王との謁見
国王と謁見をしたい。
その望みを叶えるには、まずはこの街でそれなり以上の人物に協力してもらわなければならない。
いきなり王城に行って謁見を申し出ても、普通なら信じられないだろうし、信じてもらえても時間が掛かり過ぎる。
と、いうことで王都に一泊した俺達は朝からレジニシオン商会を訪ねた。
「こ、これはこれはタイキ様! ようこそ、レジニシオン商会王都第二支店へ!」
運良くすぐにディエゴを発見出来た。ディエゴは揉み手をしながら店の奥からすっ飛んで来る。
「本日は何がご入り用でしょう?」
ニコニコしているディエゴに、俺は開口一番本題を切り出した。
「国王陛下に会いたいのですが……それも出来るだけ早急に。レジニシオン商会の力で何とかなりませんか?」
「お任せください! 国王陛下ですね! 在庫あるか確認して参りま……っ!? こ、国王陛下!?」
ディエゴは恐ろしいことを叫ぶと、ひぇっと驚愕する。
「え、謁見をしたい、ということで? い、いやぁ、我々も流石に陛下との謁見は取り扱っていないものでして、いやなんともはや……」
パニック状態のディエゴを不憫そうに見て、エイラが口を開く。
「た、タイキ様。先日も申したことで恐縮ですが、通常、王との謁見は順序を踏まねば中々叶いませんし……」
「分かってはいるんだけどね。正式な手順を踏むと自分達が何者かが広まっちゃうし、時間も掛かりそうだし……」
エイラの言いたい事もわかるが、天空の国から来たと知られたくないから、裏から手を回せないか考えているのだ。
派手に行くなら空からロボット数十体を降らせて大名行列みたいなノリで王城に向かえば、それはそれは早く謁見も叶うだろう。
しかし、そんなことをすればどう思われるか分からない。下手をしたら軍事的圧力だの挑発行為だのと受け取られかねない。
なので、出来たら隠密に、されど許可を貰ってから謁見したいのだ。
と、俺とエイラがこそこそ話していると、店の奥から今度は支店長のラービアが現れた。
「おぉ、タイキ様! ようこそ、いらっしゃいました。なにか、ご入り用ですか?」
完璧な営業スマイルを浮かべるラービアに、ディエゴが恐る恐る顔を寄せて何か伝える。
「っ!?」
そして、ラービアの顔が固まる。
「……え、謁見、ですか……」
小さく呟いたラービアは、暫く何か考え込むように視線を下げ、やがてこちらを向いた。
「我々を頼っていただいたことは商人冥利につきる、といったところですが、はてさて謁見については……」
悩むラービアに、俺はダメ元で攻勢に出る。
「もし謁見が叶うなら、我が国はレジニシオン商会を御用達、つまり取引指定商会とします。この近辺で何かを買う時は、必ずレジニシオン商会を通すことにしましょう」
そう言って二人の反応を見ると、二人は目を見開いて口を開閉させていた。暫く餌を求めるコイの真似をした二人は、やがて覚醒する。
「か、か、必ず、謁見出来るように致します!」
「わ、私は商会長に話に行きますよ!」
「あ、待ちなさい! 私が話します! こら、ディエゴ!」
人生最大の好機とでも捉えたのか、二人は全速力で何処かへ走って行ってしまった。
「……タイキ様。天空の国は大規模な輸入なんてしていなかったような気が……行商人のフンダートさんとくらいしか取引は無いのでは……?」
「フンダートさんも品物を仕入れるのに四苦八苦してたから、丁度良いかもね。まぁ、ちょっと商売みたいなこともしてみたいし、空輸とかやってみようか」
笑いながらそう言うと、エイラが難しい顔で唸る。
「く、くうゆ?」
頭を捻りながら悩むエイラに笑い、俺はユーリに顔を向けた。
「さて、大きな商会の協力と、あとは大国の名前を借りれたら何とかなりそうだけど、どうですかね?」
そう尋ねると、ユーリは目を一度瞬かせてから口を開く。
「天空の国では無く、我が国の名をお使いになるのですか?」
「あるかどうかも疑わしい謎の国より、確実に存在する遠い異国の美姫の方が、王様も会う気になりそうでしょ?」
笑いながら告げると、ユーリは目を細めて口元を隠した。
「タイキ様にそう言われましたらお断りも出来ませんね。うふふ」
何処か楽しそうなユーリと、少し寂しそうなエイラ。
二人の対照的な顔に首を傾げつつ、最後にアイファを見る。
「ここからは、ちょっと強引にいくかもしれません。アイファさんとA1が頼りですが、大丈夫ですか?」
確認すると、アイファは無表情に頷いた。
「私一人でも何とかしてみせるが、タイキ様のゴーレムが一緒ならば、一日でこの街を滅ぼしてみせよう」
「何で滅ぼすんですか……」
好戦的なエルフの言葉に、俺は脱力して呟いた。




