#1530 〈白猫〉VS1班半数と2班全員――シエラの盾!
「シエラ先輩!」
「みんな、総攻撃よ!」
「とう! ルルのとっておきを食らうのです! 『デュプレックスソード』! 『ヒーロー・バスター』! 『ヒーロー・バスター』!」
「キキョウさんやアリスさんを追い詰めるなんて、猫といえど容赦はしませんよ――『大精霊様二大降臨』! 『イグニス』! 『サンクトゥス』! イグニス様、サンクトゥス様、懲らしめてください!」
「『あなたは寒さに弱くなる』! 『氷絶極刺砲撃』ですの!」
「モミジ! お願い!」
「コン!」
シエラ班のルル、シェリア、サーシャ、カグヤの攻撃がズドドドドンとダウンした白猫に突き刺さっていく。
共通するHPバーにはそれなりのダメージが入ったことを示していた。
「助かりました!」
「ありがとうございます!」
「『シールドスマイト』! 『グロリアススマイト』! お礼は後よ。私が一時的にタゲをもらうから、状況を報告して――『オーラポイント』!」
「は、はい!」
「『完全魅了盾』!」
ダウンが終わり、白猫が起き上がると同時にシエラのユニークスキルがタゲを強制的に固定する。
「フシャアアアア!」
「『城塞盾』! 『シールドフォース』!」
「え、えっと!?」
「キキョウさん、落ち着いてください。大丈夫です。タンクはシエラさんに任せ、まずは報告を。ゼフィルス殿は?」
「は、はい! シェリア先輩、あの多分ゼフィルス先輩とゼルレカはもう1つ上のバルコニーで戦っていると思います。私たち3人は登っている途中で襲われて――あ、そうだ、アリスは!?」
キキョウがアルテのヒナから降りて、少し落ち着かない様子でシェリアに状況を説明。しかし、直後にアリスを向こうのバルコニーに置いてきてしまったことに気が付いた。しかし、
「キキョウ、大丈夫~」
「ヒヒーン!」
「ア、アリス~~!!」
アリスはここまで登ってきたアルテの〈聖獣ペガサス〉ことペギニーに乗って飛んで来たのである。
これにはキキョウもシェリアもびっくりだ。
「なるほど、状況は分かりました。まあゼフィルス殿なら大丈夫でしょう。――シエラさん」
「了解よ。この猫を合流させないようにするわよ」
シエラは白猫の攻撃を捌きつつちゃんと話を聞いていたらしい。
さすがはシエラである。
素早く状況を把握し、ゼフィルスが戦っているであろうツインズの片割れの下にこの白猫を合流させない、引きつけておくことが自分たちの役目だと素早く判断したのだ。
今までの経験からツインズは連携させないことが肝要。別々に担当するのがベストと判断したのである。
白猫と黒猫は元々別行動を主体としているが、合流したらしたで連携が強力になってしまうので、シエラの判断は正解だ。
「そろそろ『完全魅了盾』の効果が切れるわ。私とキキョウ、どっちがヘイトを多く稼いでいるか分からないから準備して」
「わかりました!」
「フシャアアアア!!」
『完全魅了盾』はタゲ固定。
だが効果が切れるとタゲは当然ヘイトを多く持っている人へ向く。
シエラはできる限りヘイトを稼いだが、キキョウとどっちが多くヘイトを稼いでいるかわからなかったので注意した。
そして効果が切れると、白猫はシエラへのタゲを向け続けていた。
「タゲを貰ったわ――『鉄壁』! 回復を頂戴!」
「はい! 『狐の大回復儀式』! 『巫女狐の快方儀式』!」
これで見事にシエラがタゲをスイッチした形。
カグヤが回復魔法と継続回復をシエラに付与し、戦線を維持。
「猫さん、さっきはよくも~~『雷雲ゴロゴロ』! 『エレクトリック・ビーム』!」
「アリスがオコです!?」
「私も続くですのー! 『氷帝姫の眼差し』! 『クリスタルフロスト』!」
さっきキキョウを追い詰めんとした白猫にアリスが珍しくオコ。魔法攻撃をじゃんじゃん当てて行く。
氷魔法使いのサーシャも加わり、まずは〈五ツリ〉のデバフ魔法、魔防力デバフ〈混乱〉〈鈍足〉〈睡眠〉〈魅了〉を与える『氷帝姫の眼差し』を発動。もちろん状態異常は全てレジストされたが、魔防力デバフは付いた。そこへ氷塊を放ってダメージを稼ぐ。
「あ、白猫の三次元の動きに注意してください! それと、そろそろ封印のクールタイムが終わります! 強力なネコパンチが来ます!」
「フシャアアアアア!」
強力なネコパンチ。
キキョウの社戦法を見事に破壊し尽くした強力な攻撃だ。キキョウが警告をして僅か数秒で、腕にエフェクトを光らせた猫がネコパンチのスキルを発動する。だが、
「『城塞盾』!」
シエラの〈三ツリ〉防御スキルで防御、そのまま防御勝ちしてしまう。
「フニャア!?」
「『シールドバッシュ』!」
「ええ!?」
防御勝ちしたシエラがすかさず『シールドバッシュ』を発動。
ガツンと食らって白猫が大きくノックバックしてしまったのだ。キキョウから驚きの声が漏れる。もちろんそれだけで終わらない。
「ナイスなのですシエラ! 『ヒーロー・バスター』! 『ヒーロー・バスター』なのです!」
そこへルルが来てズドン。なんと白猫が再びダウンしてしまう。
「わ、わあ!?」
「うそ!?」
「今よ! 総攻撃!」
シエラの指揮、2回目の総攻撃だ。
さっき社を破壊しまくり、三次元の動きでキキョウを翻弄していた白猫が、今度はシエラのタンクに翻弄されていてパナイ。
しかもルルの攻撃は凄まじいダメージで、アルテの先程放った〈五ツリ〉スキルと雲泥の差があったのだ。
アルテもキキョウもびっくりである。
もちろん総攻撃と指示されて動かないメンバーは〈エデン〉にはいない。
「はっ!? ヒナ行くよ! 『スターストライクノヴァ』!」
「そうでした! 『臨時の社』! 『社バッシュ』!」
驚愕と疑問をとりあえず置いておき、アルテとキキョウも総攻撃に加わってダメージを稼いだ。
ダウンから復帰した白猫は激オコ状態でシエラをパンチしたり、襲い掛かったり、周りを素早く駆け回って不意に突撃してきたりと、中々に手強い。
しかし、それはシエラが全てを捌ききった。
「す、すごいです」
「よく見ておくといいですよキキョウさん。特にファイター型のボスにどうタンクが対抗するか、これはシエラさんが一番上手いですから」
「は、はい!」
「『カウンターバースト』!」
「フニャアアアア!?」
本当に、さっきの白猫の猛攻はなんだったのかと疑問に思うほど、白猫はシエラによって動きを押さえられていた。
三次元の動きも小盾で対処し、攻撃を盾で受け流して隙を作って、たまに攻撃までして体勢を崩している。
さっきまで好き勝手していた白猫が、抑え込まれているのだ。
社タンクでは壁にはなっても、こういうボスを抑えるというのには向いていない。
そして、さっきシェリアが言ったファイター型という言葉。
社タンクではファイター型を好きに行動させるだけだったということをキキョウも理解する。社タンクは遠距離攻撃系のボスには有効だが、ファイター型を抑え込んだりするのには不向きだったんだと改めて勉強になるキキョウだ。
「カンザシ、モミジ! 『どうか我らをお守りください』! 『狐の嫁入り儀式』!」
もちろん防御力、魔防力バフを施してくれたり、回復してくれるカグヤも大きく貢献しているのを忘れてはならない。
これによりタンクであるシエラは十全にタンクに集中することができているのである。
非常に破壊力のあるボスの攻撃に、ああも前に出て抑えきる。
キキョウはそんなシエラをキラキラした目で見つめるのだった。
「シエラさん、ボスのHPが凄まじい勢いで削れてきています」
「! ゼフィルスのところにリーナたちが到着したようね」
「フニャアアア??」
ここで状況が変化。
ツインズボスであり、猫たちが共有しているHPが目に見えて大きく減りだしたのである。
もう一方で何かあったに違いない。
孤立していたゼフィルスとゼルレカ、そこに3班のリーナたちが到着し、何かを始めたと思っていいだろう。
またゼフィルスが何かやらかしているのだ。
そして白猫も黒猫の身が危ないと気が付いたのだろう。
猛攻をやめ、ゼフィルスたちが戦っているであろう場所に振り向き、そこへ向かわんと跳躍する。
「逃がさないのです! 『斬空逃罰』なのです!」
もちろんそんなことを見逃すはずもなく、というより最初から合流させないように動いているため、まずはルルが逃げたら必中大ダメージを与えるスキル『斬空逃罰』でぶった斬った。
これはまさに次元斬。
跳躍したと思ったら背中をズバンとやられた白猫はバランスを崩して落下、なんとかキャットタワーから落ちずには済んだが、大きな隙をさらしてしまう。
「キキョウ! 抑えるわよ!」
「は、はい!」
「サーシャ!」
「はい! 『バインド・アズ・フリズドソーン』!」
逃がさない。
もちろんゼフィルスたちの下に行かせることなんてさせないシエラたち。
シエラが回り込み、サーシャが『バインド』系、氷の茨で〈拘束〉&スリップダメージを与えて行動阻害せんとする。キキョウも追いついて挟み込んだ。
「カンザシ、モミジ!」
これにはカグヤのカンザシとモミジも参戦。結界と炎で抑え込まんとするが。
「フニャアアアア!!」
「みゃああああ!? カンザシがやられる!? 『生生世世』!」
白猫も必死に抵抗。カンザシがネコパンチの直撃を受けてHPが1割を切る。
こいつはやべぇと、〈召喚獣専用のリレイズ〉系魔法『生生世世』を使っておき、もし結界使いのカンザシが消えても即復活できるように対処。
1班の半数と2班の面々で白猫を抑えに掛かったのだ。
「今よ! キキョウ!」
「はい! 『羨ましいからそれ禁止』!」
そしてこれはしっかりと効果を生むことになる。
最後の手段で大きくなろうとした白猫だが、このダンジョンの猫は大きくなるものとすでに分かっているため普通に対処。キキョウに禁止されてしまう。
「フ、フニャアア!?」
必死に抵抗する白猫だったが、シエラとキキョウに挟まれ、他のメンバーからも攻撃よりも抑え込む方に集中されてはどうしようもなく、ツインズボスのHPへのダメージは留まることもなくどんどん減っていき、ついにゼロになってしまったのである。
徘徊型を相手に逃がさないよう立ち回ることに慣れきったシエラたちにとって、白猫の合流を抑え込むことなんて、造作もなかったのだった。
あとがき失礼いたします!
次回は黒猫VSゼフィルスたち。




