#1475 〈留学生4組〉空中の対戦〈空戦のアマリリス〉
一方空中では、フィナとトモヨVSハイウドとナリリスの対決が白熱していた。
「もー、ハイウドなんてまた壁にぶつかってビターンすればいいんだよ!」
「あ、あれはもうしない! あの時は慣れていなかったのだ!」
トモヨがいじる。
例のSランク戦で、ハイウドが〈集え・テイマーサモナー〉と戦ったときの話だ。
ハイウドは現在、〈鳥になりたかったロボット〉、通称〈鳥ロボ〉からドロップした飛行パーツを背中に取り付けて飛んでいる。
だが、そのお披露目では見事に進入不可マスに猛スピードで入ってしまい、マスの境にある壁に激突。お披露目は笑いを誘う黒歴史に変貌した。
普段冷静さが売りのハイウドでも若干取り乱すレベルのやっちまっただ。
今はすでに空を飛ぶうえでの注意点をしっかりと学んでいるし、飛行も安定している。
おかげでハイウドは、空を飛ぶサイボーグマンとして最近どんどん頼られることが増えていた。フィナのような避けタンクも可能ということで重宝されているのだ。
「このぉ、当たりなさい! くっ、アマリー、来て!」
「ナリリス! もっと左! 左だって!」
「足場が必要というのは難儀なようですね」
こちらはフィナとナリリス。あと足場役空飛ぶ箒係のアマリーだ。
ちなみにナリリスとアマリーはまるで姉妹のように仲が良く、2人のことを合わせて〈空戦のアマリリス〉と呼ばれているほどである。なお2人とも〈第Ⅴ分校〉出身だ。
アマリーが操る箒に無事着地したナリリスがランスをフィナに向けて構える。
ナリリスの職業は【天の先槍】。
突撃系のスキルを多く保有する職業で、槍が本体とも言われ、スキル発動中は槍に乗るようにして空中でも自在に突撃が可能。途中で軌道を劇的に変えてほぼ直角に突撃する『天の矛盾』は対人戦においてかなり強力なスキルだ。
ただし、スキルが終わると別のスキルで突撃し続けないと滞空し続けることができず、いつかはクールタイムの影響で落下してしまう。
それを支えているのがアマリーの役目だ。
「ナリリス、どうするの?」
「私たちの役目は時間稼ぎ、というか天使を足止めすることだから今の状態で十分よ!」
「もう、ラウは〈留学生4組〉のリーダーをなんだと思っているのよ。時間稼ぎに使う様な戦力じゃないでしょ」
「ラウ曰く、〈1組〉は全員が各クラスのリーダー級、もしくはそれ以上の実力者だから、むしろ絶対に止めておきたいところはリーダーがやらないとダメなんだってさ!」
「この状況でそのような会話ができるなんて、余裕ですね――『ソニックエルソード』!」
「〈1組〉が強くて辛い、わ!!」
そんな会話をしつつもアマリーは〈魔法使いの箒杖〉を操りまくり、フィナの攻勢を高速回避。
このコントがただのクールタイム回復のための時間稼ぎであると見抜いているフィナが攻勢を仕掛けたのである。
「おしゃべりはココまでです。沈んでください。『グローリーバニッシュ』!」
「『天夜一槍撃』!」
「きゃあああ!」
フィナの〈五ツリ〉の強力な一撃が〈アマリリス〉を襲ったが、これに対応したのはナリリス。箒の上という不安定な足場にもかかわらず、力強い五段階目ツリーのスキルで対応したのだ。
そう、ナリリスはリーダー。すでに五段階目ツリーも開放済みだ。
というより、最低でも五段階目ツリーを開放していないとフィナの相手なんか出来るわけがないのでこの人選だったりする。
ナリリスは【騎士】系の上級職、高の上【天の先槍】だ。そのスキルは見事にフィナの攻撃を相殺してみせる。
両者の〈五ツリ〉がぶつかり、凄まじい衝撃波を放ってアマリーが悲鳴を上げる。
「アマリー離れてて! クールタイムが解けた! 『スラストドライブ』!」
「! それかなり厄介な技ですよね。『天風』!」
「はああああああ!」
アマリーの箒から跳んだナリリスがスキルを発動。それはドライブ系。
槍が推進力を持ち、空中で加速してフィナへと向かう。
もちろんフィナは回避。ここでスピードを上げるバフ『天風』を自分に掛ける。
というのも、今通り過ぎたはずのナリリスがあり得ない軌道で引き返してきたからだ。これに対抗するには自己バフが有効だ。
「『Vスラストドライブ』!」
直角というか、もうV字ターンである。
ナリリスは槍を掴んでいるというより、槍の上で伏射姿勢を取っているような感じに寝そべって、完全に槍の突撃に身を任せている姿勢だ。気分はおそらくパイロット。槍使いというよりもミサイルのパイロットと言った方がしっくり来るかもしれない。さすがは【暗黒騎士】の上級職。あまりにも狂ったスキルだ。
「『六線特急・スーパードライブ』!」
「ふっ!」
「ここで――『神速線転・Vドライブ』!」
どんどん速度と軌道がめちゃくちゃになっていくナリリスの突撃。
ここで神速級の速度でV字ターンを決めつつ追い詰め突撃するとんでもないスキルを発動。
回避は不可。何しろどこに回避しようがV字ターンで追撃し、必ず追いつくからである。
だが、フィナには届かない。
「ここです! ――『天盾飛翔突撃』!」
フィナが使用したのは『シールドバッシュ』の上位ツリー。
真正面からの激突だった。
フィナはこの戦いで相手の弱点を観察していた。ゼフィルスがいつもしている、攻略法を発見せよ、ってやつだ。あれはモンスターに対してだが、フィナはこれを戦法が確立されていたり、動きが限定されている人にも適用できると判断し、攻略法を考えていたのだ。
相手の強みはそのめちゃくちゃな軌道と速度。
弱点はスキルを使って突撃していないと転落すること。
故に、突撃を殺してしまえば良いのだ。という結論に至った。
そしてフィナが選択したのが相殺。
『天盾飛翔突撃』により、フィナも猛烈な速度を出して突撃した。
ガゴンッと響き盾と矛が衝突。
結果、相殺に成功。
お互い弾かれてしまう。だが、フィナは『挫けぬ心』の効果でノックバックしない。
故にすぐに空中で一瞬静止しているナリリスに追撃することができたのだった。
「やっば!?」
「お覚悟! 『エルライトブレイカー』!」
「ナリリス!?」
強力な一撃が繰り出され、ナリリスがHPを削りながら吹っ飛ばされる。
「く~~っ。『スラストドライブ』!」
もちろん追撃が来るので一旦逃げるナリリス。上空へとスキルを使い、まずは距離を取らんとした。
しかし、もちろんフィナは逃がさない。
「『天空瞬動』!」
フィナは避けタンクもしているため、超速のスキルをいくつか持っている。
『天空瞬動』で一気に超速で速度を上げ、ついにはナリリスに追いついてしまう。
「ひえ!?」
「落ちてください『天落』!」
ズドンと一撃。これによって叩き落とされなかった者はいない。
しかし、ナリリスは特殊な飛行形態をしていたため、下に居たアマリーがなんとかナリリスをキャッチした。
「ふおおおっっとーーーー!? セーフ! ギリセーフ! 大丈夫ナリリス!?」
「う、上!」
「え?」
だが、安堵も一瞬。上空に居たフィナが何もしないはずもなく。
「『天罰』です!」
『天落』から『天罰』のコンボを発動していた。
『天罰』は超速の落下エネルギーを利用した一撃を叩き付けるスキル。
つまりは落として、斬る、そんなコンボだ。
だがその衝撃は強力。ナリリスのキャッチで意識を持っていかれ、フィナの行動に気が付かなかったのは致命的だった。
「「きゃああああああ!?」」
これがズドンと綺麗に決まって2人とも落下。
大ダメージでナリリスがついに退場してしまう。アマリーはギリ助かったが、落ちた場所が悪く、リーナによってトドメを刺されてしまうのだった。
◇ ◇ ◇
一方ハイウドは。
「『加速装置』!」
ハイウドはさらに自身の限界にチャレンジするかのような速度でトモヨの周りを動きまくって攪乱。そして。
「『マキシマムバンカー』!」
ついに攻撃。だが、トモヨも『攻撃予測』でそれは見破っていた。
「『失敗予告』!」
「あ、な!?」
それは強制キャンセル。
攻撃スキルと攻撃魔法限定だが、それを強制的に失敗させてしまう防御スキルだ。
これにより、ハイウドは見事にへなちょこパンチを繰り出し、トモヨに簡単に防御勝ちされてしまう。
「『エルシール』! さ、トドメと行こう! 『エルシール』! 『エルシール』!」
「な、なんだ!? 抜け出せん!」
そしてシールのように盾にぺったりとくっつけられてしまったハイウドはそのまま。
「フィナ先輩お願い!」
「任されました―――」
〈アマリリス〉コンビを倒したフィナのところに運ばれて。
「ちょ、待――」
「『エルシール』! 『エルシール』! 『エルシール』! 『エルシール』!」
「『グローリーバニッシュ』! 硬いですね――『ミカエルラッシュ』! 『ミカエルラッシュ』! 『ミカエルラッシュ』! 『ミカ――あれ? もう終わりですか」
『大天使フォーム』状態の2人に挟まれて『エルシール』でピタッと盾に張り付けの状態でフィナから連撃連撃連撃を受けてしまい、さすがのタンクもできるハイウドと言えど退場してしまったのだった。
なお、のちに『大天使フォーム』の2人に挟まれて逝った人物として、なぜかその手の人たちから注目と嫉妬を浴びることになるとは、ハイウドもまだ知らない。
そしてここでリーナから通信が入る。
「『フィナさん、トモヨさん、もう空の防御はカタリナさんとシャロンさんに任せて大丈夫ですわ! せっかくの変身状態なので地上で暴れてきてくださいな!』」
「了解です」
「お、いいねいいね! 盛り上がってきたよー!」
もちろん2人はこれを受諾。
変身時間も限られているため、2人は急ぎ空からの奇襲をぶっ放すことにしたのだった。




