアアオオオオオオ!?」
「空中戦で私たちに勝とうなんて、早いです! 『ミカエルラッシュ』!」
「だからなんでこの子たち空中で戦ってるのかねー!?」
うむ、もうお気づきかもしれないが、この5班は驚異の空中戦メンバーで組まれているのだ。飛べないのはニーコだけである。
そんなニーコもアルテが操るヒナの背中に乗せてもらい参戦中だ。
アルテ、必要があれば〈ワイバーン〉も出す所存。ニーコの悲鳴が轟くこと間違い無しだ。
気が付けば竜と亜竜と天使に囲まれているニーコのできあがりである。
うむ。やはり5班にニーコを預けて正解だったよ。
「勇者君ー! 後で覚えているんだよー!」
ニーコがさらなるやる気(?)で銃をぶっ放している光景に、俺は大変満足したのだった。




