#1479 ゼフィルスVSラウ。〈1組〉拠点での戦闘終了
「はーっはっはっはっは! ついに決戦だ! ラーウ!!」
「くっ、ゼフィルスさんが来てしまったか!?」
「や、やばー!?」
「どうするラウっち!?」
「撤退するか?」
戦場に楽しそうなゼフィルスの笑い声が聞こえて振り返ると、ラウたちの目には後方部隊がやられ、ゼフィルスたちが駆けてくる光景が目に入ってきた。
これにはサチ、エミ、ユウカも緊張の面持ちでラウに聞く。
しかし、〈炎帝鳳凰〉に加え、〈ナダレグランキ〉も撃破し、〈カマクラ〉もHPは少ない状態。今まで〈1組〉の拠点をここまで追い詰めた者が居ただろうか? そんな状況だった。
ここで撤退すれば、20分後には再召喚され、またHPマックス状態の〈炎帝鳳凰〉と〈ナダレグランキ〉が生まれてしまう。
もう、本当にあと一歩というところまできていたのだが、周りを見ればシエラやカタリナ、ロゼッタ、ミサト、フィナ、トモヨ、シャロンといった防御力に優れたメンバーが完璧に拠点を守っているし、フラーミナの〈古代樹〉も全員の一斉攻撃によりなんとか1度は撃破したのだが、【色欲】のミサトのモンスター復活魔法『レストア』で生き返って再び拠点を守ってるしで、端的に言って全然抜ける気がしない。
そして同盟軍もかなりの被害が出ていた。
〈4組〉は丸々退場しているし、他のクラスも半数以下にまで人が減っている。
〈2組〉でも同じだ。〈1組〉に次ぐ強者であったはずの〈2組〉ももはやボロボロ状態と言っていい。特に〈1組〉メンバーと相対することが多かったため、他のクラスよりも被害は深刻だった。
だがここで撤退すれば城壁は修復され、防衛モンスターまで復活し、最初攻め込んだときと変わらない戦力に戻ってしまうだろう。
(ゼフィルスさんは回復できる戦力を前に出すことで被害を受けても継続戦闘能力を落とさないよう調整していたのか)
ラウは思う。
つまり〈1組〉は時間があれば回復できる、できてしまうものしか被害が出ていないのだ。防衛モンスターとか、城塞とか。
それは、被害が出ていないのとほぼ同義である。
そして被害が出ていたのは同盟軍だけだ。スクリーンに映る〈1組〉の退場者は僅か1名のみ。残っているのは29人だ。撤退してもジリ貧なのは目に見えていた。
ラウは決断する。
「撤退はしない! 撤退してももはや城壁すら壊せないだろう。ここでやるほかない! 俺がゼフィルスさんの相手をする!」
どちらも負け濃厚なら、せめて勝てる可能性がある方を選択する。
ラウが決めたのは、ここで最後まで戦う道だった。
その指示を聞いて、同盟軍に再び火が点る。
「よーし、覚悟決めちゃうよー!」
「うん! 頑張っちゃうんだから!」
「覚悟を決めよう。やってみよう!」
あの〈ナダレグランキ〉を倒したサチたちのやる気を聞き、同盟軍の士気は瞬く間に盛り上がる。
「良い士気だな! それでこそ、だぜ!」
「ゼフィルスさん、勝負!」
「受けて立つぜ!」
ここでゼフィルスとラウが衝突した。
「うおおおおおおお――『獣王バスター』!」
「はは! 『ディス・キャンセル・ブレイカー』!」
飛び込んだラウの拳とゼフィルスの剣が激突し、強烈な衝撃波となって戦場を駆け巡った。
「この鍛えた拳、ゼフィルスさんに届かせてみせる!」
「そいつは光栄だが、俺も鍛えてる! そう簡単にいくと思うなよ! 『カリスマ』ーー!」
〈獣王ガルタイガ〉で散々修業し培ってきたラウの攻撃は鋭く、強力だった。
だが、ゼフィルスもこの世界に来て、最初は全然不慣れだった剣技も盾技も、今では相当な腕に上がっている。
貪欲にこの世界を楽しみ、楽しみ尽くすために職業のみに頼らず、全てのものに興味を示して吸収してきた知識がゼフィルスの強さだ。
そして、決着は思いのほか早く訪れることになる。
原因はゼフィルスの『カリスマLV10』。切り札の1つだ。
これはLV10の時、大挑発、攻撃力バフ、魔法力バフ、素早さバフを4回まで重複してかけられる。
どんどんギアが上がっていくゼフィルスにラウは焦ることになった。
「『超進化』!」
「『カリスマ』!! 『勇気』!」
ここで『超進化』を発動し、ラウの姿が人狼、ワーウルフへと変化する。
それと同時にゼフィルスも4回目の『カリスマ』を決め、さらに『勇気』まで使用してしまう。
『勇気』はステータス上昇効果。つまりSTRの上昇だ。攻撃力上昇の『カリスマ』とは棲み分けが可能。
すでにとんでもないバフを決めている状態になっているのだ。
「これで決める! ―――『エンペラーバスター』!」
『超進化』からの強烈な〈五ツリ〉の一撃。その速度はもはや神速。ブリッツ系と言われても納得するような速度の一撃が、とんでもない威力でゼフィルスをぶっとばさんとする。
だが、ゼフィルスを甘く見てはいけない。
「『極翼盾』!」
対してゼフィルスが使ったのは左手装備〈極光盾・ジャナフ〉の装備スキル。
ほとんど『ディフェンス』と変わらない、盾で受ける防御のスキルだ。
肉を切らせて骨を断つ。
『極翼盾』は防御から素早く攻撃スキルへ転換できる特性を持つ。今までも防御して攻撃する戦法は、ゼフィルスにとって初心にして一番信頼している戦術だ。
「らああああああああ! なに!?」
「お返しだああ! 『聖剣』!」
「がっ!?」
打ち抜けず止められたラウに瞬間、反撃の『聖剣』が叩き込まれる。
これを受けると、一瞬動けない。
「『フィニッシュ・セイバー』!」
フィニッシュ!
『フィニッシュ・セイバー』はゼフィルスの強力なトドメに多用するスキル。
だがラウは武器〈王の拳〉の武器スキル『チャンピオン・キング』で残りHP10で食いしばり、さらに火事場の馬鹿力と言わんばかりの強力なバフが発動する。
ここで剣を頭上に高々と掲げるゼフィルス。
『聖剣』で動きを一瞬止められたラウは再起動。
ゼフィルスの動きを感じ取ったラウ。ゼフィルスならばここで安全に無敵やら転移やらしてから『シャインライトニング』でも放てば楽に勝てる場面。
だが、ゼフィルスが選択したのは【勇者】のユニークスキルだ。
正々堂々という王道。
ラウはこれを見て拳を握りしめ、覚悟を決めて挑む選択を取った。
その表情は、2人とも笑顔だった。
「これで終いだラウ!」
「うおおおお『獣王烈震咆哮牙』!」
「『勇者の剣』!」
ラウ最強の一撃とゼフィルス最強の一撃が交差し、お互いの体に直撃した。
お互いが大ダメージを受け、先に膝を付いたのはラウだった。
「がああああああ、あ、あ…………。くっ届かなかった、か」
「いや、良い一撃だったぜラウ! ナイスだ!」
「はっ、ははは。敵わんな」
ラウのHPはゼロだった。そう言い残して退場するラウを、ゼフィルスは笑顔で見送った。
ゼフィルスのHPはまだ4割以上残っている。【獣王】は相当攻撃力重視な職業だが、ゼフィルスのオールマイティなステータスに加え、上級上位級の装備、そして『勇気』で特大アップしたVITを貫くには足りなかったのだ。
「『オーバーヒール』!」
ゼフィルスはHPをここで全回復。
そしてさらなる相手を求め、ダッシュしていったのだった。
◇ ◇ ◇
戦場は至る所で激化。ガンガン退場者が出まくっていた。
「きゃああああああ!?」
「マースィ!?」
「とう! お覚悟なのです! 『ヒーロー・バスター』!」
「最初から全力です―――『戦車突撃』! 『戦槍乱舞』!」
「お願いしますイグニス様――『イグニス・バースト』!」
「ま、負けないよーー!! 『フル乙女三角盾』!」
こっちではマースィ、ベニテ、エフィVSルル、エステル、シェリア、フィナ、ミュー戦が繰り広げられていた。
マースィがやられHPが危険域に達してしまうも、ルルとエステルとシェリアの追撃をなんとかベニテが防いでギリギリの所で守り切る。
「反撃! 『鬼一閃』!」
「受けて立ちます――『グローリーバニッシュ』!」
「隙あらば、動きを止める――『ハンターズ・ショットガン』
こちらではエフィが三次元の動きで迫るフィナと、遠距離から狙撃しまくるミューを相手に大立ち回りをしていた。ミューの銃撃を凄まじい運動神経のバク転で回避するエフィ。だが、その様子はジリ貧。
もう完全に〈3組〉大ピンチといった状況。
そしてついにラウがゼフィルスにやられる光景が飛び込んで来た。
「あ、ラウが負けた!?」
同盟軍の明らかな動揺。
しかし、それを反撃の糸口にする者がいた。
「今! マースィ!」
「これが最後よ! 『青嵐・乙女ストリーム』!」
ラウがやられたのに動きが鈍ったのは同盟軍だけではない。
〈1組〉も油断が一瞬だけ漏れた。そこを突くのはエフィである。素早くマースィに指示を出して、唯一油断が出たミューを重点的に狙って活路を開いたのである。
「! 『ミカエル加護大結界』!」
マースィの攻撃は乱射の範囲攻撃。フィナがしっかりドーム状結界を張り、自分ごとミューを守ったのだが、いつの間に接近したのかなんと結界の中にエフィが入り込んでいた。
「な!」
「隙有り! 『必殺・鬼狩り激』!」
飛び込みざまにダンダンと2発発砲、1発はフィナ、1発はミューへ。結界が張られたことで防御が成功したと思っていたミューは直撃、フィナはギリギリで盾で直撃を防いだ。だが、防御した時間が命取り。
「閃!」
「みゃああああああ!?」
ズバンと強力な一撃がミューを攻撃、なんとそのHPを一撃で刈り取り、退場させてしまったのである。
「ミューさん!?」
「ベニテ、撤退! 第二作戦地に移動する!」
「待って、マースィさんが!」
「ここは私が食い止めます。行ってくださいエフィ! はあああああ!!」
「見事な覚悟です! 『ロングスラスト』!」
「逃がさないのです、『斬空逃罰』なのです!」
「『殿の聖乙女』!」
ミュー退場、その隙を突いてエフィがベニテを掴んで全力で撤退したのである。
もちろんこれを逃がさないとばかりにエステルとルルが追いかけてくるが、マースィが殿となって攻撃を一身に集め、退場と引き換えにエフィとベニテは撤退に成功する。
◇ ◇ ◇
「リヴァアアアアア!」
「ああんもう、私1人じゃ無理ー!」
「じゃあ私も手伝っちゃおうかな!」
「あ、ありがと、ってエリサちゃんじゃん!? 『氷滑走』!」
「グンナーイ『ナイトメア・大睡吸』!」
「くにゅ~~ん…………」
リヴァイアサンをずっと1人で抑えていたリャアナだったが、味方の振りして(?)やってきたエリサによって眠らされてしまい、起きたときには〈敗者のお部屋〉にいたという。
◇ ◇ ◇
そしてサチ、エミ、ユウカはというと。
「ひーん、エネルギー切れー!」
「みんな本気出しすぎだよー!」
「む~。一矢報いれなかったー」
「たはは~。サチちゃんたち、これも勝負だからごめんね! 『サンライト』!」
「先程は防がれたが、これで締めだ――『アポカリプス』!」
「悪く思わないでくださいね。『ドラゴンクロー・セイバーランス』!」
「では、また後で会おう『二刀斬・陽光桜嵐』!」
『神装武装』スキルは回数制限がある。
最後は回数が切れてしまい、サチ、エミ、ユウカの3人も〈1組〉メンバーズたちの手によって退場させられてしまうのだった。
◇ ◇ ◇
「ラウがやられた!? ――みんな、第二作戦地に移動するわよ! 撤退!」
「ナツキ! 防御しろ!」
「なに!? なあ!?」
「撤退なんてさせないわ!」
「はい。なにか作戦があるようですわね。実行できないよう、出来るだけ削り取りますわよ!」
ナツキ率いる少数の〈2組〉生き残りも、ラナの宝剣とリーナの砲撃に狙われ、退場してしまったのだった。
◇ ◇ ◇
「こ、こんにゃーー!!」
「それってどういう意味なん?「こんにゃろう?」それとも「来るなー」? アケミはんは面白いどすなぁ。『四尾解放・幻猛炎顎』!」
「『プロミネンス、あ―――――」
「……あれ? いなくなってしまいよったなぁ。退場の魔法陣は見えんかったんやけど、炎で隠れてまったかぁ? うーん?」
「…………危なかったわ。咄嗟に池に逃げ込んで正解だったわね」
ハクVSアケミでは、意外に泳ぎの上手いアケミが池に飛び込んでハクの攻撃を回避して生き延びていたりした。さすがは〈生還のアケミ〉。
池は沈まなければ退場はしない。服装備で沈むものを身に着けていなかったアケミは浮くことが出来、見事に池を使いこなしていた。
なお、アケミはこのまま〈2組〉の順位が決まるまで生き残っていたという。
あとがき失礼いたします。
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今回は初のギルドバトル回!
〈千剣フラカル〉のカノン先輩とキリちゃん先輩!
〈キングアブソリュート〉のユーリ王太子やソトナ先輩が、絵になって大登場します!
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