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天空の城を貰ったので異世界で楽しく遊びたい  作者: 井上みつる/乳酸菌/赤池宗


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街の内外の温度差

 王都に入るのは意外にも簡単だった。


 毎日かなりの数の人間が出入りするのだから、最低限のチェックしか行わないのかもしれない。だが、口頭や持ち物による出身国と入国目的の確認、通行料の銀貨一枚だけで入れるのは国防的にどうかとは思うが。


 門の周りや奥にもがっちりと装備を固めた兵士達が立っているし、金にモノを言わせた戦力があるから大丈夫なのだろうか。まぁ、周りの国からこれだけ商人が来る国なら経済が第一優先なのかもしれない。


 そんなことを考えながら門を通過し城壁の中に入ると、その景色に圧倒された。


 手前には二階建ての石造りの建物が並び、城壁側には所狭しと露店が立ち並ぶ。その周辺には多数の人々が行き交い、賑やかな喧騒が街を支配していた。


 石畳の綺麗な道を踏み締め、辺りを見回す。


 パッと見ただけでも鎧姿の兵士やローブ姿の商人、獣人やエルフまで様々な人々がいる。服装も多種多様で面白い。


 そして、その近くの景色とは別に、建物の奥、王都の中心に向かって段々に背の高い建物が頭を覗かせている。


 王都の中心が丘の上のように盛り上がっているという話だったが、何も知らずに見れば遥か遠く、中心に聳える王城が恐ろしく巨大に感じることだろう。


 ただ、地位も金も無い者にとってはその場所は遠く、手の届かない所から見下ろされているような気分になるのかもしれない。


「……タイキ様?」


 そんなことを考えて立ち止まっていると、エイラに声を掛けられた。振り向くと、皆がこちらを見ている。


「何かありました?」


「いや……中々面白い街の形だと思ってね。中心部にはどうやって入るんだろう?」


「正面の頑丈そうな建物が内へと続く入り口になっているのではないでしょうか。ただ、内側に入る人は王侯貴族と沢山のお金を持っていらっしゃる方々ですし、中に入るにはしっかりとした検査を受けないといけないかもしれませんねぇ」


 困ったような顔でユーリが答えた。


「ああ、別に貴族街に行こうなんて思ってないから大丈夫だよ。とりあえず、そこの屋台に行って良いかな?」


「はい、是非見てみたいです」


「どんなものを売ってるんですか?」


 ユーリとエイラの二人は興味津々で屋台の方を見る。肉を焼いているらしく、香ばしい匂いが食欲をそそる。焼き鳥のように串を刺して焼いているが、味付けは塩くらいしかしていなさそうだ。


 肉を焼く中年の男は意外にも裕福そうな出で立ちをしている。もっと軽装の、屋台っぽさのある人が焼いているのかと思っていたのだが。


「すみません。それ一ついくらですか?」


 そう声を掛けると、男は肉を焼きながらこちらを見た。俺を見て、エイラ達を見る。そして最後にアイファとA1達を見て目を瞬かせた。


「……お、あ、ああ、はい。これ一本で銅貨五枚ですが……」


 明らかに動揺している風の男を横目に、俺はエイラを振り向く。


「十本くらい買っても大丈夫かな?」


「十本、ですか? その、お金はまったく問題ありませんが、そんなに食べられるのか……」


 戸惑うエイラに苦笑を返し、屋台の男に向き直った。


「十本ください」


「あ、す、すぐに用意しますんで……!」


 注文すると、男は慌てて焼けた肉を確認し、こちらに渡してくる。エイラが二本受け取り、ユーリも二本受け取った。


 残りが焼ける間に銀貨で支払いをすると、アイファが気をきかせたのか四本器用に受け取り、俺は最後の二本を受け取る。


「あ、ありがとうございました。また是非どうぞ」


 深々と頭を下げる男に、会釈を返して応えた。


「はい、ありがとうございました」


 肉を両手に持ったエイラ達と屋台から離れ、疑問を口にする。


「なんか、あのおじさん緊張してた?」


 誰にともなく尋ねると、アイファが頷く。


「護衛にエルフの魔術師とゴーレムを雇えるような貴族か富豪と思われたのだろう。あながち間違いではないが」


 アイファは肉の串を両手で持って真面目そうにそんなことを言った。


「……村より人口の少ない国だけどね」


 そう言って苦笑を返すと、アイファは何も答えずにこちらを見てくる。いや、だって天空の国は人口十人だもの。


 そんなことを思って自嘲気味に笑い、エイラに顔を向けた。


「ちょっと外に行きたいんだけど、良いかい?」


「外? あ、まさかタイキ様……」


 エイラはそれ以上は何も言わず口を閉じ、困ったように笑ったのだった。


 だが、アイファは僅かに眉根を寄せて、こちらを見る。


「……多少の施しをしたところで、外の生活は改善しないかと」


「そうなんですけどね。ただ……」


 そう呟きつつ、街の中を改めて眺めた。


 先程までは初めて生で見る異世界の街並みに感動していたが、一旦落ち着いてしまえば見方は変わる。


 街の外と中に差があり過ぎるのだ。それ故に、まるでこのワクワクするような珍しい街並みも、ガヤガヤと活気のある賑やかな人々も、何処か作り物めいて見えてしまう。


 街の本当の姿は外のように暗く沈んでいて、それを一部の者が誤魔化す為に張りぼてで飾り立てているような気持ちになってしまうのだ。


 勿論、この街のどの姿が本物などという事は無く、単なる表と裏の景色でしかないのだろう。


 しかし、そのことで素直にこの街を楽しむことが出来ないのも仕方のないことである。


「……さぁ、偽善を成しに行きましょうかね」


 乾いた声で笑いつつそう告げると、アイファは何も言わずに静かに頷いた。






 門番の兵士達に怪訝な目で見られながら街の外に出て、先程の子供の下へ向かう。


 やっぱり、あのパンも盗られちゃってるだろうなぁ。


 そんなことを思いながら歩いていると、子供の倒れていた場所に人集りが出来ていた。


 集まっているのは殆どが子供のようである。


「おや? なんか人数が……」


 立ち止まってそう呟くと、子供達が一斉にこちらを向いた。子供ばかりとはいえ、多人数に見られると妙な威圧感を感じてしまう。


 どうしようかと思っていると、子供達はアイファやA1を見て小さく呻いた。


「……うっ」


 明らかに怯えている。まぁ、いつも怖い顔をしているアイファや大きなA1とかを目の前にすれば怖かろう。


「ああ、君達に危害を加えるつもりは無いよ? ちょっと、そこの子供に用があって……」


 そう言って両手を広げて無害であるとアピールしたのだが、今度は子供達の目が俺の両手へと釘付けになってしまった。


 そういえば、俺たちは揃って両手に肉を持った変な集団だった。そして、子供達は明らかに毎日の食事に困っていそうな身なりである。


 肉、配らないとダメだよね。でも、絶対に足りないよね。


 よく分からない思考に陥って固まっていると、今度は子供達の奥から黒いローブを着た女性が出てきた。なんか、教会のシスターっぽい格好だ。


「あ、あの……申し訳ありません。子供達が失礼な態度を……」


 シスターはそう言いながら、青い顔で子供達を庇うように立ち、俺達が肉を両手に持っていることに気が付いて動きを止めた。


 ……これどうしたら良いんだろう。



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