#1469 実況席再び、混乱の最中。〈2組〉が〈1組〉へ
試合開始4分。
実況席は序盤から大盛り上がりを続けていた。
「な、ななななななんとー! 北側にいる〈1組〉、そのまま〈イブキ〉に乗って〈留学生1組〉の拠点、その側面から突っ込んだーーーーーー!!」
「〈1組〉VS〈留学生1組〉戦、勃発です! ですが〈1組〉は相変わらずとんでもないですよ。〈留学生1組〉は拠点の北側にしか陸路がありません。池という障害物のある西側から突っ込まれるというのは――想定していてもなかなか厳しいです」
「しかもその速度が問題よね。試合が開始されてまだ4分を超えたところよ。〈留学生1組〉は〈1組〉と〈2組〉の拠点を見て今の拠点の位置を決めたはず。結構離れていたはずだし、その間には緩衝地帯になりうる拠点〈6組〉もあったから、まさか4分で攻めて来られるなんて思わなかった人が多かったでしょうね」
「ああーーー! 〈1組〉が大技で奇襲を掛けまくる! 〈留学生1組〉はこれに応戦するが、防戦一方だーーー! 数で勝る〈留学生1組〉、質で勝る〈1組〉、いったいどちらが勝つのかーーー!!」
「〈1組〉は池側から拠点に侵入してきています。撤退をする気は無いでしょう。軽く決戦ですよこれ」
「これは凄いわね。もし〈留学生1組〉に盛り返され〈イブキ〉の操縦者をやられたら、退路の無い〈1組〉の攻撃部隊は敗北必至。なのに欠片も動揺せずに仕掛けまくってるわ。いえ、退路が無いからこそ絶対に勝つんだ、という気迫が生まれてくるのかしら?」
「〈留学生1組〉、盛り返せない! やはり〈1組〉強い! これは本当に〈留学生1組〉がここで退場になってしまうのかーーー!?」
「〈留学生1組〉は連携に支障が出始めている気がしますね。ユミキさん、どう思いますか?」
「集中している戦場にリーダーが不在というのが大きいわね」
「リーダーが不在? というと?」
「〈留学生1組〉のリーダークイナダさんは〈エデン〉のメンバーの1人よ。〈1組〉のやり方をとてもよく分かっているわ。それで輪で確認したのだけど、〈微笑みのセレスタン〉と〈歌姫ノエル〉を止めにすぐさま行動したみたいなの」
「なるほどーーー! 最近のギルドバトルで猛威を振るい学生たちを震え上がらせたあの〈微笑みのセレスタン〉! 確かに真っ先に止めておかなければいけないーーー! しかも〈歌姫ノエル〉とのコンボはみなさんも知っている通り!! これは防がないとあかん!」
「ですね。下手をしなくても一瞬で拠点が陥落してしまう凶悪コンボのお二人ですか。確かに真っ先に最優先で対処しないとダメな相手です」
「それも、〈微笑みのセレスタン〉は並大抵の実力じゃないから、並の相手では歯が立たないどころか、一瞬でやられてしまうでしょうね。リーダーが相手をせざるを得ない。というのは当然だわ」
「〈1組〉もそれが分かっているからか主戦場を拠点の北側に、〈微笑みのセレスタン〉は西よりやや南側で準備していたー! これにリーダー〈戦将のクイナダ〉と〈導きのクーレリテア〉、さらに伝令でやって来ていた〈見晴らしの黒猫カルア〉が対処ーーー! なんとか拠点を落とされるのを妨害することに成功した模様だーーー!!」
「これはさすがとしかいいようがありません。残りの〈1組〉12人は〈留学生1組〉が総出で対応。〈戦将のクイナダ〉の邪魔はさせないという気迫を感じます。これには〈1組〉もいつものリーダー即落とし戦法が使えないようです!」
「まさかここで〈微笑みのセレスタン〉が落ちるのかしら? それはそれで見てみたい気もするのよね。あの執事さん、本当に強いから」
「〈留学生1組〉も留学生トップの意地を見せるー!! これからの展開、本当にどうなってしまうのかー!!」
「しかし、これほど大規模に〈1組〉が攻め入ったというのに〈2組〉や他のクラスに動きが無いのが気になります」
「これは索敵ジャマー系が使われているわね。スキル、目視、両方を誤魔化しているわよ」
「な、なんだってーー! 私たちはモニターを通して見ることが出来ますが、目視では見えない!? 索敵も反応しないだってーーー! これでは援軍を向かわせられないじゃん!」
「〈1組〉はまだまだとんでもない隠し球を多数用意しているようね。頼れるのは『危機感知』系や『直感』系のスキルだけかしら? これは自分に迫る危険を感知するスキルだからジャマー系を完全に突破することができるけど、対象が自分だけに加えて範囲も狭いから、同盟相手が今攻められているという状況を把握するのは難しいわね」
「ユミキさんも突破しているようだが!?」
「私は〈調査課1組〉所属だったのよ? これくらいのジャマーの突破はわけないわ」
「うわぁここにも元〈1組〉が! この理不尽なまでの強みが〈1組〉と言われている所以かーーー! 〈留学生1組〉もがんばれーーーー!!」
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「! ちょっとお待ちください。〈2組〉〈3組〉〈4組〉〈留学生4組〉同盟、動きます! これは、〈1組〉の拠点へ向かっています!」
「〈留学生1組〉がまだ来ていないのに進む決断をするなんて、やるわね。確かに〈無情の城塞シャロン〉がいる限り、時間が経てば経つほど〈1組〉の拠点は強化されていくわ。待っている時間も惜しいはずよ」
「しかし、これは、凄まじく良い判断だったのではないでしょうかユミキさん? 〈1組〉の拠点は今、リーダーの〈勇者ゼフィルス〉が不在です」
「どうかしらね。〈1組〉の戦力は並ではないわ、敢えて戦力を分け、挟撃する作戦の可能性もあるわね。いずれにせよ、〈1組〉の拠点はそう簡単には落とせないでしょうね」
「累計100人規模の学生が〈1組〉拠点へ向かうーー! こんなの見たこともない大戦力だーー! 〈1組〉は〈留学生3組〉を下した南部隊が拠点に戻ってきている模様! 計16人! まだ防衛モンスターは登場して居ませんが、突破は可能なのかーーー!?」
「難しいところね。〈1組〉には【傲慢】を持つ〈最後のフラーミナ〉がいるわ」
「二つ名が〈最後〉ってちょー怖いんだけどーー! どういう意味なのかあまり聞きたくない!」
「教えてあげるわね。拠点を守る最後の砦、相手に最期を送る審判、それに――」
「だから聞きたくないって! は、果たして同盟軍は〈1組〉の防衛モンスターを突破できるのかーーー!」
「これはチャンスですからね。〈1組〉のリーダーの不在。ここで同盟軍を動かした〈2組〉リーダーのラウさんの決断が素晴らしいですね」
「観客席の色んなところからも大歓声が響いているわ。でも、そうは上手く行かないわよ」
「あ、ああっとーーー!! ここで超長距離砲、ラナ殿下の光の四宝剣が発射されたーーーー!」
「これがあるから〈1組〉は、そして〈エデン〉は強いんです」
「でも、さすがに〈2組〉には〈エデン〉所属のメンバーが何人かいるからね、これは―――やっぱり防ぎきるわね」
「防いだーーー! 同盟軍が宝剣を全て防ぎきりましたーーー!」
「どんどん攻撃が放たれてます。同盟軍、防ぎます。走る勢い、止まりません」
「ヘカテリーナさんの砲撃も混じっているわ。これは、『プラスレンジ』スキルのLVを上げてきたのかしら。ラナ殿下と二大遠距離攻撃の巨塔になっているわ」
「あの方も大概強いよね! さすがは公爵の方! なんで普通はダメージが減退されるマスを飛び越えられるんだー!!」
「同盟軍、ラナ殿下の攻撃にさらされながら砲撃まで対処するのは難儀な模様です。勢いが緩みました」
「でも目標はあくまで一点突破みたい。拠点の南側から攻めるわ。罠も仕掛けられていたみたいだけど、見事に破壊したわね。あ、爆発。1人退場したわ」
「ああっとーーーー! 尊い犠牲を出しつつここで同盟軍、拠点に到着! 〈1組〉の拠点マスに到着です!」
「拠点の城壁に、取り付きました! なんとあっさりと。今までこれを目標にして、しかしたどり着けなかった人が大勢いたというのに!」
「城壁の前で攻城戦に突入したわ。すごい迫力。さすがの〈1組〉もかなり押されているわ。これは―――あ」
「あああああ! ここで防衛モンスターの登場、ってデッカーーー!! 何あれ!? 何これ!? なんじゃこりゃーーーー!!」
「上級下位のランク4、〈炎帝鳳凰〉にランク6の〈強打義装機兵・カママクラス〉、通称〈カマクラ〉。これらは見たことはあるけれど『トゥルーアイズ』! 『ノイズ・アナライシス』!! ――〈ナダレグランキ〉? 上級中位ダンジョンの召喚盤? これは――レアボスだわ!」
「……え? えええええ!? 上級中位の召喚盤!?!? 今レアボスって言った!?」
「本当ですかユミキさん!?」
「輪で看破したわ。これはとんでもないモンスターが出てきたわね。〈エデン〉は現在、主要な狩り場を上級中位ダンジョンにしているわ。だからもしかしたらと思ってはいたけれど、本当に召喚盤まで手に入れていたなんて。しかもレアボス……ふふ、面白いわ、みんな度肝を抜かれているもの」
「面白がらないでユミキさん!? というか本当にマジのマジ!? 3体のボス級だけでもとんでもないのに、うち1体が上級中位ダンジョンのレアボスとか、まだ他の人たちそこまで行ってないんだよーーーー!?」
「!! 2人とも〈留学生1組〉拠点を見てください! 今、〈微笑みのセレスタン〉が〈留学生1組〉の拠点を落としました!!」
「な、なんだってーーー!! ここで〈1組〉VS〈留学生1組〉戦決着ーーーー!! 勝者は〈1組〉だーーーーーー!!」




