ガウェイン②
神子様はとてつもない存在だった。
ハルシオンの片腕と顔の深い傷跡も完全に治した、後遺症もない。
あの部屋には約100人の重傷者が居たのに、1時間足らずで全員を治し切ったと聞いた時には驚かずには居られなかった。
その代償に神子様は魔力欠乏症に陥り倒れた
御礼を伝えたかったのだが・・・
「ガウェイン今回は引け、だが夫人とハルシオンを助けられたとあれば家として何も無ければ沽券に関わるだろう。
陛下とラフィスタ夫人には話を通すから、後は伯爵に任せろ」
「は、ありがとうございます」
ランスロット団長の配慮に感謝する
正式に御礼を伝えられるのならばそれにこした事はない。
それからは何かの縁か
神子様、マリア様と共に居る事が増えた
城内の案内兼護衛の付き人になる、自分の手に重ねられた小さな手はとても華奢で、力加減を間違えば簡単に壊れてしまいそうだった。
北の森では彼女を危機に晒してしまった
襲い掛かって来た魔物を倒してスグにでもドラゴンから離れるべきだった・・・
もしかしたら自分の強い魔法に反応したのかもしれない
彼女の死角から迫る大きな岩に肝が冷えた
シルヴィーが覆いかぶさり、俺が更に上に・・・
大岩を受けて鎧が砕け吹き飛ぶ、真っ先にマリア様の元へと思ったが体が動かない
「マリア!」
「くぅーん」
「う・・・」
マリアベル嬢、そしてシルヴィーもマリア様に駆け寄っていた、気を失ってはいるがどうやら無事な様子が見えて安心した。
結局、母、じい、弟に次いで俺も助けられてしまった
ルクシード伯爵家は神子様、ひいてはラフィスタ辺境伯家に頭が上がらないだろう・・・
せめてもの思いで動けないマリア様を運ぶ事を申し出る
軽い・・・
羽のような軽さだ、肩も細く、今更ながらただの少女の身という事を理解する
腕の中で眠る彼女は土と煤に汚れているが何よりも美しいと思えた
夜会等で着飾る令嬢よりも遥かに気高い存在
自分の中に複雑な感情が生まれたのを感じる。
神子様である彼女が特別であるという考えと、普通の少女であるという考えが・・・
矛盾しているとは自分でも思う
だが、やはり彼女は特別な存在なのだろう
神子様の力なのか?
きっとそうだ。
でなければ、こんなにも離し難いなどと想う事は無いのだから・・・
その想いがどういったものなのかガウェインは未だ気付かない
マリアを見つめるガウェインを
マリアベルとゴードン達が観察していた事にさえ気付かない程には気になりだしていたのも事実である。




