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辺境の神子は静かに暮らしたい。  作者: EVO
第二章 神子、王都へ行く。
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神子、危機一髪。

「お嬢、どうです?」

「多分、行けると思う」

「分かりました、周りは固めてあるので安心して下さい」

「うん」


私は王都の北の森に来ていた

と言うのも、この北の森は討伐の完了した土地だったのに

最近魔物が増え出し、瘴気が溢れ出したのだ。


私が近付けば瘴気は消えるだろうと怪我から回復した騎士100人とラフィスタ家の討伐部隊ゴードンさん達、ベル姉様と私が現場に来てみると確かに魔物が居た。


瘴気はとても濃く、自然浄化では追い付かない

私は初めて瘴気を見たけど、ゴードンさん達によれば濃すぎるとの事だ。

ひとまず森の探索に入る前に浄化してみる

身体にはねっとりと絡み付くような重さがある

そんな重い空気を消し、綺麗になる事を祈りながら魔力を込める


「浄化の風よ」


サアアーと心地いい風が頬を撫でると周囲の重いものが消えていった。


けど、


「森の奥の方が・・・」

「恐らく瘴気の発生源がありますね、これだと直接浄化しないと」


そう、確かに周囲の重い空気は消えたのだけど

森の奥の方に目をやると暗く重たい空気が澱んでいるように見えた。



騎士団はランスロット団長さんを指揮に、副官には上級騎士の中からガウェインさん

そこに討伐隊隊長のゴードンさんと副隊長のトーマスさんで1度話し合いが持たれた。

その結果、森の奥まで直接私が行って瘴気の発生源を浄化する事になった。


騎士100人と辺境討伐隊の精鋭20人が居れば十分可能との判断だ。


「マリア、私が護るけど危なくなったらスグ逃げるのよ」

「うん、ありがとう姉様・・・」

「シルヴィー、何かあったらマリア乗せて家まで真っ直ぐ帰りなさい」

「わふっ」


姉様が心配するのには理由がある

私は辺境伯領地で討伐隊に参加はしていたけど直接戦闘する部隊にはついて行かない

つまり森の中に入ったことが無い。

それは部隊に同行する際の父様との約束だったし

森の手前のキャンプまで行けば、神子の自然浄化力で瘴気は十分浄化出来たからだった。


今回は瘴気が濃く、しかも発生源が森の奥

自然浄化が間に合わない以上は私が直接発生源まで行って浄化しかない。




森の中に入ってもそれ程魔物は出て来なかった。

元々討伐の終わった土地だから、新たに瘴気が発生したばかりで数も強さもそれ程でないとか

順調に浄化しながら奥へと進む・・・


私を中心に隊列を組み、姉様とシルヴィーは傍に

団長のランスロットさんとガウェインさんも居る。

ゴードンさん達討伐隊の最精鋭は先頭を進む

他の騎士さん達はそれぞれ森の中を遊撃したりで散発的に魔物を倒していた。


2時間程歩いただろうか

偵察をしていた騎士さんが戻って来て報告した


「毒の沼地から瘴気が湧き、黒トカゲが」

と話しているのが聞こえた、毒の沼地から瘴気・・・


「姉様、毒の沼地って周囲を浄化したら普通消えるんじゃ・・・」

「そうよ、普通ならそうだけど、違うのかも・・・」


私が習っていたのは、瘴気が濃い事で毒の沼地が発生する

瘴気

それを一定以上祓いきると沼地は存在出来なくなって数日後には自然と消える、というもの

だけど、この状況だと毒の沼地から瘴気が生み出されている、因果が逆転している事になる。



どこか嫌な予感がした・・・



「ガウェイン、俺は前で指揮を執る、お前はマリア様から何があっても離れるな、最悪炎で森ごと薙ぎ払っても構わん」

「はっ!」


ランスロット団長さんは前に出て行く

拓けた沼地の中央には大きな黒トカゲ

トカゲと言ってもその体躯は数cmなんて生易しいものでは無かった。


恐竜


そう形容するに相応しい、数mの大きさのドラゴンと言っても良い魔物が既に討伐隊であるゴードンさん達と戦闘を繰り広げていた。


毒の沼地は凍り付いている、魔法よって凍らせ足場を確保したようだ。

多少滑るけど、沼に足を取られるよりは断然マシ、という判断らしい。


ドラゴンの周囲では騎士さん達が3m位のワニと戦っていた


「浄化した方が良いかな・・・」

瘴気が薄くなれば実質魔物は弱体化する、それが瘴気の発生源である毒の沼なら余計に


「いえ、止めた方が良いかと」

「え?」

「この規模を浄化となるとかなりの魔力を練る事になります、下手をすると魔物の気を引いてしまって此方に全部来てしまう可能性がありますから」

「強い魔力を使うと・・・」


ガウェインさんの話を聞いて驚く

これまで森の中に入らないにも関わらずゴードンさん達が私の護衛として父様が2部隊も拠点に置いていたのはそういう事だったのか・・・



「ウウウウ・・・」

「シルヴィー?」

「ガウッ!ガウッ!」

「まさか、魔物がっ!?」


隣のシルヴィーが唸り吠えた、沼地ではなく森の方に向かって威嚇する様に私の前に出た


と、茂みから真っ黒な狼が突然飛び出して来た!


「ふっ!」

スパンと姉様が狼を切り伏せる

周囲からはザザザと黒い影が複数走り回っていた。


音と影から察するに少なくない数の魔物にいつの間にか囲まれていた。





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