#1538 〈金箱〉回!『革命勘』がとんでもない!!
「〈金箱〉キタっすーー!!」
「おーっほっほっほ!! やりましたわー!」
イエス〈金箱〉ドロップに沸く4班。
俺たち傍観組もすぐに合流した。
「エリアボス撃破おめでとう! 無事1年生だけで勝てたな!」
「ブイ。楽勝」
「少し緊張しておりましたが、そこまでではありませんでしたね」
「お嬢様がはしゃぎすぎていた方が気になりました。お嬢様は自分から受けに行きすぎです!」
俺が褒めるとミジュは勝利のブイ。カルアに習ったのかな?
シュミネはノーアがカウンターばかりして全然ダメージを負わないのであまり出番が無かったようだ。
クラリスはわざわざ自分から攻撃を受けに行くノーアのスタイルに、やはり今でも気が気ではない様子。
「おーっほっほっほ! あんな狼さん、私の敵ではありませんでしたわ!」
「なんかうちの役割を6割くらい取られていた気がするっす~」
ノーアはテンションが高い。戦闘中は自信満々にカウンターを決めまくっていたからな。カウンターはタイミングが命。なのに1度の失敗も無く倒しきったのだから凄まじい。
「いやぁノーアのカウンターはマジ神がかってたよな! 全部成功していたぞ!」
「はい! 実は最近気が付いたのですけど、私の『革命勘』がカウンターのタイミングを知らせてくださるのですわ! そのため最近は失敗知らずですのよ!」
「なに!? 『革命勘』はそんなことも教えてくれるのか!」
「以前ゼフィルス様が『直感』さんに耳を傾けるのだと教えてくれたのをヒントにした結果ですわ! 『革命勘』がLV10になったことで、今ではほぼ確かな確度でカウンターのタイミングがわかりますの!」
なんと! ゲームではカウンター失敗時の攻撃回避率上昇だったパッシブスキル『革命勘』にリアルではそんな効果が!?
最近ノーアのカウンターがマジ神がかってきているなと思っていたが、そんな理由があったとは!!
これが『直感』系の恩恵!! さすがは『直感』さんだ!!
「素晴らしい! それは素晴らしいぞノーア! これなら怖い物なしじゃないか!?」
「今の私に掛かれば、狼のボスさんくらい1人でも撃破できる気がしますわ!」
「はーっはっはっは!」
「おーっほっほっほ!」
ノーアパワーアップ!
これは笑いが止まらないぞ!
「…………お嬢様、ではそろそろ〈金箱〉を開けてしまいましょう。みな様お待ちかねですよ」
「ゼフィルスも、いつまでも笑っていると〈金箱〉が逃げるわよ」
「そうでしたわね! お楽しみの〈金箱〉ですわ!」
「シエラ!? 〈金箱〉が逃げるってどういうこと!?」
ノーアと一緒にテンション上げまくっていたらクラリスとシエラがちょんちょんと突ついてきてそう言ってきたんだ。
〈金箱〉が俺から逃げる!? 俺の意識は一瞬で引き戻されたんだぜ。
「では、僭越ながら私が開けさせていただきますわ」
「いいっすよ~」
おっといけないいけない。重要な〈上級の狼ダン〉初の〈金箱〉オープンだ。
俺も開けてみたいが、今回バトルに参加していないので傍観に徹する。なぁに、最奥ボスの時に開ければ良いのだ! 絶対逃がさない!!(決意)
「『ドロップ革命』が成功しているなら、これはエリアボスの中でも希少ボス級のお宝、ということになるのですね」
「ああ。クラリスの言うとおりだ!」
『ドロップ革命』は宝箱内アイテムのドロップテーブルを1段押し上げる。
階層ボス→希少ボスへ。
希少ボスからじゃないとドロップしないアイテムなどもあるので、是非そういう系が来てほしいところ! 果たして。
「〈幸猫様〉〈仔猫様〉〈愛猫様〉、どうか良い物をお願いいたしますわ!」
さらに今回から〈愛猫様〉のお力が加わり、俺たちのスキル『幸運』が『超幸運』にパワーアップしている。
これは期待が高まるぜ!
ノーアが〈金箱〉を掴み、開けてみる。すると、中に入っていたのは、1枚のレシピだった。
「レシピですわ!」
「すぐに『解読』しよう! ――エステル!」
「はい。〈幼若竜〉の準備は出来ていますよ――『解読』!」
相変わらず用意の良いエステルによって、即で『解読』が発動。
レシピのミミズがのたくったような文字が綺麗な活字の日本語に変換される。
「これは、〈大狼の牙剣レシピ〉ですわ!」
「おお! 武器のレシピか!」
「武器のレシピは珍しいわね!」
これは初っぱなから運が良い!
いくら上級中位級となって武器や防具、レシピのドロップが増えたとはいえ、武器は大体が通常ドロップなのだ。つまりレシピのほとんどは防具系。
武器はレシピでは無く本体がドロップすることが多い。レシピもドロップするが、明らかに武器は種類が少なくなっており、あまり強くない武器のレシピしか落とさなかったりする。
例えば〈アダマンタイトシリーズ〉とか。あれはなんかボス周回したらほとんど集まった。本当に〈アダマンタイトシリーズ〉だけはレシピがドロップしやすい。
だがそれもそのはずだ。例えばこの〈大狼の牙剣レシピ〉は階層ボスからはレシピがドロップしない。本体ドロップしか出ないのだ。
そしてレシピは希少ボスでのみドロップするのである。
つまりこれは希少ボスドロップ――革命大成功、というわけだな!!
「上級中位級の剣レシピですわね! 片手剣と大剣が作れるようですわ! 大剣でしたら欲しいですわね」
「ノーアの大剣は上級上位級の〈極寒零度・クリスタルブレード〉だから換装する必要はないんじゃないか??」
「それなら、『十全武器展開』用に確保ですわ!」
「ああ、以前使っていた〈アダマンタイトの大剣〉をそっちでまだ使っているんだったっけ、それなら交換してもいいかもな!」
「やりましたわ!」
やはり格が違うからな! 俺はオーケーを出す。
〈アダマンタイトシリーズ〉は言わば上級中位級の入門編。ランク1の〈謎ダン〉でレシピが手に入るレベルだ。
一応〈金箱〉産ではあるので上級中位を全て攻略するまで現役で使い続けられるが、上級中位級の〈金箱〉産の中では最も弱い武器と言っていい。
そして今回ゲットしたのはランク7。つまりはLV10分の差があるのだ。
できれば上級中位で他に強い武器をゲットしておきたいよね。
そんなノーアの心境が分かりみが深いので、帰ったら早速アルルに作製を頼んであげようと思う。あとクラリス、それとサチ辺りも換装できるか?
レグラムやルル、ロゼッタやゼルレカの武器は全然現役なのでそのままで。
もちろん俺の剣も現役だぞ。
「良いのが出ましたねお嬢様」
「ええ! 見てくださいな、この片手剣はクラリスにも良いと思いますわ!」
きゃっきゃとレシピを見て盛り上がる1年生。
良い光景だよな~。
だけど、少しここで時間を掛けすぎたようだ。
いつの間にか2つの群とエンカウントしていて5班と6班が対応に当たっていたりする。
ここって〈ウルフ〉系のモンスターばっかり出るため、エンカウントしやすいのだ。きっと匂いで来ちゃうのだろう。深い森から急に飛び出してくる〈ウルフ〉系は、索敵スキルを持っていないと対処し続けるのが難しいほどだ。
たまにボスも飛び出してくるしな。
「なるほど、〈上級の狼ダン〉はこのまま留まっているだけでどんどんエンカウントしてしまう仕様らしいな! なるべく動きを止めずにガンガン進んでいこう!」
「了解よ。それでゼフィルス、どっちに進むの?」
「こっちだ! 俺の勘が何かあると言っている気がする!」
「…………」
ちょっとこのダンジョンには初めて来たんだよ的な雰囲気を出しつつみんなを次の階層門へ誘導していく。
シエラがジト目をサービスしてくれた甲斐もあって順調に進めたよ。
エンカウントしても所詮は1層。通常モンスターなんて秒で瞬殺だ。
無事1つ目の階層門を見つけて2層へゴー。
1層と変わらない雰囲気なので真っ直ぐ階層門まで進んだよ。足を止めても良いことはない!
救済場所は隠し部屋と階層門の周囲にしかないため、移動し続けていないと逆に延々とエンカウントし続けてしまうダンジョンなのだ。
〈聖ダン〉のような数の圧力、という程では無いが、休まずにエンカウントし続けるというのはなかなかにやっかいだな。
さすがは上級中位ダンジョンの〈50エリア〉。
とりあえずそんなダンジョンだということをみんなに身に染みて分かってもらうため、5層までは〈イブキ〉無しで突き進んだ。
「なるほどね、音を出さなければエンカウントしなかった〈聖ダン〉より、何もしなくてもエンカウントしてしまう〈上級の狼ダン〉の方が難易度が高いわけね」
「そういうことだな。ほら、またおいでなすったぞ」
「今度は10班がいくであります!」
「おう。行ってこいヴァン! 一応気をつけろよ~」
そんなことを繰り返しながら進んでいくと、まず1体目の守護型と遭遇した。
5層の守護型ボスは――〈モチッコ戦士ウルフライダー〉という、ウルフ系にモチッコの戦士が騎乗しているボスだった。




