表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天空の城を貰ったので異世界で楽しく遊びたい  作者: 井上みつる/乳酸菌/赤池宗


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

66/127

即席エルフ村

 馬車の窓から顔を出し、メーアが声を上げた。


「あった! あそこ!」


 メーアがそう叫ぶと反対の窓から二人のエルフが顔を出して前を見た。眼前には馬車を担ぐロボットの腕の一部と後方に流れていく大地、そして薄い茶色の原っぱに簡易テントが幾つも並んでいる。


「もうあんなに……!」


 男のエルフが弾むような声でそう言った。


 テントやその周囲に並ぶ馬車の近くにはいたるところに人影があり、その全てがエルフのようである。


 喜ぶ二人のエルフを見て、馬車の中で大人しく座っていたトレーネも頬を緩めた。


 程無くして、メーア達を乗せた馬車は他の馬車の近くに降り立ち、そこへエルフ達が集まってくる。


「リット! シャル!」


「お前達も無事だったか!」


 そんな声が響き、馬車から二人のエルフが飛び出して行く。


「テュルク! もう何年振りになるのか……!」


「はは! ははは! 夢のようだ!」


 背の高い男のエルフがそう言って笑うと、リットと呼ばれたエルフは目に涙を滲ませて頷いた。


 そして、テントの奥から小走りに現れた女のエルフを見て、シャルが大きな声を出して走り出す。


「お母さん!」


 そう叫んでシャルはそのエルフに抱きついた。抱きつかれたエルフも涙を流し、シャルの肩に手を乗せる。


「シャル……元気そうで良かった。また逢えるなんて……」


 感動の再会の場面に、馬車から降りてきたメーアやトレーネももらい泣きしてしまっている。


 そして、馬車を運んできたロボットは静かにその様子を見守っていた。





【タイキ】


「感動しますね、タイキ様……」


 鼻をすすりながらそう呟くエイラに頷き返し、口を開く。


「そうだね。それにしても、あの二人は姉妹なのかな? あんまり年の差は無さそうな……」


 そう口にすると、エイラは困ったように笑った。


「私はエルフの方の年齢を判断出来ません。あんなに若々しいのにお爺様と同じ年齢の可能性もありますし」


 そんな言葉を聞き、改めてエルフが長命であることを認識する。


「そうか。それにしても、どう見ても二十代に見えるのに六十代とかだったら吃驚するね。ん? それだと、あの十代後半に見える子も、もしかして俺より年上かもしれないのか」


 エルフ恐るべしである。内心驚嘆しながらスクリーンに映る景色を眺めていると、スクリーンに映るエルフ達が揃って同方向に顔を向けた。


 ロボットもそちらに体の向きを変え、スクリーンの映像は流れるように景色を変える。


 そこに映し出されたのは、新たな空飛ぶ馬車とそれを持ち上げて浮かぶロボットの姿。馬車の窓からはエルフの他にラントとシュネーの姿があった。


「ラントさん達も来たね。帝都から離れている街からだから少し時間が掛かったけど、皆元気そうだ」


 そう一安心していると、それまで黙っていたヴィオレットが目つきも鋭く低い声を発する。


「……アブラウの街から帝都まで半日……もう驚くのも疲れましたねぇ……」


 その言葉に、何故かエイラが頷いて答えた。


「ここ数日で、帝国の力をもってしてもタイキ様には敵わないと理解出来たでしょう。さぁ、帝国の為にも、最後のエルフの方の居場所を教えてください」


 エイラがそう告げると、ヴィオレットは肩を竦めて首を左右に振る。


「……さて、私が知らないことをどうやって喋れというのかしらねぇ? それに皇帝が諦めないなら結局争いは避けられない。私が手を貸そうが貸すまいが、何も変わらないでしょう?」


「う……そ、そんなことはありません。例えば、将軍である貴女が和平を提案すれば、皇帝も多少は意見を軟化させるやも……」


「ありえないでしょうねぇ」


「あぅ……」


 僅かに苛立ちを感じさせる物言いに、話を振ったはずのエイラの方が萎縮してしまっている。


 その様子を見かねて、俺は口を開いた。


「例えば、俺が皇帝に直接和平を持ち出した場合はどうですか? 皇帝にこの城を譲ることは出来ませんが、交易などで帝国に利益をもたらすことも出来るでしょう。争うよりも余程お互いの利益になると思いますが」


 そう尋ねると、ヴィオレットは暫く黙考する。


 何気なく観察してきたが、やはりヴィオレットは何処かこちらに距離を置いているようだった。


 それは帝国の将軍としての地位からなのかは分からないが、やはりこちらに協力する気は無いようだ。


 そんなことを考えていると、ヴィオレットは静かに口を開いた。


「……分かりました。ならば、そちらの要望を記した書状を用意してもらいましょうかねぇ。私が直接陛下の下へ持って行きましょう。結果は保証しませんが……」


 ヴィオレットはそう答えて、じっとこちらの様子を見つめる。


 その視線に若干の居心地の悪さを感じながら、頷き返す。


「それならすぐに用意しましょう。ただし、こちらがエルフを全員解放してからとなりますが」


 俺の答えを聞いたヴィオレットは僅かに口の端を上げて「分かりました」と返事をした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ