騎士のお悩み相談室④
「・・・」
酒で温まった空気が冷えた
女の一挙手一投足に振り回される男の姿は無く
騎士の顔をしたガウェインが居た。
婚約ホヤホヤで愛する伴侶が狙われているとなれば心中穏やかでは居られないだろう。
「今からそんな顔してどうするよ、ラフィスタ家に対して力づくなんて上手くいくわけないだろ」
「ああ、だが上手くいくいかないの話ではない」
「そりゃあ、そうだがね、陛下と辺境伯で悪巧みしているみたいだから任せりゃ良いんだよ」
「そうか?」
「そうさ、お前が強ばった顔してたら愛しの婚約者も不安になるだろうが」
ガウェインはフと顔を崩し、そうだな、と納得した
ぶっちゃけると教会の現教皇、お金大好き生臭一派は詰んでる。
聖女さんを自陣営に取り込めたから夢見ちゃったんだな
聖女さんは第一王子と婚約出来たし、その聖女さんは何も考えずに教会からの御布施を全部貰ってるし。
何か考えがあるかも知れないけど、城にいた数年間でただの世間知らずの娘って見抜かれている。
陛下から、王子王女から、宰相から
なんなら一番心許している近衛や侍女らから度重なる進言があったにも関わらず、国について貴族についての教育は実を結ばなかった。
「貴族の生活を覚えた庶民」
こんな評価が適切だと思う
似た立場でも神子様は貴族の責務って奴を理解しているのにな
霊薬の大量提供、最高の治癒能力を惜しげも無く使い
神子様の名の元に総合治療院の創設、それに伴う医療の向上。
収入は孤児院への寄付に、医療全般の研究への投資、ラフィスタ領地の各街道の整備事業費。
見事としか言い様がない
舵取りは辺境伯だろうが、慈悲深いと言われる神子マリア嬢の意向が有ったと誰もが思っている。
「ところでよ」
「ん?」
「いつ騎士団辞めるんだ?」
「知ってたのか」
「知ってたっつーか、神子様と婚姻結ぶなら国の中央には居ない方良いだろ」
俺は一応、騎士団の諜報部所属だ
情報の収集が主な任務だけど、根本的な点で言えば情報を元に権力や勢力のコントロールを担っている
俺らが知りうる限りの情報を総合するとガウェインとマリア嬢は王都に居ない方が幸せになれる
ラフィスタ家はマリア嬢の幸せを願っているから、こうなるとは思っていた。
「まあな・・・」
「はー、まさか堅物副団長様が女の尻を追って騎士団を辞めるとは・・・」
「・・・」
「冗談だよ」
「ふ、笑えないな」
お!マジか、此処で笑った上に否定しないとか
俺が思う以上にコイツ首ったけになってね!?
「ま、アッチに行っても達者でな」
「ああ、マルもな」
カチンとグラスを合わせた
ガウェインが辺境に行く前に教会と第一王子、聖女様で一波乱有りそうだが・・・




