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騎士のお悩み相談室①

俺の名前はマルセール、仲のいい奴らは俺の事をマルと呼ぶ

今一緒に飲んでいるガウェイン副団長様も仲のいい奴の1人。

コイツとの付き合いは学校の騎士科入学からになる

堅物として有名なルクシード伯爵家は、やはり真面目だった。

俺みたいな軟派野郎とは違い、寄ってくる女は抱いて遊べば良いというのに、そんな不誠実な事は出来ないと言うのだから。



「マル、お前のお陰でプロポーズを受けてもらえたよ」

「お、おお、マジか」


2年程前から始まった酒場での相談

初めての相談はガウェインが副団長に就任した辺りからだったか・・・






「マル、この後良いか?」

「ん?」

「相談したい事があるんだ」

「へえー、副団長様でも悩む事があるのか?」

「茶化すな、真面目な話だ、お前にしか聞けない」


茶化したが、帰って来たのは堅い言葉だった

どうやら本当に真面目に相談したいらしい


「女か?」

「ああ、酒は奢る」

「ういー、分かったぜ」

「すまん、恩に着る」



酒を呑み、腹を満たし、少し気分が上がってきた頃

ガウェインは言った。


「女性には何を贈ればいい?」


か、かてえ・・・

好きなもん贈ればいいんだよ! 宝石でもやれば文句は出ねえ!とは言いたいがコイツの場合聞きたいのはそういう事では無いのだろう。

俺の知る限り、コイツは女と付き合った事は無い

婚約者も軽い遊びの付き合いも無い

それこそ娼館なんて以ての外だ

女という未知の存在に困っているのだろうと当たりを付ける。


今回、自分からこんな事を口にするくらいにはお近付きになりたい女が居る

そんな友の遅い初恋に、内心ニヤニヤと冷やかしたくなるのを堪えつつ真面目な口調になるよう努めながら聞き返す。


「なんて女だ?」

「名前は言えない」

「いい女なのか?」

「ああ、最高の女性だ」

「ははっ、最高と来たか、庶民?貴族?」

「貴族だ」

「貴族? なら普通に婚約を申し込めばいいんじゃねえのか?」


若き出世頭、真面目で信頼のおける騎士で次男とはいえ伯爵家なら大抵は・・・


「あちらの方が上だし、今はそういう状況ではないから」


聞けば、立場は相手が遥かに上で次女

遠くに居て月イチの文通をする仲

小柄で華奢、大人しいが芯は通っていて派手好きではない

家族に大事にされている。



なるほど。

確かに女を苦手とするコイツの相手としてはピッタリだ

距離感の測れない相手からグイグイ来るよりは、守りたいと思えるタイプの方が相性は良いだろう。

遠距離で文通というのも、ゆっくりと相手の事を知れて尚良い

勝手な解釈だが、女慣れしていない男と男慣れしていない女だとすれば、それも良し。


「ふーん、で、何歳?」


出来るだけ相手の情報が無いと助言しようがない

エールを口に含みながら先を促す。


「13だ」

「ごふっ、・・・なに?」

「13、だ」


・・・・・・・・・・・・そう来たか。


「やはり歳の差は気になるか?」

「あー・・・、いや、大丈夫だろ? 貴族ならままある差だ」


何となくだが酒に釣られて受ける内容じゃない気がしてきたな・・・

俺だってそれなりの女性遍歴は重ねているが、流石に13歳となると困る。

まあ無難に贈るなら、花とアクセサリーか?

派手好きではなくガウェインが気に入るような女となると、お高い宝石やらは逆に気を遣われる可能性が高い。


年齢を考えると花と、安くはなく高くもないアクセサリー類

だが相手の立場が遥かに上だとなれば、やはり高級品一択になるな・・・

今すぐ贈りたいならそこそこの高級品、成人を待つなら超一級品

送り付けるより手渡しの方が喜ぶだろう


あとは「女との約束」は絶対に守る事、記念日も忘れてはいけない

初めて会った日、プロポーズした日、キスした日などだな。


あくまでも一般論だが、と付け加え他にも細々と助言をする。

真面目なガウェインはメモを取り始めた

つうか、なんで21にもなる野郎の事をここまで考えなきゃならんのだ・・・


割に合わないと高い酒を注文してやった。






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