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辺境の神子は静かに暮らしたい。  作者: EVO
第三章 平和、そして2度目の王都。
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神子は困惑した。

「マリア大雑把にいくけど、国外は見る必要無いよ、国内は夜会に何回か参加する都合上、最低限目を通しておいた方が良いものはあるけど」

「はい・・・」

「これから仕分けするから、終わったら部屋に置いておくわね」

「うん・・・」


これらの縁談は神子(わたし)に来ているのであってマリア(わたし)には来ていない。

貴族や王族が名前や地位だけで婚約を結ぶ事もあるとは知っているけど、実際自分に来ると鬱々とした気分になる

神子の立場を理解したつもりではあったけど3歳や50歳まで来ると、ちょっと、いや結構、かなり引く・・・



「で、だ、本題なんだが」

「ほん、だい?」

「これだけでもお腹いっぱいだと思うが、こっちが本命」


父様は執務机から一通の手紙を取り出した

封は切られていない、その手紙に押された封蝋の印は、


「教会?」

「ああ」「ええ」



どうやら教会から私宛ての手紙、珍しい・・・


普段から防犯の為に、私への手紙は全部父様と母様の手によって中身を改められている。

これは誰からの手紙であってもそうしている、毒や魔法的なものの警戒で、私もその事に異議はない。


渡された手紙の封を切り、読む。


「・・・」


んー、うん? うん・・・

やたら遠回しな表現で書かれているけど、言いたい内容は


神子様、教会に所属しませんか? だ。


王都の教会で大司祭を本国から派遣しているから

私の都合のいい時に寄って、お話しましょう。

聖国はとても良い国ですよ、同郷の聖女様も所属しているので安心ですよ、貴女の言う事は全て叶えさせて頂きますよ。


そういった内容が、それはもう山道のつづら折りヨロシク

クネクネと遠回しに書いてある。

手紙は3枚だけど、要件だけ書けば1枚の半分で終わる内容な程に回りくどい表現だ。

最後に、バスクムント・アルセイ教皇より、と締められていた。


うーん、無視、は出来ないよね?

教皇となると、国王みたいな存在だろうし

父様母様に読み終わった手紙を差し出す。

2人はそれをサッと読むと、やはりなと呟いた。


「えっと、どうしよう父様母様・・・」

「教皇からの手紙となると無視は出来ない」

「だよね・・・、王都の教会に教皇の代理として大司教が滞在しているから話しましょう、で合ってるのかな」

「そうね、でも当分放置して良いと思うわ」

「え? なんで、教皇様からの直接の手紙だと早い方がいいんじゃ・・・」

「それは教会に属する者ならその通りだけどね、マリアは教会に入りたいのかい?」

「うーん、積極的に入りたい理由は無いけど・・・」


「なら後回しで良いよ、昨夜デビューしたてでスグに教会側に接触すると、あちらが調子にのるから」


調子に乗るって、父様・・・

まあ強いて言うなら教会はどうでもいいけどね

領地の街にある教会は孤児院も兼ねていて何度か行ったことあるけど、そこの神父さんは白髪の穏やかに笑うお爺さんだった。

いつもにこにこしていて、私が教会に行くと

「いらっしゃいマリアさん、元気にしてるかな?」

と言って頭を撫でて来るおじいちゃんだ。


おじいちゃんからはこれまで教会に入れ、といった話は聞いた事が無い

私が成人してなかったから言わなかったのかどうかは分からないけど

少なくとも今回は即座に教会から手紙が届いたのだから、元々聖国から各教会に通達はされていそうなんだけどね。




「マリア、教会のことは一先ず気にしなくていいわ、それよりも学校を楽しんでらっしゃい」

「そうだね、5年ぶりの再会になるだろう?」

「うん、お茶会とかお出掛けに誘われたりもしてる」

「良いわ、ベルと相談して色々やってみなさい、勿論ウチで開催するなら手伝うわよ」

「うん、ありがとう母様」


「制服は届いているから合わせてらっしゃい、学校は始まってるから1週間以内に好きなタイミングで通い始めるといいわ」

「はーい」


返事を聞いた父様と母様は笑顔で頷いた、話は終わったみたいなのでそのまま私は執務室を出た。





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