#1534 〈エデン〉の至宝、新たなご神体〈愛猫様〉!
レアイベントの塔から降りたあと、俺たちは20層の守護型ボス〈西のボス猫:ルド〉と〈東のボス猫:アッテナー〉を倒してすぐに帰還した。
俺はそのまま研究所に今回の成果を報告しにいったよ。
そしたら「スクショの回数回復代は全部研究所が持とう、どんどん撮ってきてくれたまえ!」「「「「「撮ってきてくれたまえ」」」」」と言われたぜ。
特に最後の「猫人」上級職の発現条件のところではミストン所長を初めとした職員がみんな狂喜乱舞してたんだ。
ふっふっふ、狂喜。それは狂うほど喜ぶと書く。
その気持ち、よく分かるんだぜ。俺もさっきなったからな!!
とても楽しい語り合いのあと、後のことをミストン所長に任せて俺はギルドハウスに一度戻ることにした。
ミストン所長は「学園長にも自分から報告しようじゃないか! ゼフィルス氏がこのまま行くとあまりの成果に学園長が卒倒してしまうかもしれないからな!」なんて冗談を言っていたよ。
学園長、驚いてくれるといいなぁ。
「たっだいまー!」
「あ! やっと帰ってきたわねゼフィルス! そこになおりなさい!」
「しまった! こっちのことを忘れてた!」
ギルドハウスに戻ったらラナが居た。
あまりにテンションが上がりすぎてすっかり忘れてたんだぜ。
いかん、これはいかんぞ。いかんから言い訳しよう!
「まあ待てラナ。今日はすっごいものを当てて来たんだ! これを見てもまだそんなことが言えるかな?」
「言ってやるわ! そこになおりなさい! 言い訳は聞かないわ!」
「そこは聞くって言って!?」
いかん。思っていたよりもラナの不機嫌さがマックスだった。
ラナの代わりに猫がいっぱいの〈猫猫ダン〉に行ってきたよ! 確かにそんなことを聞けばマックスになっても不思議では無い。
しかし、両手を腰に当てて足を肩幅に開き、堂々と立ちながらも「私、怒ってるんだからね」という顔がなんとも可愛らしい。
ここは、あの方にご登場いただかなくてはなるまい。
俺は即で〈空間収納鞄〉に手を突っ込み、しかしソフトな優しさを心がけてそれを取り出した。
「ふっふっふ。そのセリフはこれを見た後で言ってもらおう! いでよ、今日当たった我らが崇める新しいご神体様! その名も――〈愛猫様〉だーー!!」
「な、な、な、なああああああ!?!?」
じゃじゃん!!!!
〈愛猫様〉のお披露目だーーー!!
もちろんこれは研究所にもまだ内緒。
なにしろ、我らのご神体様だーーー! 研究させるわけにはいかない!
「な、なにその愛らしいぬいぐるみは! 〈幸猫様〉にそっくりじゃないの!」
そんな悲鳴じみたセリフがラナから漏れる。
まさにその通り、なにしろ〈幸猫様〉のフィアンセだからな。
それまで傍観していたメンバーもこれには興味を惹かれたようで、みんなどんどん集まって来た。
「新しいぬいぐるみね!」
「〈幸猫様〉の隣に飾るのでしょうか?」
「ダンジョンには不思議なものがいっぱいありますね」
エリサとフィナがはしゃぎながら聞いてくるのに頷く。
こうして不思議なんてなんにも感じない人も居れば、エステルのようになぜダンジョンでぬいぐるみがドロップするのか不思議に思う人もいるな。
「むむむ。もー! 卑怯よゼフィルス! そんなものを出すなんて……、仕方ないから今なら1抱っこで許してあげるわ」
「補給される!?」
ツンなすまし顔に定評のあるラナが我慢しきれず手を差し出してきた。
俺はそれを握って握手した。
「違うわよ! その〈愛猫様〉を是非メンバーに堪能させてという意味よ!」
「やはりこうなったか!」
〈幸猫様〉時代にも同じ事があった! 〈幸猫様〉には苦労を掛けたんだぜ。
だが、ここまでメンバーからキラキラした視線を向けられては抵抗することも難しい。
なにしろ、同行して〈愛猫様〉の存在を知っているメンバーもどんどん集まって来ているからな。
〈幸猫様〉時代よりも人が多い! これも試練か。
俺はいつ帰ってくるか分からない旅に〈愛猫様〉を行かせるしかなかったのだった。
〈愛猫様〉~!
「あれ? いつの間にかシエラも混ざってる!?」
「ええ。私が責任もって返すわ」
「ふう。それなら信用できるな」
俺の発言にラナが「どういう意味よ!?」とでも言いたげな顔で驚愕していた気がしたが、きっと気のせいだろう。
「ふわ~。ふわふわのモコモコなのです!」
「ほんと、なにこの感触、クセになりそうだわ」
「触ると意外に手が沈むのですね」
「ゼフィルス様」
「お、おう。分かってるさシェリア」
ルル、エリサ、フィナの番になるとすかさずシェリアが俺の横にやって来た。
抜け目ないんだぜパシャパシャ。
〈愛猫様〉を〈エデン〉のギルドハウスにお迎えできたという記念すべき日でもある。
ここはしっかりスクショを決めなければなるまい。
「次はシエラの番なのです! 優しく持ってあげるのです!」
「ありがとうルル。確かに、これは良い感触だわ」
「本当ね! 良い質感だわ。〈幸猫様〉に似ているようで、ちょっと違うのね」
え? そうなの?
シエラとラナに堪能される〈愛猫様〉のスクショを撮っていると、〈幸猫様〉マイスターのラナからとんでもないセリフが出てきた。
まさかの俺も知らない新事実。〈幸猫様〉と〈愛猫様〉で質感が変わるだと?
俺も思わず手が伸びそうになる。しかし、ご神体だ。もふ度が知りたいなんて理由で触れるのは咎められるんだぜ。
マジかよ。このギルドメンバーの中で〈幸猫様〉の感触を一番よく知っているのはもちろんラナだ。
そんなラナのセリフには確かな説得力がある。
俺には同じ感触にしか感じなかったが、僅かな違いを見つけたと見えるな。
〈幸猫様〉と〈愛猫様〉の質感は違う。なるほど。メモメモ。
まさかの発見もあったりしたが、夕食の時までになんとか全員が触りきれたようで、俺のところに帰ってきた。
「ああ〈愛猫様〉、苦労をお掛けしました。少し痩せましたか?」
「痩せるわけないでしょう」
「でも少しフワッとしていた質感が落ち着いてしまったイメージはありますね」
「それはいけない! 『スッキリン』発動だ!」
エステルの言葉に俺は急いで『スッキリン』を発動した。
綺麗にしたら毛を梳いて整えてっと。
なにしろこれからダーリンとなる〈幸猫様〉との顔合わせもある。
しっかり整えておかなければ。
「ふう。こんなものだろうか?」
「ええ。良い感じです。ちょっとリボンの位置を調整しましょうか」
その後は俺の意を汲んだエステルがちょっと身だしなみを整えてくれて、準備完了。
「ではこれより、我がギルド〈エデン〉の至宝、ご神体〈幸猫様〉と〈愛猫様〉の顔合わせを行なう!」
「「「「「わー!」」」」」
「ついに〈エデン〉の至宝にまで昇格したわね」
「ゼフィルス殿ですから」
〈幸猫様〉と〈愛猫様〉と〈仔猫様〉が居ればもう至宝と言っても過言ではあるまい。
最後の1体が手に入ったら至宝を超える表現を考える必要がありそうだ。
……難しそう。まあいい。
その件は未来の俺に任せればいいのだ。
俺はそっと〈愛猫様〉の身だしなみが崩れないよう慎重に持ち上げ、そのままギルドメンバーの行列を伴いながら神棚まで移動する。
「ああ〈幸猫様〉〈仔猫様〉。ここにもう一方、〈愛猫様〉が入られます!」
俺は宣言しながら軽く〈愛猫様〉を持ち上げ、ヘルプニャンを少し遠ざけたのちに即でさささと〈幸猫様〉と〈仔猫様〉の位置を慎重に移動。〈幸猫様〉と〈愛猫様〉が左右に並び、2体の前に〈仔猫様〉が来る、まさに親子のような配置で整える。
おおおおお――なんと神々しい。思わず召されそうになるかと思ったぜ。
そしてお祈り。
「〈幸猫様〉〈愛猫様〉〈仔猫様〉! どうかこれからも〈エデン〉を見守りください! そして『超幸運』をお授けください!」
その瞬間、ブワッと〈幸猫様〉と〈愛猫様〉と〈仔猫様〉が光を放つと、ギルド部屋にグロウな光が放たれた。
「「わぁ!」」
「「綺麗」」
「これが〈幸猫様ファミリーズ〉の祝福だ! みんな、ステータスを見て見ろ!」
「これは!」
「『超幸運』!?」
「『幸運』が『超幸運』になってる!」
変化は一瞬だ。
ステータスを確認してみれば、しっかり『幸運』が『超幸運』に変化していた。
今後はもっとドロップ率が上がるだろう。
「よし、お供え物しなくっちゃな!」
今日は〈幸猫様〉と〈愛猫様〉の記念日!
スクショ撮影会はもちろん、最後は神棚に載せきれないほどの数々の豪華な料理をお供えして、盛大な打ち上げが始まったのだった! 宴だー! ひゃっほー!
あまりに神棚に載せすぎて〈仔猫様〉の姿が隠れてしまうなんてトラブルもあったが、まあ些細なことだろう。
これでこれからも〈エデン〉は邁進できる!
お宝ももちろんがっぽりで…………ふはは!
ヤバいな、テンションがむくむく上がってきたーーー!
明日からもどんどん上級中位ダンジョンに出向いて、攻略してやるぞーーー!!
あとがき失礼いたします。
〈ダン活〉をいつも読んでくださり、誠にありがとうございます!
おかげさまで今年も無事毎日更新を切らさず続けることができました!
ついに年末だーーー!!
そして明日も年始から毎日更新だーーー!
では読者の皆様、良いお年をお迎えください!
来年も〈ダン活〉を、よろしくお願いいたします!




