#1551 あと1ヶ月ある余裕→あれ?全然時間足りない!?
ダンジョン週間も終わり、日常が帰ってきた月曜日。
カレンダーを見てみる。今日は11月24日だ。冬休みまで、あと1ヶ月。
この冬休みで上級上位ダンジョンが解放される。一気に攻略して行きたいね!
ということで、最低でも1ヶ月以内にランク9、〈爬翔の火山ダンジョン〉、通称〈火山ダン〉を攻略する必要がある。
余裕だな。
だが、ギリギリで攻略してしまうと、〈火山ダン〉で手に入れたレシピや素材が加工しきれない可能性が出てきて出遅れてしまう。
なるべく早く攻略する必要があるだろうな。
よって、俺は月曜日の放課後、ブリーフィングを開くことにした。
「みんな! 今日は放課後の貴重な時間に集まってくれてありがとう! メッセージでも伝えていたとおり、上級中位ダンジョンのランク9、〈爬翔の火山ダンジョン〉、通称〈火山ダン〉の攻略スケジュールを打ち合わせしたいと思う! そして2学期の終業式には上級上位ダンジョンが解放される手筈になっている! 冬休み中は存分に上級上位ダンジョンを攻略しよう!」
「「「おおー!!」」」
「「ええー!?」」
おや? 手始めに今決まっている上級上位ダンジョンのことを話したら、やる気な声と驚愕の声が返ってきた。
ちなみに、驚愕の声の方が少なかったぞ。
「またあなたは、上級上位ダンジョンまで攻略しようというのね」
「おう! 目標は大きく高く! 最上級ダンジョンまで攻略する気だからな、上級上位ダンジョンなんて通過点だ!」
「今サラッと最上級ダンジョン攻略って言ったですの!? ゼフィルス先輩は上級上位ダンジョンを通過点呼ばわりですの!」
「あと1ヶ月で解放する手筈、もう整ってるの!?」
「ふええ!? 上級上位ダンジョンの解放が許可された!? 本校全体が上級上位ダンジョンの攻略を望んでいるってこと!?」
うむうむ。サーシャ、カグヤ、クイナダはいつも良いリアクションをお届けしてくれる。
そして、とても良い質問だ! もちろん答えさせてもらうぞ!
「昨日学園長のところに行ってな。上級上位ダンジョンの解放について話し合ってきたんだ。今話したとおり、俺たちが〈火山ダン〉を攻略すれば上級上位ダンジョンが解放される手筈になっているぜ」
俺の回答にギルドハウスの会議室がざわざわする。
だが、1年生たちはともかく、古参のメンバーたちは前向きな者が多いな。
むしろ気合いを入れているように見えるんだぜ。
ふふふ、俺も気合い入れないとな!!(※入れすぎ注意)
「待ってゼフィルス。1ヶ月で〈火山ダン〉を攻略すると言ったかしら? それは冬休みまでに攻略するということよね? 冬休みの時間を全てと言わずとも、多くを上級上位ダンジョンの攻略に注ぐために」
しかしここで待ったが掛かった。掛けたのはシエラだ。
俺はシエラの疑問に深く深く頷いた。
「その通りだ! 〈上級の狼ダン〉も実質5日で攻略出来たし、1ヶ月もあれば〈火山ダン〉の攻略は十分可能だろう?」
そう自信満々に告げた俺に、シエラは首を横に振ったのだ。
「ゼフィルス、もしかして期末テストのこと忘れてないかしら?」
「…………あれ?」
期末テスト。
それは夏休み、冬休み、春休みの前に行なわれる、その学期に習ったことをどれだけしっかり学べているかを確認するテストのことである。
そしてここが重要。
テスト期間中である2週間は、ダンジョンが閉鎖されるのである。閉鎖されるのである!(超重要な2回)
「やっぱり、抜けていたわね」
しまった! 俺としたことが!
うっかりテストを忘れるなんて! 確かに冬休み前には2学期末の期末テストがある! その期間、ダンジョンに潜れない! 攻略が滞ってしまう!
さらに赤点なんて取ろうものなら冬休みのメンバーすら欠けてしまうのだ!
どう考えても大変な事態だ。
だが、まだ調整できる範囲内!
ここはみんなが集まるブリーフィングの場、話し合ってみんなでスケジュールを整えればいいのだ!
「テストは12月15日月曜日から12月18日木曜日まで行なわれるから、テスト期間は12月8日月曜日から開始ね」
「テスト明けの12月19日は終業式、そして冬休みに突入するから、12月7日の日曜日がリミットということになるな」
「別に冬休みと同時に上級上位ダンジョンを解放しなくちゃいけないという決まりなんてないのだから、少しずれ込んでも良いと思うのだけど。あなた的にはダメなのよね?」
「ああ。すでに学園長も終業式で上級上位ダンジョンが解放できるよう動いているからな。俺たちも合わせて乗り込みたいところだ! きっと良いパフォーマンスになる」
サービス初日からプレイするのはゲーマーの嗜み。
終業式に上級上位ダンジョンが解放されるのであれば、終業式にはすでに上級上位ダンジョンへの入ダン条件を整えておかなければならない!
それがゲーマー魂だ。
というか貸し切り状態なんだから最初に入ダンしたい! 絶対だ!
「ここで初日に〈エデン〉が入ダンすれば、絶対に注目される。それは羨望となり、他のギルドの原動力や後押しとなるだろう。〈エデン〉のように上級上位ダンジョンへ入りたいという気持ちが生まれてくれるに違いない! 2日目以降じゃダメだ!」
そう、俺は熱く語った。
〈エデン〉が学園の羨望の的になるのだ。
ギルドメンバーからはキャーという照れるようなざわめきが至る所から聞こえて来た。みんなも乗り気だ。
この調子なら、間に合わせてくれるに違いない。
そこから俺たちは終業式までどういうスケジュールを組むかについて熱く語り合った。
みんなも間に合わせたいという気持ちが出てきてくれたため、平日の放課後でも時間をかなり合わせることができた。
土日は計4回。平日は今日を合わせて10回ある2週間。
これで〈火山ダン〉を攻略する。〈イブキ〉だってあるんだから何とかなるだろう。
上級上位ダンジョンの条件である攻略者の証、〈火山ダン〉を攻略すればほとんどのメンバーが条件を満たすが、それだけじゃ満たせないメンバーが4人いるのでそっちも調整する。
「ゼルレカたちは〈聖ダン〉今何層まで攻略出来てるんだっけ?」
「今50層ですよ。これから50層の分岐に突入します」
俺の質問に代わりに答えてくれたのはロゼッタである。
昨日までのダンジョン週間中、〈上級の狼ダン〉の最奥に到着したあと、俺たちは〈バトルウルフ〉を含む周辺のボス狩りに勤しんだのだが、ゼルレカたち新メンバー4人はそれよりも〈聖ダン〉の攻略を優先してもらっていた。
すでに攻略本もあるため、暇なカイリも連れて行き、帰ってきたロゼッタ号をとても嬉しそうに乗り回すロゼッタを含むレギュラーメンバーが全力でキャリーして、もう50層に到達しているらしい。
パナイな!
これなら少しの調整で新メンバーも〈聖ダン〉の攻略者の証を手に出来るし、上級上位ダンジョン解放までに間に合いそうな予感。
なぜかゼルレカやシヅキが引きつっているような顔をしていた気がしたが、きっと気のせいだろう。
そしてテスト期間に突入したのちの、テスト勉強のスケジュールも今のうちに計画しておく。
1年生たちも1学期末の期末テストで経験済みなので大体分かる。
なら、残りの懸念はゼルレカたち新規メンバーだ。
こちらはどれだけ学力があるのか不明だった。
しかしゼルレカは〈1組〉、マシロも〈新学年1組〉。シヅキとエフィも〈3組〉相当の実力があり問題は大きくはないだろう。
1学期のテストの結果も悪くは無かったようなので赤点者の心配は無さそうだ。
そしてブリーフィングの結果、やはり一番のネックは、未踏破である〈火山ダン〉を2週間で攻略出来るのか? という部分に絞られたのだった。
これは、巻きで行くしかない!




