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204_真里姉といつもの光景


 クランの皆が揃ったところで、私はしばらくMebiusを離れていた理由を語ることにした。


 ジェイドさんを気に掛け、塞ぎ込んでたのは知られているしね。


 ただ現実の私に繋がる部分が多く、伏せざるを得ない部分もあるけれど……。


 真人と真希に、事前にどこまで話していいか相談しておいてよかった。


 私一人なら、ありのままを全部話していたかもしれない。


 伝えたのは、ジェイドさんと私が現実で知り合いだったこと。


 その時の縁でジェイドさんはMeibusを始め、私のためにゼノアとリベルタで奔走し、最期は命懸けで幕引きをしたこと……文字通り、命を懸けて。


 縁者の方から事実を知らされ、その深い想いと向き合うための時間が、私には必要だったことも添えて。


 話し終わったものの、皆黙ったまま口を開く気配がない。


 沈黙が気になり始めた頃、空気を変えるように大きく息を吐き出し、おもむろにアイテムボックスから酒瓶を取り出したのが、ルレットさん。


 見覚えのあるそのお酒は、以前リベルタの街を散策している時に買ったものだ。


 すると意図を察したらしいカンナさんが、綺麗な漆塗りの盃を人数分取り出す。


 ルレットさんが三つの盃をお酒で満たし、残り一つには離島で飲んだヤシの実のジュースを注いだ。


 ジュースが誰の分かは、言うまでもない。


 盃を持ち上げた三人に倣うと、マレウスさんが声を上げた。


「ジェイドに!」


「オジ様に!」


「ジェイドさんにぃ!」


「っ! ……ジェイド(御影)さんに!!」


 順に言い終え、盃を傾け飲み干す。


 その後ジェイドさんを(しの)んだ会話をしていると、カンナさんが思い出したように告げた。


「そうそう、忘れていたわ。リベルタの混乱を収めたことに対する、恩賞が決まったの。ワタシ達はリベルタでしか採れない希少な素材にしたのだけど、マリアちゃんだけ別らしいわ」


「私だけですか?」


 リベルタで活躍したのは、皆であり私個人に限ったことではない。


 態勢を立てお直せたのはグレアムさんのおかげだし、レオン達相手に獅子奮迅の活躍をしたのルレットさんだ。


 それを支えたカンナさんやエステルさんに、文字通り盾となってモンスターの猛攻を凌いだマレウスさん。


 誰かが掛けても、あの結果には至れなかったと思う。


 強いて最も活躍したというなら、それはやはり……。


「そこで喜びが先に来ぬあたり、お主らしいな」


 どこからともなく聞こえる、威厳を伴った声。


 いや、その声によって()()()()()()言っているのかは明白なんだけれど。


 小部屋へジト目を向ける私とは対照的に、目をキラッキラにさせるカンナさん。


 案の定、扉が開き中から現れたのは王様だった。


 今回もまるで狙っていたかのような登場の仕方。

 

 まさか再び神託が下ったりしていないよね?


「お主が来たら連絡を入れるよう、カンナに頼んでおいたのだ」


 そんな疑問を見透かしたかのように、王様が手の内を明かす。


 以前より控えめな理由に安堵しつつ、なんとなく釈然としないのはなぜだろう?


 少し考え、カンナさんのはしゃぎ様に()()()()感じがしたからだと思い至る。


 いやいや、ただ知らせただけなのにそんな印象を持つのはよくないね……本当に()()知らせただけですよね??


「お主の恩賞が別扱いの理由だが、リベルタを通じ個人の意志が優先されたからに他ならぬ」


 皆が活躍したあの戦いで、国から個人の意志を尊重される程活躍した人といえば、思い当たるのは一人だけ。


「察しの通り、ジェイドという者が予めシャヘル・ヘレルへ伝えておったのだ。曰く『今回の一件でおれに対し何らかの褒美や評価が与えられる場合、それが利するものであれば全てマリアの嬢ちゃんに託したい』とな」


「ジェイドさん……」


 ジェイドさんがMebiusを始めたのは、私を想ってのこと。


 けれど私は、その想いの深さをまだまだ分かっていなかったのだと痛感させられた。


 涙腺が緩みそうになるのを、必死に堪える。


 ここで泣いたら、不安になってゆっくり休めないだろうからね。

 

 強引に心を鎮め、一呼吸してから王様へ顔を向ける。


 王様は満足そうに頷き、懐から直径二十センチ程の四角い箱を取り出した。


「受け取れ。お主にしかできぬことだ」


 少しの間目を閉じ、差し出されたそれを受け取る。


 ありがとうございます、ジェイドさん。


 心の中で呟き、これまでの出来事に想いを馳せそっと箱を胸に抱く……が。


「で、一体何が入っているんだ?」


 マレウスさんの発した無遠慮な一言に、場が凍る。


 皆も感じていたであろう、情緒や余韻諸共に。


「マ〜レ〜ウ〜スちゃ〜ん」


 地の底から響くような声が、カンナさんの口から漏れる。

 

「言い遺すことはありませんよねぇ」


 凄絶な笑みを浮かべ、ルレットさんが問い掛けながら断定する。


「今のは余でも庇えぬな」


 王様までも続いたことで、マレウスさんがようやく事の重大さを認識する。


 正確には、その身に及ぶ命の危険について。


「同時と時間差、どちらがお好みですかぁ?」


 逃れられないと悟ったのか、どちらがマシかと検討するマレウスさん。


 結果はあまり変わらない気がするのだけれど、真剣な様子に口を挟むのが憚られた。


 マレウスさんがようやくだした結論は、前者だった。


 どうせ苦しむならできるだけ短時間でと、思ったのかもしれない。


 ただ、そんな甘い見通しを許すルレットさん達ではなく。


「歯食い縛りなさいっ!」


「無駄かもしれませんけれどぉっ!」


 忠告とそれを否定する言葉が発せられた直後、カンナさんとルレットさんの上段蹴りがマレウスさんの頭部を捉える。


「ぬりゃかぺっ!?」


 二人掛かりでの、同時攻撃。


 しかも一度では終わらず、拳、蹴り、拳と連続する。


 最後は盛大に蹴り上げ、天井に抱擁したマレウスさんが床に落下し、終了。


 時間にすれば一分に満たない間の出来事だったけれど、倒れたマレウスさんを一言で表すならボロ雑……満身創痍。


 ただ血文字で『犯人はカン・ルレ』と書いているあたり、意外と平気なのかもしれない。


 ある意味いつも通りな光景に王様が哄笑(こうしょう)し、気が付けば私も笑っていた。


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― 新着の感想 ―
[一言] 更新有り難うございます。 マリお姉ちゃんには笑顔がよく似合う。 カンナさんには微笑みがよく似合う。 ルレットさんには不敵な笑みがよく似合う。 マレウスさんには不幸しか似合わない!?
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