ウーヌスの計画
その夜、ウーヌスはデュオとトリーに話を始めた。
「実は、デュオの母親がエル様だ。
エル様の護衛騎士だった私とエル様の子だ。
不倫と不義の子が許されるはずもない。
エル様は密かに出産され、その子供はすぐ殺される計画だったが、私が奪って逃げた。
私とデュオは逃げ切ったが、エル様には2人は死んだと伝えられた。
そこで錯乱状態になったエル様を鎮めるために後頭部に麻薬を出す植物ソムヌスを植えた。
ソムヌスはエル様の血を吸って怪物になった。
ソムヌスを倒すためには寄生主であり回復防御魔法を使うエル様を先に殺さねばならない。
明日、総隊長から計画が話されるが、、、。
計画ではまず最初に、俺が1人でエル様に会い、一緒に死ぬ。」
デュオとトリーは驚いた。
死ぬ一択の計画なのか。
「エル様がソムヌスより先に死ななければ、我々はソムヌスに勝てない。
エル様は回復魔法と防御魔法を使ってソムヌスを守ってしまうからだ。
でも俺がいればエル様は苦しみが無くなり、ソムヌスの麻薬がいらなくなる。
だからもうソムヌスに対して回復防御魔法を使わなくなる。」
息子のデュオは驚いた。父親ウーヌスが「エル様は今も自分を愛している」と確信していることに。
ウーヌスは話を続けた。
「まず最初に、俺がエル様に自死をお願いする。
自死してくださったら、介錯で俺がエル様の首を切る。
そしてデュオ、お前は俺の次に腕が立つ。
俺が失敗したらエル様をお前が殺してくれ。
母親であるエル様は40年前に死んだのだ。
あれは植物に乗っ取られた抜け殻だと思え。
心臓を前から刺すのだ。
デュオも失敗したらトリー、お前がエル様をやれ。
心臓を後ろから刺すのだ。角度は後で教える。
エル様が死んだら、爆薬と油でソムヌスを総攻撃して、最後は何もかも黒炭にする計画だ。」
デュオはヤレヤレと肩をすくめて見せた。
「何で俺とトリーが水色の髪と目なのかわかったし、オヤジが責任とって死ぬのもわかった。
絶対にエル様を天国に連れてってくれよ。
子供と孫に尻拭いさせんなよな。」
と、軽口を叩いた。
ウーヌスは肩の力が少し抜けたように、戦いの後のことを話した。
「城のものたちには、孫はトリー1人と伝えてある。
港町の兄姉は赤毛だし、何かあっても言い逃れられるだろう。」
トリーは大好きな祖父ウーヌスが死ぬのは嫌だったが、ウーヌスが恋人エル様を天国に連れて行ってあげるべきだと思った。
そして、こんな時でもツェーン姫のことを考え、ツェーン姫と俺がイトコとか親戚だって言うなら身分差も無いし、俺と結婚してもいいんじゃないかなと考えていた。
トリーはこの戦いで自分が生き残ると信じていた。




