#1520 2年生学園祭終了!後夜祭で最後まで盛り上がれ
学園祭3日目、最大のイベント〈迷宮防衛大戦〉。
イベントも大成功して大いに盛り上がりまくったまま、学園祭は後夜祭へと突入した。
「では僭越ながら! Sランクギルド〈エデン〉のギルドマスター、ゼフィルスが乾杯の音頭を取らせてもらう!! 全員ジョッキの準備はいいかーー!! みんな! 〈迷宮防衛大戦〉第一アリーナ、〈ヘルズノート・バベルガリッチ〉戦攻略の大成功お疲れ様ーー!! 残りの後夜祭も楽しみ尽くすぞーーー!! 初勝利にかんぱーーいだーーーー!!」
「「「「「かんぱーい!!」」」」」
「「「「ゼフィルス(さん)貢献度1位おめでとうー!!」」」」
〈ヘルズノート・バベルガリッチ〉戦大勝利を祝って乾杯だ!
ついでに〈ヘルズノート・バベルガリッチ〉戦の貢献度1位も祝ってもらえて、とても気分が良い!!
現在18時。
第一アリーナはすでに宴会場に変貌し、樽型の異世界風ドリンクバーが各所に備え付けられていた。
おかげで好きなときに好きなだけ飲める。
ここに集まっているのは出場者の3000人、だけではなく、観戦していたお客さんや、先生や黒衣の人たち、それに企業の方々も集まってる。
去年はまったく気にしていなかったが、この〈迷宮防衛大戦〉の後にある後夜祭って企業スカウトの場なんだってさ。
さっきまでの活躍を加味して、様々な企業が学生にスカウトを掛けるのが後夜祭の裏目的として存在している。そんなこと今日初めて知ったよ。
だってさ、え? 俺去年スカウト受けてないよ?
去年の〈ヘカトンケイル〉戦、俺大活躍だったじゃん、なんで誰もスカウトに来ないのって。まあ、来られてもお断りするしかないんだけどな!
ちなみに理由は、学園が俺へのスカウトを抑えていたんだとか。ナイス学園!
学園長にはお礼をしとかないといけないな。なにか手土産的なものを持っていくか? まだ学園長が持ってなさそうな上級中位級や上級上位級のなにかを手に入れたら訪問しようと決める。きっと喜んでくれるだろう。
「勝利の美ジュースが美味ーーーい! 貢献度1位に乾杯だ!! シエラも貢献度5位おめでとうー!」
「ありがとうゼフィルス。私は〈エデン〉を守っていただけでそこまで活躍はしていなかったと思ったのだけど、やっぱりあの全体攻撃を防いだのがとても効いたようね」
シエラのあの全体攻撃カバーは熱かった!
決めゼリフまで超かっこいいんだもん! そりゃ貢献度も爆上がりなもんだ!
全員の命の恩人だよ!
「そして貢献度2位で、ラナも入賞おめでとう! つうかダメージヤバすぎるだろ!」
「ふふん! もっと褒めてもいいのよ! もっと褒めなさいよ!」
「ラナはスゲぇぜ!!」
「もっとよ!」
「ラナ超スゲぇぜ!!」
「もっとよ!! というかもっとバリエーションをつけてよ!」
貢献度2位はまさかのラナ。
〈ヘルズノート・バベルガリッチ〉へのダメージでは断トツをラナが決めてきて、貢献度2位に選ばれたのだ!
『レクイエム』が強すぎてパナイ。
〈ヘルズノート・バベルガリッチ〉への超特大ダメージはもちろん、巻き込まれたスケルトンは全部1キルなのですげぇすげぇ。しかも効果範囲はデカいし、ノエルのおかげで連発できるしで、まさに断トツのスコアだったんだ。
加えて回復もしていたので、貢献度2位も順当な結果だろう!
一応俺は1位なんだが、1位にもっと褒めろを要求するラナが微笑ましくてどんどん褒めてしまうんだぜ。
ちなみに俺は満場一致で指揮貢献度トップだった! 誰に聞いても勝てたのはゼフィルスのおかげだと言うんだ。とても気持ちが良い!
ふはははははは!!
「あの、私が3位でいいのでしょうか?」
「なに言ってんだキキョウ! あの『道連れのヘルズノート』を封じた貢献度は相当デカいぞ! 胸を張れ!」
「キキョウおめでとう~」
「ゼフィルス先輩の言うとおりだぜキキョウ。すげぇじゃねぇか!」
「も、もう。でも、えへへ。なんだか嬉しいですけど、照れますね」
貢献度3位は、なんとキキョウだ! 順当、凄まじく順当である!
「でもそう言うゼルレカも6位だったじゃないですか。十分凄いですよ?」
「いやぁ、あたいも信じられないくらいなんだけど……。この結果マジなのか?」
「2人ともすごくてすごいの! アリス、78位だったの!」
「なに、3人とも頑張ったさ!」
ちなみにゼルレカはデバフ貢献で6位入賞を果たしている。
〈獣王ガルタイガ〉から離れて1ヶ月半。なぜか〈エデン〉で1ヶ月半過ごしただけで、この成果である。
ゼルレカはなぜかこの結果が信じられないようでさっきからちょっと覇気がない。
また、その後は7位にアイギス、8位にインサー先輩、9位にサテンサ先輩、10位にリン先輩と続いている。
ちなみに特別賞なる新しい賞が組まれていて、そこになぜか〈生徒会〉のハンナ、アルストリアさん、シレイアさんが選ばれていた。
〈ハンター委員会〉は?
まあいい。
いやぁ、マジ楽しかった~!
貢献度も楽しくて2度美味しいぞ〈迷宮防衛大戦〉!
よし、このまま他のギルドと交流をしてみよう!
「やぁゼフィルス君、飲んでますか~い?」
そう思っていたら早速出場者の方が声を掛けてきた!
リン先輩だ! なんか口調がさっき挨拶したときと違うけど。
「もちろんだ! というか今飲み始めたばかりだけどな!」
「リン姉様はなぜシラフに見えないのでしょう? まさか」
「お酒は入ってないですよー。ただちょっと〈ヘルズノート・バベルガリッチ〉にうっかり〈混乱〉の状態異常を掛けられてまだふらふらしてるだけです~」
おっとここでリカも参戦。リン先輩、〈混乱〉に後遺症みたいなものはありませんよ?
「あ、こんなところにいたでござる!」
「リンカ先輩、乾杯の直後に消えないでください、ギルドメンバーがギルマスが消えたと騒いでますよ」
「あーゴザル君にセーダン君ですー」
「ようセーダン、なんかちゃんと話すのは久しぶりだな!」
「すまんゼフィルス、リカさん。なんか、うちのギルマスが迷惑を掛けたようで」
「いやその、こちらこそすまない、うちの姉が。たまに気が抜けるとこうなるのだ」
「ゴザル君、さっきは〈混乱〉中にぶった斬っちゃってごめんですよ~」
「あの、だから拙者はアビドスですと何度も……」
セーダンやゴザル君がなんか苦労している様子だ。
リン先輩はキリちゃん先輩の妹でリカの姉、普段はキリッとしているイメージなのだが、意外と気を抜くとだらしなくなるらしい。
「私のなにがふまんなんですかー!」
「いえ、不満はないでゴザルよ!?」
いかん! リン先輩が幼児退行してる!
まさかの意外すぎる一面に飴ちゃんでも上げたくなってしまったぞ。
「セ、セーダン。リン姉様はまさかギルドではいつもこんな……?」
「い、いや…………たまにだ」
「たまに!? ――リン姉様、少しお話しましょうか」
「ひうっ!? リカちゃんがキリ姉さまみたいなオーラを発してます!?」
「付いてきてください」
「あああー!?」
「おお! 救世主でゴザルか!」
衝撃の新事実を知ってしまったリカ。
身内にこれ以上の恥をさらさせないため、リン先輩を連れて行ってしまった。
うーむ、リカの方が背が高いので、こうしてみると姉と妹が逆転しているように見えるな。
「ようゼフィルス。今空いてるか?」
「取り込み中じゃなさそうなんだね。今なら話ができそうなんだね。でも取り込み中なら出直すんだね」
「ガロウザス先輩にロデン先輩!」
次に話しかけてきたのは〈世界の熊〉と〈カオスアビス〉の面々だった。
キールやハイウドたちもいるな。そちらは挨拶を交わした後セーダンの方に向かって行ったので見送る。
「いやはや参った。今回俺たちは黒衣を倒した後、あまり活躍できなかった。それに対し〈エデン〉は見事だ」
「黒衣は全滅させたんだね、だが〈ヘルズノート・バベルガリッチ〉には手も足も出なかったんだね。せいぜいスケルトン共を奈落の口へお届けしたくらいなんだね」
「ありがとうガロウザス先輩。だがロデン先輩たちには正直助かったぞ。スケルトン1体1体はしょぼくても、あれだけ集まると脅威だからな。それに黒衣の対処も完全にそっちに任せきりになってしまったしな」
〈世界の熊〉はほぼ接近型の構成なので、〈ヘルズノート・バベルガリッチ〉本体には中々近づけなかった様子だ。そのため〈カオスアビス〉と協力して黒衣を撃破、さらに第三形態では門から出てくる眷属のスケルトンの撃破もメインでこなしていたらしい。
俺たちは〈ヘルズノート・バベルガリッチ〉に集中したかったので、横やりを入れられる前に対処してくれたことは正直ありがたかった。
おかげで俺視点では「黒衣さんたち、今回何かしたっけ?」という感じである。
実際には〈エデン〉を避けに避けて他のギルドにはちょっかいを出していたらしい。
〈エデン〉、避けられていたのか……。なぜだろう?
ガロウザス先輩とロデン先輩と別れると、続いて〈百鬼夜行〉のハクとホシ先輩がやって来た。
「お疲れさんやわゼフィルスはん」
「貢献度1位もおめでとうなのよ!」
「お疲れさまハク、それにホシ先輩も貢献度4位おめでとう!」
「いや~ゼフィルスさんのおかげなのよ? 完璧だったのよ! ゼフィルスさんに言われたとおりずっと『リッチ特性』を禁止にしておいてよかったのよ!」
「こっちこそホシ先輩の禁止には助かったよ。あの黒い手に禁止を再使用されていたら、今度はリッチが飛んでいただろうからな」
「あそこで飛ばれてたらとんでもなかったのよ。それにあのダブル禁止は熱かったのよ。私、キキョウちゃんと話がしたいのよ?」
「……キキョウはあげないぞ?」
「ホシ姉、うちというものがありながら他の女に走るなんて……!」
「ちょ、違うのよハクちゃん。確かにハクちゃんは大好きなのよ? でも私は純粋にキキョウちゃんの職業の使い方が気になるのよ」
「もちろん冗談や」
「ていっ」
「……あてっ!」
「先輩をからかっちゃいけないのよ?」
おっと、ハクをはたく人を初めて見たな。
ホシ先輩、あまり話したことは無かったが、どうやら割とノリが良い人のようだ。
ちなみにホシ先輩は男に興味がないという噂もあるが、真偽は定かではない。
しかしなるほど、ホシ先輩はキキョウと同じ【嫉妬】の【大罪】職持ちだ。
どうやら【嫉妬】同士で積もる話もあるもようだ。
同じ【大罪】職が2人いるとか変な気分なんだぜ。
「それなら、今度キキョウを交えて交流会でもするか? 【嫉妬】の使い方についてお互い得るものも多そうだ」
「それは良い考えなのよ! 是非こちらからもお願いしたいのよ!」
「食いつきよすぎや、やっぱりホシ姉は……あてっ!?」
ハクが茶々を入れてくるが、その度に笑顔ではたくホシ先輩と近々交流会を開こうと約束して別れる。
「よーゼフィルス君、飲んでるかーい?」
続いて来たのは〈獣王ガルタイガ〉ギルドマスター、〈覇姉のサテンサ〉先輩だ。
「サテンサ先輩! こっちはぼちぼちさ。そっちは?」
「どんちゃん騒ぎだよ。あの怪物には〈獣王ガルタイガ〉も7度も煮え湯を飲まされていたからね。今回の初勝利でむしろ応援に来た父兄の方が盛り上がっているくらいさ」
「あ~、なるほど。目に映るようだわ」
〈ヘルズノート・バベルガリッチ〉戦、見事に勝利した俺たちだが、実は学園史上初の大勝利だった。
何しろ適正レベル85である。5000人集まっても思うようにHPを削ることが出来ず、入念に準備をして挑んだ戦闘でも結局第三形態までしかいけなかったというのだから、誰かにとってはまさに悲願達成と言ってもいいのだろう。
〈獣王ガルタイガ〉は20年以上も存続してきたギルド。親世代がそういう感情を抱いていても不思議じゃないな。というかよく見れば他のところでも騒いでいる人を結構見かけるレベルだ。
ちなみに今回ガルゼ先輩らは来ていないらしい。なんでも修行中とのことだ。
「だろ? おかげでちょっと抜け出してくるだけでも大変だったさ。だが、今のうちにゼフィルス君にはお礼を言っておきたくてね」
そう、改まって言ったサテンサ先輩は真正面から俺に向く。
もちろん俺にはピンと来るものがあった。
「ゼルレカのことか? 別に礼を言われるほどのことはしてないぞ? 普通に強くなってもらって〈エデン〉の役に立ってもらっているだけだからな」
「ふっ、それがどれだけのことか……。やはりゼフィルス君に預けたのは大正解だったね」
そういって顔を上げ、ニカッと笑うサテンサ先輩。
「とにかくありがとよゼフィルス君、あんたいい男だよ! これからもゼルレカのこと、頼んだよ」
「おう。任せとけ。むしろこのまま〈エデン〉から帰らないかもしれないな!」
「カッカッ! それならそれでもいいさ。ガルゼ先輩との約束はゼルレカを次期ギルドマスターにすることじゃないからね! 重要なのはギルドより約束だ。ゼフィルス君のギルドならゼルレカを任せられるさ」
そう言ってサテンサ先輩がジョッキを構えたので俺も構える。
そのままガッとジョッキをぶつけ合い、乾杯。
そのまま豪快に中身を飲み干した。
やっべぇ、ゼルレカを〈エデン〉に延々就職させてもOKが出ちゃったぞ!
もう返さないからな! わはははははは!
さあ学園祭ももうすぐ終了だ。
その前にまだまだ騒ぎまくりたいところ!
サテンサ先輩と別れた後、俺は騒ぎが大きい方にちょっと覗きにいくことにした。
え? 問題発生? 俺に任せておけよ! 見事解決してやるぜ!
そんなノリで俺は騒ぎに飛び込んでいったのだった。
第三十三章 ―完―




