#1462 〈留学生3組〉の最後がこちら。ラナの良い一撃
悲報。
〈留学生3組〉リーダー退場。
「〈旋律のエドガー〉が!?」
「リーダー逝ったあああああああ!?」
「ふふん! やってやったわ!」
驚愕に叫ぶ〈留学生3組〉と、どうよと胸を反らしてドヤるエリサの差が激しい。
「くっ、ならばせめて〈眠り姫〉だけでも!」
「させると思いますか?」
「! 全員、〈眠り姫〉を狙え! 〈眠り姫〉だけはなんとしても退場させるんだ!」
「むっ! 『ミカエル加護大結界』!」
「ハーミットは!?」
「俺は情報を全員に伝達する! 〈1組〉の拠点情報は、お隣の〈3組〉に渡してきた! 希望はある! 耐えろ!」
「「「「「おおー!!」」」」」
すぐに我に返った〈キャプテンハーミット〉がリーダーに代わって指示を出す。
周囲にいる味方全員で〈眠り姫〉を攻撃し、フィナが防御に回ったおかげで下がれたハーミットが経緯を説明する。
「今は〈3組〉がこの情報を各拠点に広めている! すぐに対〈1組〉連合が組まれる! それまで耐えるぞ!」
「「「「「応!!!!」」」」」
そう、〈キャプテンハーミット〉は見事に役割を成し遂げ、〈1組〉の拠点位置情報を東の〈3組〉へ渡してきたのだ。
後は〈1組〉を避けて全クラスが集まれば、対〈1組〉連合が組める。
連合が組まれればいくら〈1組〉と言えど攻めに出続けるのは厳しいだろう。
そしてこの情報をハーミットは拠点中に拡散する。
なお、〈3組〉に情報を渡さなくても〈2組〉が〈1組〉の拠点の位置を把握しているのだが、それは会場の盛り上がりで失念した様子だ。そっとしておいてあげてほしい。
希望が見えたことで〈留学生3組〉に気合いを入れ、〈1組〉には慌てさせ動揺させる狙いだ。しかし。
「は、はあああああああああ!?」
「なんだ!? どうした!!」
「〈1組〉拠点のさらに奥にあった拠点が陥落した模様!! 北を確認していた奴らからの情報だ! もう〈1組〉が拠点を落としたって!!」
「ああん!?!?」
そこはまさしく〈6組〉の拠点があったところ。
え、なに、もう落ちた?
その報告にハーミットは一瞬何を言われたのか理解ができなかった。多分、脳が無意識に拒んだんだと思う。
だが、その報告は〈1組〉にも届いており、当然士気が上がる。
「おい、ゼフィルスがもう落としているぞ! ゼフィルスがいなければ〈1組〉はこの体たらくなのか! みんなもっと気合いを入れろ! 『グラビティ・ロア』!」
「ははん。メルトはん偉い気合い入ってますなぁ。うちも負けへんように少し気張っていきましょか~『七尾解放・妖炎津波』!」
「たははは~。みんな頑張れー防御と回復は任せてねー『サンクチュアリ』!」
「聖獣の力を見せちゃうよー。お願いね! ぺーちゃん『空駆ける天馬の突撃』だよ! ミーちゃんは『猫×三十閃』! リーちゃんは『天からの贈り物・雷』だー!」
「ブルヒヒーン!!」「ンニャー!」「ヤーヤー!」
メルトの言葉に〈1組〉の攻撃が激しさを増す。
ハクの炎の津波が防衛モンスターごと〈留学生3組〉の学生たちを飲み込み、ミサトのユニークスキルが拠点中に広がったことで、もうここは〈1組〉の陣地だというレベルで〈留学生3組〉が不利になる。
さらにフラーミナも頑張る。〈狩猟解放杖〉を仕舞い、左手に〈レビテーションスノー〉を、右手に〈レビテーションブロウ〉を装備した新スタイルで空に浮かび、聖獣と天使たちを解き放つ。
天馬、正確には聖獣だが、〈聖獣ペガサス〉のぺーちゃんを筆頭に、聖獣進化を果たした〈聖獣ニャー・スペシャルネコザムライ〉のミーちゃんと、天使の特殊進化を果たした元妖精種の〈上級守護天使・リネエル〉のリーちゃんを突撃させた。
「な! 防げ防げ!」
「バフが切れたぞ!? エドガーはどこいった!」
「〈留学生3組〉のリーダーは退場したぞー!!」
「退場した……? は!? 退場した!!!?」
「へ? ちょっと待って、リーダー退場しちゃったの!?」
「今は前を見ろーー!! ええい――『ターミネートギガキャノン』!!」
「ぎゃあああああ!?」
「わっ!? なにこのモンスター!? とんでもない強さだよ!?」
「それよりも下! 下! したーーーー! このエリア魔法、俺たちのHPを削ってるぞ! 術者倒せーーー!!」
ハーミットの活躍のおかげでせっかく持ち直しかけた〈留学生3組〉だったが、士気を挫かれ、そこに士気の上がった〈1組〉の猛攻を受けたことで大打撃を受けてしまう。
〈留学生3組〉の力を底上げしていた〈旋律のエドガー〉はエリサが討ち取ってしまったため、防御力も大きく低下。そこへ、
「ちょ、宝剣来てる!」
「誰か防いで! 私は手が離せない!」
「俺が逝く! 下級職舐めんなーーーーー! 『ボルトアックス』! ああああああ!?」
「くそう、無茶しやが――ってふせげてねぇじゃん!?」
ラナの宝剣も再び飛来。
上級職ではない一留学生が身を挺して防ごうとするも、3本ほどぶっ刺さったところで退場してしまい、残り7本が他のメンバーたちにぶっ刺さった。
「ちょ、強い強い!!」
「どこから撃ってきてんだ!?」
「遠いぞ!? いや、いた! 北のデッカマス左側! 北のデッカマスの側に人影発見!」
実はラナと護衛だけ別行動中。
〈留学生3組〉の拠点の10マスほど北にいるのを発見する。
もちろん、好き勝手撃たせるわけにはいかないから迎撃しに行こうとする〈留学生3組〉だが。
「おおい! 〈1組〉の防御力はマジどうなってんだ!」
「全然突破できないぞ!」
「あのスカウトガールミサトまで届かない!?」
「へへん! ここから先は私とアイシャちゃんとシエラさんが通さないよ! 五段階目ツリー『天使の破魔結界』!」
「ここを通りたくば私たちを突破してからにしてもらいましょう。同じく五段階目ツリー『シャドーアウトブレイクン』!」
「私を抜こうなんて、甘く見られては困るわ――『重操結界強化速展』!」
「この列車を飛び越えることは不可能と思っていただきましょう――『グロリアスシールド』!
「だいぶ減ってきたわね。みんな、後衛は気にしないで攻撃に集中して――『クイーンオブカバー』!」
トモヨとアイシャ、カタリナにロゼッタ、さらにはシエラの防御力が最高。
新しく覚えた五段階目ツリーを惜しげもなくお披露目したトモヨとアイシャはブレイク系を駆使し、相手の攻撃をガンガン相殺する結界のようなものを展開する。
トモヨは光っぽいちょっと桃色の結界、アイシャは闇っぽい影の結界だ。
2つ合わさるとかなりかっこいい見た目になっている。
カタリナは自在に操れる大量の板結界を展開。組み合わせや重ね合わせでどんどん攻撃を防いでいく。
ロゼッタは列車の上に乗り、同じく乗るミサトをしっかり守っていた。
シエラは相変わらずだ。ガンガン前に出ながら攻撃をカバー、前に出すぎているメルトやハクを完全に守っていた。
シエラの後ろに出て、トモヨとアイシャをなんとか突破してきても、カタリナとロゼッタがそれを全て叩き落としてしまうため、後衛のミサトや、遠距離攻撃を行なっているラナたちの下へは行かせない。
〈留学生3組〉で上級職になっているのは24人。そのうち五段階目ツリーを開放しているのは3人だった。
五段階目ツリーを惜しげもなくぶっ放す〈1組〉メンバーズに数で有利のはずの〈留学生3組〉はどんどん押し込まれていき、ついにその時はくる。
「くっ、ここにいてもじり貧だ! 俺が打って出る!」
「〈キャプテンハーミット〉!」
「俺の生き様、しかと目に焼き付けろ! うおおおおおおお!!」
〈キャプテンハーミット〉がバイクを唸らせ、単身で打って出たのだ。ハーミットだけならばなんとか突破は可能。さっき〈3組〉に行っていた時もロゼッタの〈ブオール〉を飛び越えて帰還したのは伊達ではない。
今回もカタリナの板結界をむしろ坂道に利用するというロマン溢れるかっこいいアクションで、〈ブオール〉を飛び越えていったのだ。
さすがにこんなロマンされたら誰も抑えられない。
そうして誰にも追いつけない速度でラナの下へバイクを走らせたハーミット。
目標を見つけ、さらにバイクに力を入れる。
しかし、当然ながらラナには護衛が付いていた。
「来ましたか。討ち取りましょう――『デスショット』!」
それはシズの〈即死〉の弾丸。
上手く突破してラナのいる〈デッカマス〉側まで行けたが、そこにはシズとパメラが待ち構えていた。
ハーミットは突破したのではない。見逃されたのだ。だってラナを討ち取るなんて護衛が許さないから。
そしてその弾丸は、寸分違わずハーミットに命中する。
「ガッ!?」
バイクで高速走行していても、こっちへ向かってくるのだからシズにとって当てるのは造作もないこと。
追撃でパメラが駆けようとしていたが、その場でピタリと立ち止まる。
「マジ、かよ―――」
たった一撃で〈即死〉判定を出されてしまい、そのままハーミットは退場してしまったからだ。
「ありゃりゃ、一撃デスか!? シズの銃撃は強すぎるデース!」
「運が良かっただけです。次はパメラの出番もありますよ」
「そうよパメラ、気を落とすことなんかないわ! 出番はまだまだ来るはずよ! 『大聖光の四宝剣』!」
「その前に拠点落ちそうデース」
「「「あ」」」
パメラが落ちそうと言ったのが原因か。
ハーミットが退場するところを見てしまい、超が付くほどカチンコチンに固まってしまった〈留学生3組〉に〈1組〉が猛攻撃。
とてもラナの『大聖光の四宝剣』を防ぐ余裕などなく拠点に直撃してしまい、これがトドメとなって拠点のHPがゼロになってしまったのだ。
「ふう。こんなこともあるわ」
ふっ、と落ち着いた表情でラナが言う。
「……次の機会があれば私に譲るデース!」
「そうですね。では次はパメラにお願いしましょう」
さすがに可哀想と思ったのか、シズが折れてパメラと約束していた。
〈留学生3組〉無念――結果は7位。
だが、〈留学生3組〉の報告のおかげでお隣の〈3組〉は迅速に行動することができ、他のクラスたちが対〈1組〉連合を組むため素早く集まることになる。
そして、〈6組〉と〈留学生3組〉を討ち取った〈1組〉は、またも大胆な戦法に出るのだった。




