#1495 一段落した放課後、4人加入を祝って乾杯だー!
「……最初はゼルレカを任されただけだったのに、ずいぶんと大所帯になったわね」
シヅキ、エフィ、マシロが加入した翌日。本日ゼルレカと3人を引き合わせたところでシエラがそう呟いた。
「それは完全に同意だな。……これがなるようになった、という状態か。しみじみ」
ゼルレカ合流。
これで〈エデン〉は49人に到達した。〈アークアルカディア〉のニーコを合わせれば50人だ。
本当ならば満員。〈エデン〉のメンバーがついに揃った記念すべき日となっていたはずである。
「もしAランク落ちしたときに備えて48人までしか入れない、と言っていた気がするけど」
「はっはっは。何事も予定通り行かないこともあるさ!」
Aランク落ち。もしそんなことがあれば40人になるまで〈エデン〉のメンバーを減らさなくてはならない。
〈アークアルカディア〉のメンバーが12人なので、下部組織に入れられるのは僅か8人。1人あぶれる計算!
その時はゼルレカには悪いが〈獣王ガルタイガ〉に帰ってもらうことになるだろう。
せっかくゼルレカが〈エデン〉に移籍してくれたのに、返・却!
やっぱりダメだ! ゼルレカは返さないぞ!
そんな未来が来ないよう、ランク戦で負けることが無いようにもっともっと鍛え上げなければ。(メラメラ)
「うお!? な、なんだ? なんか寒気が……」
俺が決意を燃やしていると視線の先のゼルレカがぶるりと震えて肩を抱く。
いかんいかん。念を送りすぎてしまったのかもしれない。
「ゼルレカ、大丈夫ですか?」
「大丈夫ゼルレカ? あったかいコーンスープ飲む?」
「お、おお。ありがとなキキョウ、アリス」
だが一瞬でゼルレカは親友2人に心配されて気を取り戻していた。
尊い光景。やっぱりゼルレカはもう返せないな。返してしまったらアリスとキキョウが悲しんでしまう。
なお、留学生のクイナダが別枠なのでAランク落ちしても人数的に問題ないのだが、テンションが上がりすぎた俺はこの時うっかり忘れていた。
「ゼフィルス君~準備出来たよ~」
と、ここでハンナのオーケーが出た。
来たな。俺はジョッキを持ってギルドハウスの壇上へと登る。
見渡すと、ギルドハウスには、我が〈エデン〉〈アークアルカディア〉のメンバーが全員揃っていた。そして、片手にはジョッキを持っている。
ここまで来れば俺が何を計画していたか分かるだろう。
俺はキリッと勇者のキメ顔を作った。
「みんな! 放課後だというのに集まってくれてありがとう! 今日はメッセージで伝えていたとおり、大事なことを発表するぞ! なんと〈エデン〉に新たな仲間が加わったんだー! 紹介しよう、4人は壇上へ登ってきてくれ!」
俺の紹介に照れながらもシヅキ、エフィ、マシロ、ゼルレカが壇上へ登り、俺の隣へとやってくる。
「じゃあシヅキからだ!」
「は、はい! シヅキです! 〈秩序風紀委員会〉から来ました! ずっと〈エデン〉に加入したくて加入したくて、大面接も受けたことがあります! この度スカウトしてもらって、とても、とても嬉しかったです! 現在の職業は【アークデーモンLV70】です! 足手まといにならないよう、精一杯頑張ります! よろしくお願いいたします!」
「拍手ー!!」
パチパチパチパチ。
シヅキの自己紹介にギルドハウス中から拍手のシャワーが浴びせられる。
「わー、本当に女兵ちゃんだよ」
「こ、これで第一期生メンバー、揃っちゃったですね!」
「あの時の仲間がみんな揃うとか、ちょっと感慨深いね~」
ノエルとラクリッテ、トモヨなんかは面識があったようで手まで振っている。
シヅキはこの前よりもだいぶ緊張していて言葉も堅いが、知り合いも結構いるみたいだしその内うち解けるだろうな。
「それじゃあ、次の紹介だ。エフィ」
「紹介に預かった。エフィシスという。〈救護委員会〉から来た。得意なのは剣と銃。今の武器は剣と……銃に見える杖。現在の職業は【アークエンジェルLV70】。上級職の【ウリエル】に就く予定。アタッカー希望。強くなるために来た。よろしく」
「拍手~!」
エフィはクールだ。
だが背筋はピンとして、背中に一本芯の通ったような所作は実に堂々としていて力強い。この学園最強の学生たちが集まる〈エデン〉のギルドハウスで気持ちで負けていないというのはとてもすごいことだと思う。良いアタッカーになるだろう。
「今度はエフィじゃん!? 〈救護委員会〉?」
「ゼフィルス君、またなんてとこから引き抜いてきてるの~!?」
「〈3組〉の人だよね。クラス対抗戦の時に組んだの覚えてるよ」
サチ、エミ、ユウカはクラス対抗戦の時〈3組〉と組んでたからな。エフィとも面識があった様子だ。
「エフィ~」
「あ、カイリ。やほー」
最前列で親しそうに手を振っていたのは、カイリだった。エフィもどこか柔らかい表情でそれに手を振り返している。
そういえばカイリはしばらく〈救護委員会〉に出張していたことがあったし、エフィとは知り合いなのか。意外に世間は狭い。エフィも知り合いが多いようでなによりだ。
「それじゃあ、次はマシロだな。できそう?」
「はい! やってみます!」
一見純粋無垢っぽいマシロだが、割と物怖じしない性格だ。俺の問いに目を輝かせてやる気を見せてくる。なんだか、昔のハンナを思い出すな~。
「マシロです! 〈ダンジョン商委員会〉から来ました1年生です! 今の職業は【アークエンジェルLV70】で、【ラファエル】に〈上級転職〉する予定です! 〈エデン〉に入れたのとても嬉しいです! みなさん、仲良くしてください!」
「拍手ー!」
ペコリと最後お辞儀をするマシロに拍手のシャワーが浴びせられた。
マシロの自己紹介はなかなかだったな。全く物怖じしてなかったよ。ヒーラーにはかなり大切な資質だ。最初マリアが連れてきたときは大丈夫かなとちょっと思ったりしたのだが、この子は大物になる予感!
「うわ、本当にマシロンだ~」
「知っているのかミサト? 1年生まで知っているとは相変わらず顔が広いな」
「ちょっと知っているだけだよ~。でもちょっと気に掛けてあげてねメルト様」
ミサトは本当に顔が広い。1年生の〈支援課〉、しかも中位職だったマシロまで知っているのか。
1年生だし、正直マシロの知り合いはマリアだけかと思っていたのだが、その後トモヨたちと仲良くしている様子を目撃することになったので、こちらも心配はいらなさそうだ。
「そして最後に、ゼルレカだな」
「おう。じゃなくて、はい。紹介に預かったゼルレカ、です。〈獣王ガルタイガ〉から、来てます。今は【ハイニャイダーLV71】で、将来は【大罪】職の1つ【怠惰】に就きたいと思ってます。その、お世話になるぜ」
「はい拍手~」
少し歯切れが悪いのは、自信の欠如の表れか。まだ完全には立ち直ってない模様だ。
だがキキョウやアリスといるときは普段通りの素が出ているので、焦らなくても自信さえ身につければ立ち直れるだろう。立ち直れなかったときは自信が付くまで強化してあげればいいんだしな!
ゼルレカについてはメッセージで軽くメンバーに周知してあるので、みんなしっかり歓迎の拍手で迎えてくれる。
それにゼルレカは若干照れくさそうだ。
「ゼルレカ~これでビシバシ鍛えられるね!」
「よかったですの。私たちが自信を打ち砕いてしまったようで心配していたですの」
「後はゼフィルス先輩に掛かれば自信なんてすぐ元に戻りますよね~、むしろ上回っちゃうかもですよ~」
カグヤ、サーシャ、アルテの声が聞こえてくる。
そういえば1年生組はゼルレカと同じ〈1年1組〉所属のクラスメイトなんだったか。
うーん、心を折っちゃったメンバーとパーティなどを組むには、まず自信を付けてからにした方が良さそうだ。
だが、ゼルレカはやる気みたいだ。そんな〈エデン〉の1年生組を見て手を握り「あたいも頑張る。負けないからな!」と気合いを入れていた。
「よし、これで紹介はひとまず完了だ! うちのメンバーには全員に名札を付けてもらっているから、名前が分からなかったら名札を見てくれ」
さすがに〈エデン〉〈アークアルカディア〉メンバーは多すぎて全員の名前を今言われたところで覚えきれないだろう。ということでメンバー全員には名札をつけた。これで名前をど忘れしても安心だ。もちろん〈幸猫様〉や〈仔猫様〉にも名札を付けてもらっているぞ! 後で〈幸猫様〉方も紹介しなければなるまい。
一段落したので、打ち上げに入る。
「それではみんなジョッキを持ったか? 持ってないメンバーは持ってくれ! これより歓迎会を執り行なう! よーし、ではいくぞ、〈エデン〉に新しく加わった4人を祝って――かんぱーい!!」
「「「「「かんぱーい!」」」」」
歓迎会で、乾杯だ!
やっぱ新しいメンバーが入ったら乾杯は必須だよな!
4人にはこれからギルドメンバーと交流してもらい、親睦を深めてもらう!
それが終わったら、明日からがっつりレベル上げだ!




