19.社交界での一幕
19.社交界での一幕
(続きです)
「な、なぜ貴様がここに!?」
「そ、そうよ! よりにもよってどうしてあなたが!!」
「けがらわしい、早々に立ち去れ!」
「その通りです。あなたのような方が来ていい場所ではない」
「ボクらの前に姿を見せないで欲しいね!」
その声には聞き覚えがありました。
ええ、だって、まだ数週間前の出来事に過ぎないのですから。
ほんの数週間前にすべてをうばった元凶。
婚約破棄の末に、卑怯な決闘でわたくしを母国より追いやった方々の声だったのです。
それは。
ペルシニカ第一皇子。ロズイル公爵家長男を筆頭に、金髪の聖女と言われたシルビア。私を母国より追放した少女。
そして、その取り巻きとも言うべき男性たち。
赤い髪が特徴的なワイルドな印象の男性。ペルニシカ皇子の弟。ロズイル公爵家次男のアレックス様
銀髪をオールバックにした知的な風貌の男性で、ロズイル公爵家とゆかりの深い、エホール公爵家の次男ルイス様。
栗色の毛を持ち、その姿はまるで天使とまでうたわれた天真爛漫と言った幼い風貌を持つ、カルデイ侯爵家長男、ハイネ様。
その5人だったのです。
驚くべきことに、この5人もパーティーに招待されていたのでした。
しかし、どうしてでしょうか?
まさか、ブリューナク殿下がわざわざ私たちを再会させようと思う理由には、さっぱり思い当たり節がありません。
そして、案の定、彼らはわたくしを見つけるなり、嫌味と言いますか、社交の場であることを忘れたかのように罵詈雑言を浴びせかけてきます。
「特権階級とやらになったと聞いたが、嘘に決まっている! お前などはあのあてがったボロ屋敷で、幽霊に取り殺されてしまえばよいのだ!」
「その通りですわ! よくも私たちの前に姿を見せられましたわね! この恥さらし!」
「卑怯者ほど悪知恵が働くという。どうやってあの気難しいブリューナク殿下のお気に入りになったのやら」
「ふ、それは語るまでもないですね」
「品性のかけらもないカナデ様なら、って感じかな?」
あの、ここは社交の場ですので、出来れば貴族らしさという建前くらいは守って欲しいのですが……。
そんな罵詈雑言に対してわたくしは言い返せません。
というか、言い返す方がよほど悪手であることに直感的に気づきます。
彼らは自分の言っている言葉が、この社交の場で。
ブリュンヒルト大公国でどんな意味をもっているのか。
そして、周囲のブリュンヒルト大公国の貴族たちが、どんな目でみているか気づいてすらいないのです。
わたくしはむしろそちらを恥に思うのでした。
「なんとか言ったらどうなの!!!」
わたくしが何も言い返さないことに業を煮やしたシルビアが、近くにあったグラスをとりあげて、わたくしに果実酒をぶちまけようとした、その時でした!
「レディ。我が国の国賓に何をされるつもりですかな?」
「え?」
そのぽかんとした。
魂が抜けたような表情をわたくしは一生忘れることはできないでしょう。
なぜなら、彼女の腕をおさえたのは、この国の大公。
ブリューナク殿下、その人だったからです。
(次回、最終回!)
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