#1456 決勝戦作戦会議!警戒すべき人ピックアップ!
「とのことで、どうやら決勝戦では〈1組〉以外のクラスが全て組んだとの情報を掴んでおります」
ざわざわ、ざわざわ。
セレスタンの報告に〈1組〉の教室全体がざわめく。
準決勝勝利おめでとうな打ち上げも終わり、続いて明日の作戦を練ろうという状況。
そこへなかなかに衝撃的な話が飛び込んで来た。
なんとクイナダやラウが率先して動き、クラス対抗戦では〈1組〉VS他のクラス全てという図式を作ってしまったとのことだ。
……これはひょっとしたら俺たちへのサービス、なのかな?(勘違いです)
先の準決勝戦。正直なところ作戦らしい作戦なんてほとんど無かった。
組もうとしているところを混乱させ、妨害するのは基本中の基本。セオリーだ。
故に準決勝戦で手を組もうとした留学生クラスに挑んだに過ぎない。
だが、結果は完全勝利。
相手は4クラスだったのに、こっちは誰も退場者が出なかったのだ。
あれ? 攪乱しすぎたかな? 4クラス相手でも退場者ゼロて……。
これは、このままだと決勝戦もストレート勝ちしてしまう予感!
だが、そんな心配をクイナダとラウは解決してくれたのだ。
7クラスで〈1組〉を相手にするというのだから凄まじい。
ひょっとすると、逆に良い試合になる? そんな予感もする。
クイナダやラウが自分たちが勝つためにだろうが、必死に考えて戦おうとする意思が垣間見られてとても良きです。
「こりゃ、本気を出さないとな」
「やる気ねゼフィルス!」
俺の言葉にざわめいていた教室が静かになり、ラナがウキウキしているような声で目配せしてきた。
俺はもちろん頷くのだ。
「何か策があるのかゼフィルス?」
クラスを代表してそう聞くのはラムダだ。
だが、俺は自信を持って返す。
「いや、策もなにもまだフィールドも決まっていないんだ。さすがに綿密な策を用意するのは厳しい。だが、俺たちは〈1組〉だ。本来のスペックだけでも十分7クラスと戦えると俺は思っている」
俺の言葉に教室がシーンとなる。
要は俺たち〈1組〉30人が本気で戦えば、学園上位の210人と良い勝負ができるだろうと言ったのだから、みんな複雑な気持ちだろう。嬉しいやら照れるやら?
ラナは両方の様子だ。
そこでシエラが壇上に進み出て聞いてくる。
「でも、さすがにノープランではないわよね?」
「もちろんだ。さすがに無策では7クラスには勝てないからな。大まかな作戦は考えておこう。それを何通りか作っておき、状況に応じて作戦を切り替える。基本的には準決勝の時と変わらず、集まる前に速攻で崩すぞ!」
数の暴力とは時に質をも覆す。
特に相手は7クラス、210人だ。それを30人でやるからにはそのまま突き進めばどうなるか明らかである。
多少無理してでも囲んで数の暴力に頼れば勝てることもあるのが数的有利である。
対してこちらは質的有利。
圧倒的に有利な質は時として戦況を一変させる。
数に対し、急所へ突き刺す質が勝利を掴んだことはこれまで何度もあったのだ。
今回もやってしまおう。ふははは!
「まずは相手の急所を知るところからだな」
「指揮官を討ち、相手を混乱させるということですわね」
「加えて、突撃隊長的な存在や、頼りにされている人物のピックアップも頼むぞ」
「それでしたらお任せを。すでに調べはついております」
「……さすがだなセレスタン」
早い。あまりにも早いぞセレスタン。というかここまでの話の流れを読んでいたな?
「まず要警戒なのは〈エデン〉のメンバーでしょう」
「だろうなぁ」
「うん。知ってた」
「この方々だけはあかんわぁ」
「そうだよね」
セレスタンがピックアップした6人にクラスメイトのラムダ、ミュー、ハク、アイシャが揃って頷く。
もちろん要警戒なのは〈2組〉所属のラウ、サチ、エミ、ユウカ、カルア。そして〈留学生1組〉所属のクイナダだ。
「こちらは30名おりますが、向こうは6名。他に204人の手勢を使ってくるとします」
「うわ、そう考えると結構厳しいわね」
「特に厄介なのが、カルアさんが向こうにいることですわ。カルアさんは〈エデン〉の斥候にしてトップスピードアタッカーです。こちらの作戦も全部バレてしまい、先回りされる、ということもあり得ますわ」
リーナがまず危険を唱えたのはカルアだ。
まあそれも仕方がない。これまでカルアはギルドバトルで色々と猛威を振るってきた。
普段はほにゃほにゃしてるし、日なたぼっことか好きだし、よく寝ていたりするし、話を聞いていなかったりするが……おそらく今回一番警戒しなくてはいけないのがカルアだな。
「指揮官はラウだろうな」
「間違いないわね。元々〈エデン〉に来る前は〈ディストピアサークル〉でギルドマスターをしていたのだから、指揮能力にも長けているわ」
カルアと同じくらい警戒すべきなのはラウだ。
〈エデン〉VS〈ディストピアサークル〉戦では、俺の作戦に対し、思い切った奇策でピンチを乗り切ろうとしてきたことはしっかり記憶に残っている。
あの時は戦力が足りず作戦を活かせなかったが、起死回生の策を土壇場で考えついたという実績は、大いに警戒するに値する。
「サチちゃんとエミちゃんとユウカちゃんは一緒に行動しているだろうから、コンボ攻撃を食らえば私たちでも多分退場しちゃうと思うよ?」
「まずは各個撃破を狙わなければならないだろうが、あの連携力は脅威だ。こっちもスリーマンセル以上の戦力を用意する必要があるだろう」
続いてミサトとメルトは、サチ、エミ、ユウカを警戒する。
〈エデン〉最強の攻撃は何か?
答えはサチ、エミ、ユウカの最強コンボ、『神気開砲撃』である。
これの直撃を食らえばたとえ〈1組〉と言えど一撃で退場だ。
先程も言った、戦況を覆すほどの質を秘めているのがこの3人だ。
さらに連携力でも飛び抜けており、いつも3人行動なため、こっちも数を揃えて対抗する必要がある。
斥候のカルア、指揮官のラウ、破壊力のサチ、エミ、ユウカ。
〈2組〉は非常にバランスの良いメンバーが揃っていると言っていいだろう。
「そしてクイナダ殿か」
「単純に強いですわね。ですが、このクイナダさんならばやりようもあると思いますわ」
〈留学生1組〉リーダーを務めるクイナダだが、リーダーだからこそ〈1組〉を相手に前戦に出てくることは考えにくい。
レグラムとオリヒメさんはそこも踏まえた上で、対処は比較的楽だろうと結論付けた。
どこのクラスも〈1組〉みたいにリーダーが自由にはっちゃけられるわけではないのだ。むしろリーダーがやられれば少なからずクラスに影響を及ぼすため、絶対にやられるなと前に出させてもらえないことの方が多かったりする。
「〈1組〉はその辺、なぁ」
「ゼフィルスだからな」
「うん。ゼフィルス絶対やられそうにないし」
「守る必要がないって楽なんだけど、私みたいな職業の存在意義がね~」
それはクラスメイト全員の共通認識だったみたいで、ハク、ラムダ、ミュー、アイシャも微妙な目で俺を見る。
なんだねその目は?
「それと、昨年のクラス対抗戦で目立っていた人物。最近頭角を現してきた人物。頼りにされている人物など、色々と資料を用意してみました」
「さすがはセレスタンなんだぜ」
もうツッコまないぞ。
俺は資料を受け取り、目を通してすぐに頭へ叩き込む。
お、キールやアランが書かれてる。
確かに、ユニークスキルを警戒すべき対象というのもいるよな。
キキョウはいないし、さて誰を当てようか。
他にも〈2組〉に知っている名がずらりと並んでいる。
リャアナ、ナギ、セーダン、アケミ、カジマル、ワルドドルガ、エイローゼル、アディ、レミ、ハイウド、ナイヴス、レイテル、ゴウ、コブロウなど。
どこかで戦ったことがあるメンバーがかなり揃っているな。
アディとレミとはちょっと去年の再戦とかしてみたいぜ。
「留学生組は、結構ばらけている印象ですわね」
「上級職になって日が浅い人も多いみたいだから、誰がどのくらいの能力を持っていて頼りになるかというのをクラスでも把握していないみたいなのよ」
「ですが、それも今回のクラス対抗戦で一目を置かれる人物が何人か出てきました。それも入れております」
資料には職業と名前が書いてあるので色々とありがたい。
作戦が練りやすいな。
「よし、それじゃあ。それぞれの職業の特性を解説しようか!」
「ゼフィルス先生のお時間です!?」
「さすがはゼフィルス君なんだよ!」
とりあえず特性を知っておかなければ始まらないと、壇上で黒板に書き始めると、ラクリッテやノエルを始めとして歓声が上がった。
はいはい、久しぶりにゼフィルス先生のお時間ですよー。
「毎度思うのだけど、なんでゼフィルスはこういうことに詳しいのかしらね?」
「勇者だからな!」
「…………」
いつも通りに返せばシエラからジト目が返ってきた!
やふー! おっといけない。教室でテンションが上がってしまう!
俺はいつもより2割増しの速度で書きつつ、テンション高めに解説した。
さすがに210人分は難しいので、ピックアップされているメンバーだけな。
「ふう。今日できるのはここまでか?」
「そうね。それに、もう遅い時間だもの続きは明日ね」
「試合は、最後の大トリである〈戦闘課3年生〉の試合の1個前、13時から行なわれます。みなさま、悔いが残らないよう務めてください」
「大トリが……3年生?」
「それじゃあ解散だ! みんなまた明日!」
「「「「お疲れ様でした~」」」」
ということで夜には解散。
さーて、どうしたものかな。
さっき質的有利を話したが、相手もかなり質が高い人が多いことが今回の話し合いで分かった。
楽しみだな~。
なお、ラムダの「大トリが……3年生?」の呟きについては、みんな聞かなかったことにしたのだった。




