愛する人と40年ぶりの再会
ガラス張りの明るい温室の真ん中で、エル様は日差しを浴びていた。
水色の長い髪はキラキラと輝いていた。
丸坊主の侍女ヨルドは伝えた。
「エル様。エル様にお会いしたいと申す者がおります。」
「山の上の研究所までいらっしゃるなんて、、。どなた?」
「ウーヌス様です」
侍女ヨルドは少し震えながら伝えた。
「ウーヌス様、、、、。」
死んだはずの恋人の名前を聞いても、エル様は驚くでもなく理由を聞くでもなく無表情だった。
背中のソムヌスが少し揺れた。
長い沈黙の後、エル様は会うことを選択した。
ウーヌスは薬草研究所の温室の真ん中にゆっくりと歩んで行った。
デュオとトリーは隠れながらエル様に近づいて行った。
温室の周りには武装した兵士たちが潜んでいた。爆薬が準備されていた。
エル様は若く美しい姿のままだった。
貴族にだけに遺伝する水色の長い髪はサラサラと輝いていた。
水色の目で、近づいてくるウーヌスを見ていた。
対して、白髪混じりの黒髪のウーヌスは、田舎で長年日焼けした60代の顔だが、今日はボサボサの髪をキリッと一つに結び、かつての護衛騎士の服装をしていた。
「お久しぶりですエル様。」
エル様は返事をせず、ウーヌスの顔を見つめた。
「あの日、私は水色の髪と目の赤ん坊を城から連れて逃げました。
赤ん坊には約束通り、デュオと名づけました。
デュオは結婚して子供もいます。
私たちの孫は水色の髪と目で、トリーという名前のすごいわんぱく坊主です。」
ウーヌスは苦笑いをした。40年経った今ではもう、孫までいるのだ。
「ウーヌス、、。夢でも幻でも構わないわ。」
エル様はウーヌスに近づいて来た。
エル様は美しかったが無表情で人形のように見えた。
「あの日は置いてきぼりにされて悲しかったけど、やっと私を迎えに来てくれたのですね?」
「はい。お迎えにあがりました。
俺と一緒に死んでいただくために。」
エル様はずっと前から死にたかった。
ウーヌスと死ねるなら、これ以上のことはなかった。
「はい。今度こそ一緒に、連れて行ってくださいませ。」
エル様の後頭部の寄生植物ソムヌスがシュルシュルと毒トゲのついたツタを伸ばし始めた。
寄生主エル様の死を阻止するために。




