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麻薬寄生植物ソムヌス 〜祖母殺しの英雄〜  作者: みずのと うさぎ
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老騎士エジスが語る恐ろしい記憶

「お前は逃げていたから知らないだろうが。

 出産の後、エル様は、不倫相手のお前と不義の子は死んだと聞かされて、正気を失われた。」

 

 ウーヌスは驚いた。エル様は城で穏やかに過ごしていると思っていたからだ。

 

「前王はエル様を妻としては愛していなかったが、とても大切にされていた。

 お若くて美しいエル様が狂ったまま痩せ細って死ぬことに大変同情された。


 そこで、薬草研究所でまだ実験段階だった麻薬を出す寄生植物をエル姫の首の後ろに植えることを許可された。

 寄生植物は寄生主の血を吸って麻薬を出すのだそうだ。

 反対する者もあったが前王が苦渋の決断をされたのだ。


 麻薬を出す寄生植物のおかげでエル様は苦しみから救われ、美しくお優しいエル様に戻られた。

 だがそれも長くは続かなかった。種の保存って知ってるか?」

 

 ウーヌスは首を横に振った。

 

「学者が言うには、あらゆる生き物は自分の種を残そうとするんだそうだ。

 エル様の後頭部から体内に根を伸ばした麻薬寄生植物も、種を増やそうとし始めた。


 麻薬寄生植物は種を飛ばして、城の中の鳥や犬猫に寄生し、さらにその鳥や犬猫が次の種を運び、山や森の動物にまで寄生主を増やしていった。


 寄生された動物たちは血を吸われて体を乗っ取られて、ろくでもない怪物になって、城の中の人や城下町の人を襲い始めた。

 宿り主の動物が死んでも、寄生植物は血を栄養にして、死体の血が無くなるまで動き続けた。」


 ウーヌスは信じられない話に、悪い夢を見ている気がした。

 エル様と不倫した俺を怖がらせようとして、こんな馬鹿げた作り話をしているのではないかと疑った。


 昔から薬草で栄えたこの国の叡智の結集である薬草研究所であれば、そんな寄生植物を栽培研究していても不思議はないが、植物を人の首に植えるとは。それもエル様に。

 

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