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ゲーム世界転生〈ダン活〉~ゲーマーは【ダンジョン就活のススメ】を 〈はじめから〉プレイする~  作者: ニシキギ・カエデ
第三十二章 2年生&留学生・クラス対抗戦編!

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#1449 クラス対抗戦1日目は、まさかのラナとデート?




「――――学生の成長を是非見せてほしい。ではこれより、クラス対抗戦の開催を宣言する!」


「「「「「おおおおおーーーーーーー!!!!」」」」」


 9月22日月曜日、午前8時。

 クラス対抗戦の開催が宣言された。

 去年のように喋っている途中で歓声にかき消されることもなく、学園長は最後まで言い切っていたよ。

 ちょっとだけ目頭が熱くなった気がしたのは、きっと気のせいだろう。


「いよいよクラス対抗戦開催ね!」


「今年はどこが勝つでしょうか? もちろん1年生と3年生のことです」


「1年生は〈1組〉に決まったようなものよ! 私たちが一緒だったんだもの!」


「そうですね。分からないのは3年生だけでした」


 いやエステル。3年生も〈1組〉は結構強いから、十分優勝候補だからな?


 横にいるラナとエステルがクラス対抗戦の優勝を予想(?)している。

 昨日ハンナを連れ去った(?)ように思うのだが、今日はハンナの代わりにラナが俺の部屋に迎えに来たんだ。

 いったいなにがあったのかはわからない。


 朝、いつもよりも少し遅い時間にドアがノックされたんだ。

 いつものハンナならそのまま合鍵を使って入ってくる場面。ちょっとおかしいなと思いながらも、なんだか懐かしいなと感じながら玄関のドアを開けたら、ラナだったんだよ。

 なぜかひんやりした汗が背中に流れたあの瞬間を、俺は忘れない。


「今日は私の番よ。一緒に学園を回りましょ!」


 そう言われて、なぜかドアの影に隠れていたエステルも合流して今に到るかたちだ。

「今日は」この意味がとても意味深に感じます。


「ゼフィルスは? どこが勝つかしら?」


 ラナに振られて意識が現実に引き戻される。


「そうだな~。全学年で〈1組〉が勝つと予想しているな。去年もそうだったし」


「はい。留学生組も居りますが、そちらは2年生グループに組み込まれておりますしね」


 エステルが暗に留学生組の敗北は確実だとさらりと言っていた。

 まあ、2年生組は俺たちがいる。俺たちを抜いて優勝をさらうことは難しいだろう。


 ちなみに留学生が2年生組に加えられているのは、留学生の多くが2年生だからだ。

 1年生の時に分校で優秀な成績を修め2年生を留学して過ごし、3年生で帰還して本校の教えを分校に広めるために、99%が2年生で構成されている。

 故に留学生のクラスは2年生のクラス対抗戦に組み込まれている、というわけだな。


 おかげで今年のクラス対抗戦〈戦闘課2年生〉の部は、戦闘課2年生が280クラス、留学生が80クラスで、合計360クラスが争うというとんでもない環境になっている。


「うう~ん、早く戦いたいわ!」


「私たちの出番は4日目なので、あと3日は我慢ですね」


「もー、シードなんていいから〈1組〉にもやらせてくれるといいのに!」


 激しく同意。


 だが去年でも〈1組〉と〈127組〉との差はべらぼうでとんでもないものだったというのに、現在の〈1組〉と〈280組〉の差はすでに覆しようが無いところまできている。

 去年も覆しようが無かったような気がしなくもないがそれは置いておき、おかげで2年生の上位クラスはシード権を獲得していて、ある程度選ばれた強者クラスと戦わせるという形で落ち着いている。


 ちなみにこれは留学生組には適用されない。

 留学生は絶対に良いところを見せ、本校に来た成果を試したい、残したいと思っている。

 その場を設けるためにもシード権は1つも与えられていないのだ。

 下位クラスに負けるようなら留学までして本校に来た意味を問われてしまう。

 さぞ気合いが入っていることだろう。


 ちょっと寄り道してしまったが、つまりは俺たち〈1組〉は平日5日間かけて行なわれるクラス対抗戦で、4日目の準決勝戦から参戦することになっている。

 そのために3日目まではちょっと時間があるのだ。


 ラナ曰く、「1日目は私だから」とのことだ。

 え、じゃあ2日目と3日目は?

 とても気になる俺です。あとハンナはどこへ?

 そんな俺の気持ちが表に出ていたのかもしれない、エステルが近くに来てそっと伝えてきた。


「ハンナさんは〈生徒会〉の仕事がありますので、〈生産専攻〉系のクラス対抗戦ブースへ向かわれました。忙しいみたいです」


「そうか。そういえばそんなことを言っていたような気がする」


 思い出してきた。

 ハンナも明日コンテストへの参加らしく、その他は〈生徒会〉の仕事をしているからあまり一緒できないって。だからこそ昨日はハンナと回ったんだった。

 ハンナ、去年のコンテストでは殿堂入りという名の出禁食らってたけど、今年は上級職が増えてハンナと実力が拮抗(?)したから出禁が解除されたって喜んでたんだっけ。


 ハンナが連れ攫われた衝撃が強すぎてうっかり記憶からこぼれ落ちていたんだぜ。

 ということは、ハンナは無事解放された模様だ。良かった。


「ねぇゼフィルス、今日はどこに行くの?」


「出店を巡るのもいいかもしれないな。それとも試合でも見に行くか?」


「午後には1時半から〈留学生1組〉、4時からは〈戦闘課1年1組〉の第一試合があるようですよ」


「なら午前中は出店巡りにいきましょ! 少しお腹が減ったわ! 午後には1年生とクイナダの試合を見るわよ!」


「決まりだな」


 こうして午前中はラナと出店巡りをすることになった。

 エステルも連れてな。あと、こっそりシズとパメラも監視しているらしい。一緒に来れば良いのに。


「でもどんどん人が増えてるわね」


「ラナ様、はぐれないよう気をつけてくださいね」


「私を子ども扱いしちゃダメでしょエステル」


「いえ、ラナ様は王女ですよ?」


 そんな仲の良いやり取りをするラナとエステルの言葉に周りを見ると、確かに人がどんどん増えていた。

 これは去年のクラス対抗戦が急遽9月に決まり、来られなかった人たちがたくさんいた皺寄(しわよ)せらしい。今年のクラス対抗戦がわざわざダンジョン週間を第3週に移動してまで第4週に開かれたのも、招待客を入れるためだったとか。


 おかげで今年のクラス対抗戦は去年の倍近くの来場者が見込まれているらしいと聞く。

 確かに、はぐれると大変そうだ。


「ラナ、エステルの言うとおりはぐれると大変だから手を繋いでおいた方が良いんじゃないか?」


「へ? 手を? んん。ま、まあ良いんじゃないかしら? 私の手を引くのを任せてあげるわ」


「おや?」


 そう、少し顔を赤くしたラナが片手を俺に差し出してくる。

 エステルと繋げば? という意味だったが、ラナは俺をご所望のようだ。このツンデレ風味がたまりません。

 俺は即で手を掴んだ。


「ふわ!」


「よし、それじゃあ出店巡り再開するか!」


「ふわおー」


 なんだか気の抜ける声だったがラナがゴーしたのを感じ取り、そのまま歩き出す。

 チラっとエステルを見ればグッと拳を握るジェスチャーで答えてくれた。オーケーらしい。

 

 少し照れた様子のラナがプライスレス。そのままアリーナ方向へと繰り出した。


「い、色んな出店が出ているわね」


「昨日急ピッチで作ってたからな。というかもう完成していることに驚きだ」


「それはハンナと一緒に回ったのよね?」


「お、なんだあの出店は! ラナ、ちょっと覗いていこうぜ!」


「ご、誤魔化したわ! 今のは明らかな誤魔化しよ! 昨日のお泊まり会でハンナから聞いたんだからね!」


 いったいどんな話がお泊まり会で飛び出したのか、俺は怖くて聞き出せない。


「聞いたわよ、また勝手に〈上級転職チケット〉を女の子に渡したそうじゃない! 渡すのはいいけどゼフィルスが渡すのはダメよ! 分かった!?」


「おう。分かった分かった」


「返事が軽いわ!」


 ラナがプンスコ怒るが、俺が恐れていたハンナの朝食の件ではなかったので少し気が抜けてしまったんだぜ。

 そのままなんとかラナを出店の話題に誘導する。


 出店は去年よりも規模が大きい気がするのは気のせいではない。

 学生以外に外から来た人たちも出店を開くからである。

 去年は出店を開く人も来られなかった人は多かったのだ。


 ラナが握った手をギュッギュッと強く握ってくるが、全く痛くない。むしろ気持ちいいまである。

 俺もお返しに少し弱めにギュッと力を込めたら、なんかおとなしくなった。


「む、むう。なんだか、もやもやするわ」


 ラナが小さく唸っている気がしたが、きっと気のせいだろう。でも可愛い。

 見ろ、なんか後ろを付いてくるエステルまで幸せそうな顔をしているんだ。

 しかし、そんな雰囲気も〈攻略先生委員会〉が出している出店に近づいたところで吹き飛ぶことになる。


「な! これは! ラナ、見てくれ。〈幸猫様〉そっくりの等身大ぬいぐるみがあるぞ!」


「なんですって!」


 なんとそこには〈幸猫様〉を模したぬいぐるみが、大量に売られていたのである。

 これはいったい!?


「店主! 店主はいるか! 全部もらおう!」


「な! ゼフィルスダメよ! せめて8割は私に渡しなさい!」


「それは求めすぎじゃね!?」


 夏祭りでは〈幸猫様〉のお面を売っていた〈攻略先生委員会〉が本気を出してきた予感。

 しかもこれ、フラーラ先輩作じゃん! 完成度のクオリティが半端なさ過ぎだろ!

 一瞬本物かと思ったよ。

 絶対タバサ先生が依頼したに違いない。


 これは買うしかない!


「ごめんね~。これは1人1つまでなのよ」


「そ、そんな……!」


 しかし、無念。店員の先生からそう諭されて俺とラナが愕然とした。

 なんということだ。

 これほど素晴らしいものが1つしか買えないなんて。

 仕方ないので1つ買う。

 すると横では。


「私とエステル、1つずつ買うわ」


「毎度ありがとね~」


 ラナとエステルで2つも〈幸猫様〉のぬいぐるみをゲットしていた。

 2つ、だと? まさかラナ、エステルに数合わせを頼んだのでは!?

 そう思ったが、それは杞憂だった。


「大切にしますね」


「そうよエステル、これは大切にしないとダメなんだからね! みんなに拡散よ!」


「はい!」


 どうやらエステルはエステルで大切にするらしい。良かった良かった。

 なお、その後〈幸猫様〉そっくりぬいぐるみは1日目の午前中で完売したらしい。

 そして購入者は全員〈エデン〉と〈アークアルカディア〉のメンバーだったとか。




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ゲーム世界転生〈ダン活〉1巻2022年3月10日発売!
― 新着の感想 ―
ハンナがチケット渡せば全部解決しそうだな 生産隊長だもんね
[一言] なるほど、この為のシード扱い……何故か3日間あるからばっちりだな!(何が
[気になる点] ゼフィルスが渡すのはダメよ > 例えばセレスタン経由で渡したら、外から見るとお貴族さまが妾を探して(欲して)いるようにしか見えないと思う。 [一言] フラーラ先輩作だとこっそり補助的な…
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