#1545 「クゥ~ン」上級の〈バトルウルフ〉戦決着!
〈バトルウルフ〉の第二形態、眷属呼びは、何事も無く防がれてしまった。
まあ、こっちにはシエラいるし。
というかこのメンバー、一番バトルウルフを狩った人選でもあるし。
このくらい慣れたものである!
「よし、眷属撃破!」
「頭は3つになっているから攻撃方法が少し変わっているけれど、基本的なタイミングは変わらないわ――ね! 『カウンターノヴァ』!」
「「「ウォン!?」」」
「ナイスシエラ! 『聖剣』!」
「とう! 『ヒーロー・バスター』! 『ヒーロー・バスター』ーーなのです!」
「どんどん行くわ! 『大聖光の十宝剣』!」
ズドーン。
強烈な威力のダメージが次々入っていく。
〈バトルウルフ〉も頑張ってはいるのだが、行動パターンの7割以上は完全に対処されていて、残りの3割もあまりシエラに届いていない状況。
ほら、ラナが攻撃ばっかしてるぞ。回復はどうしたんだ。
「「「ウォーーン!」」」
「あ、遠吠えです!」
「また眷属が来るな。シエラ、『完全魅了盾』は――」
「大丈夫、もうクールタイムは明けてるわ」
それじゃあ、また引き離しますか!
〈バトルウルフ(第五形態)〉は最初から眷属を連れているのではなく、眷属召喚ができるようになったようだが、所詮は眷属。
〈バトルウルフ〉と眷属を引きはなすことなんてお手のものになった俺たちにはどうってことなかった。
というかシエラの『完全魅了盾』が最高。あれでボスのタゲだけ引き寄せてどこかに連れて行ってしまうので分断がすごく楽。
ヘイト関係無く〈バトルウルフ〉と眷属が合流する『合流』スキルなんかも使ってきたが、それの対処も余裕。なにしろ初見じゃないからな!
こうしてボコボコにしていると、あっという間に2本目のHPバーまで無くなって、ついに第三形態へと移行した。
「……なんだかここまで苦戦らしき苦戦をしないで来てしまったわね」
「油断を誘う作戦、でしょうか?」
ち、違うんだ。
シエラとエステルが油断しないようにしっかり武器を構えて警戒するが、それは単に2人が慣れているだけなんだ。〈バトルウルフ〉戦に。
第三形態になった〈バトルウルフ〉はなんと3つの頭の内、1つが杖を、1つが大剣を咥えて構えているという新スタイルを導入してきた。
中央の闇頭はブレスや噛みつき担当の模様。
これは新しいパターンだな。名付けて『三頭流』!
とはいえ、基本は変わらないので他のボスより楽なのだが。
「ウォン!」
おっと頭の1つが杖を光らせ魔法発動。炎の津波のような攻撃を放ったーー!! しかし、シエラから一言。
「『マテリアルシールド』! ……今の攻撃、ブレスとなにが違うのかしら?」
なんと首を傾げられてるー!
まあ、今まで散々ブレス吐いていたからな。今更炎の津波の魔法を使われても、それ、魔法にする意味あったのかしら? という感じだろう。
だが、ちゃんと意味はある。
「バウ!」
今度は大剣を振りかぶるようにしてダッシュ斬撃。
どうやら炎の津波で目隠しして、その間に猛ダッシュ、接近して息も吐かせぬ猛攻を仕掛けるアクションだった模様だ。だが、そんなのシエラには無意味。
「――は!」
シエラが操る小盾が2枚、完全に大剣を受け止めたからだ。
だが〈バトルウルフ〉はそれでも止まらず、闇頭が大きな口を開けて噛みつこうとしている。だが、それも小盾に防がれてしまい。
「『ショックハンマー』!」
反撃までされてメイスで強打されていた。
杖頭の方は魔法を使い、今度は5つの大火球で攻撃。やっぱりブレスでいいのでは? と思わなくもない。ちなみにこれはシエラが大盾で完璧に防いでいた。
もちろんそんな攻撃がシエラに叩き込まれ、そして完璧に防がれている間は俺たちアタッカーが逆に猛攻を仕掛けまくっていた。
「いきなさい――『大聖光の十宝剣』!」
なんか1人アタッカーが増えているけどな!
「『聖剣』! さっきからラナは攻撃ばっかしているが、回復はどうしたんだ?」
「『大聖光の四宝剣』! だってシエラったら全然HP減らないんだもの! 継続回復だけ付けていれば余裕よ!」
まあ、そうなんだけど。
シエラには〈五ツリ〉の『盾姫ヒーリング』というパッシブスキルがある。これは『バトルヒーリング』系と呼ばれる、要はダメージを受けたら自動で継続回復するスキルだ。
これだけでも強いのに、ラナの継続回復魔法は、ユニーク効果が合わさり『継続回復』を2倍付与できる。
それにシエラの自己継続回復も重複するので、つまり通常の継続回復よりも3倍の早さでどんどん継続回復していってしまうのだ。
3倍回復。
なにそれ強い。しかもやっているのがシエラだからね。
シエラのHPを見れば、確かにHPも減っているのだが、7割以下まで下がらない。
どんどん回復していってしまうからだ。あ、今全回復まで届いた。
しかも本人、攻撃する余裕まであるのだ。
「『ショックハンマー』! ――麻痺、成功よ!」
「ナイスシエラ! 総攻撃だ!!」
「「「ウオーン!? オーン!!」」」
シエラの〈ショックハンマー〉は蓄積型。たとえ『耐性』があっても、何度も攻撃していれば〈麻痺〉になる。
『耐性』が高いはずの〈バトルウルフ〉も、シエラの攻撃を7回も食らってついに〈麻痺〉ってしまった。もちろん総攻撃だ。
大ダメージが入ったな。
「「「ウォーン!」」」
「ルル! バックステップ!」
「とう!」
「『サンダーボルト』!」
〈麻痺〉が解けたあとも〈バトルウルフ〉は頑張っていた。
大剣を使ったことで、周囲範囲攻撃の間合いが大きくなったのだ。
しかもアクロバティックな攻撃が増えた。眷属召喚も継続している。
おかげで接近しづらくなり、ルルが果敢に攻め込もうとするのを何度も抑えることになったよ。
エステルはしっかりその辺分かっているので安心。
接近して攻撃するよりも遠距離からの方がダメージが出ると判断すれば〈イブキ〉を使うという柔軟な考えもできる。
【戦車姫】の本領発揮だ。
「『ホーリースラストバースト』! 『ロングスラスト』! 『トリプルシュート』!」
おかげで〈バトルウルフ〉のHPも順調に減っていき、ついにレッドゲージに突入する。
「「「ウォォォォォン!!!!」」」
「怒り状態だ!」
「残り僅かよ。ゼフィルス!」
「おう一気に倒してやるぜ! 『勇気』!」
「ゼフィルスお兄様に続くのです! 『変身・プリンセスメイクアップ』!」
「承知です――『姫騎士覚醒』!」
そっちが怒りモードになるなら――こっちも本気モードだ。
「「「……クゥーン」」」
なんだか〈バトルウルフ〉、さっきまでギラギラしていた赤い瞳が急にしおらしくなった気がしたが、きっと気のせいだよな!!
「とう! 『フォースバーストブレイカー』! 『デュプレックスソード』!」
「『勇者の剣』! 『ディス・キャンセル・ブレイカー』! 『スターオブソード』!」
「『カウンターノヴァ』! 『インパクトバッシュ』!」
「『大聖光の十宝剣』! 『大聖光の四宝剣』!」
「『ロングスラスト』! 『トライ・スラストカノン』! 『ロングスラスト』! 『インパルススラストキャノン』! 『プレシャススラスト』! 『ホーリースラストバースト』! 『ロングスラスト』! 『スラストゲイルサイクロン』! 『レギオンスラスト』! 『ロングスラスト』! 『トライ・スラストカノン』!」
「「「ウ、ウォオン……!」」」
怒り状態で暴れようとした〈バトルウルフ〉だったが、まずルルがブレイク系の4連撃を決めてスキルを相殺。また何かスキルを使おうとしたので俺がブレイク系を使って相殺。連続で相殺され苦し紛れに放った攻撃はシエラに『カウンターノヴァ』を決められてしまい……! 残念。
ノックバックを見逃さずにぶっ飛ばしてもう何度目かも分からないダウンを奪い、総攻撃を叩き込んだのだ!
なお、その間ラナは遠距離攻撃を、エステルはずっとスラスト砲を連射していた。
いくら怒り状態で防御力が上がっていたとしてもさすがにこれは厳しく、〈バトルウルフ〉は耐えられずにHPがゼロになってしまうのだった。
腹を上にしたままエフェクトの海へ沈んでいく〈バトルウルフ〉が若干涙目だったように見えたのは、きっと気のせいだろう。――お疲れ様〈バトルウルフ〉よ!
すごく楽しかったぞ!
もちろんその後は、ラナが『プレイア・ゴッドブレス』を掛けてくれていたこともあって――〈金箱〉、しかも2つもドロップしていたのだった。




