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天空の城を貰ったので異世界で楽しく遊びたい  作者: 井上みつる/乳酸菌/赤池宗


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こっそりと

天空城は予定通りに発売されますが、一週間建国記③は諸事情により発売が延期となってしまいました…


【ヤヌアル】


 ユーリの様子がおかしい。


 あの空飛ぶ島から帰ってから一週間。僕とディツェンは多少落ち着いてきており、空飛ぶ島の技術について議論などもしているのだが、ユーリは逆にそわそわと落ち着きを失っているようだ。


 いや、落ち着きを失ったのは昨日からだっただろうか。


 一人でいる時も気付いたらにやにやと笑みを浮かべているし、食事の際にも思い出したように「うふふふふ」と声を漏らして笑っている。


 はっきり言って気持ち悪いが、なぜ上機嫌なのかも気になる。


「気持ちわ……いや、何を上機嫌に笑っているんだ、ユーリ?」


 そう尋ねると、夕食を食べ終わって食後の茶を飲んでいたユーリが顔を上げた。


「さて……上機嫌に見えましたか? うふふふふ」


「見えるぞ。物凄く気持ちがわ……いや、機嫌良さそうだぞ」


 そう言うと、ユーリは首を傾げる。


「あら。それはこの料理が美味しかったからかもしれませんね。ほら、赤バナナのスープも美味しい。ねぇ、ヤヌアル兄様?」


「いつもと変わらんと思うが……」


 そんなやり取りをして、僕はユーリと別れた。


 自室へと帰っていくユーリを見送ってから、急ぎ足でディツェンの下へと向かう。


 城の外壁側にある術師の実験場に隣接したディツェンの家に着くと、重い扉を叩いた。


「ディツェン! ディツェンはいるか!?」


 声を張り上げて扉を叩いていると、暫くして中から扉が開かれた。


「……殿下。もう良い子は寝る時間ですが……」


 開口一番に怨めしそうな顔でそう言われ、頭を下げる。


「すまん。だが、事は一刻を争うのだ」


 そう告げると、ディツェンの目が細く尖った。


「……もしや、天空の国の招待状が」


「いや、そうとは限らんが、可能性は高い」


 ディツェンは一歩下がり、家の中を指し示す。


「お入りください」


「ああ」


 中に入ると、室内のオイルランプの灯りと金属の錆びたような臭いが僕を出迎えた。近くを歩くとディツェン自体からも金属と油、石の独特な臭いがする。


 だが、パッと見した限りでは室内には本棚やテーブル、椅子や棚といったものしか見当たらない。恐らく、奥の片開き扉の向こう側は混沌とした有様となっていることだろう。


 僕はディツェンに顔を向けて口を開いた。


「……再現出来たのか?」


「……それを聞きますか」


 不機嫌そうな顔を見て、思わず吹き出す。あの空飛ぶゴーレムを自ら作り出そうとしているのだろうが、そう簡単には出来ないだろう。


 むしろ、それを作ることが出来たら空飛ぶ島自体の解明にも至る可能性は高い。


「しかし、空を飛ぶ理屈が分からないからな」


 そう呟くと、ディツェンは眉根を寄せた。


「空? あのトイレは空も飛べるんですか?」


「トイレを作ってたのか」


 ディツェンの答えに脱力し、溜め息を吐く。


「ゴーレムの研究は?」


「そちらは……いや、もちろんしますよ? 是非とも研究したいですから」


 ディツェンは心の篭っていない返事をして視線を逸らした。


 確か、天空の国に着いた時はゴーレムについて煩かったはずだったが、トイレに興味を持ってからはトイレ一筋となってしまった。


 実際、あのトイレの使い心地は驚嘆すべきものだったが、トイレよりはゴーレムの方が興味深い。


 まぁ、実際に何か一つ技術の提供を受けることが出来るなら料理のレシピか茶葉を貰いたいところだが。


 と、僕が思案しているとディツェンはそわそわとした様子で口を開く。


「そんなことより天空の国の招待状は届いたのですか? まさか、殿下だけ……」


「そんな目でこっちを見るな、ディツェン」


 そう言ってから、腕を組む。


「その様子だとディツェンも招待状は貰っていないようだな。僕もそうだ。だが、ユーリの様子が少々おかしい」


「ユーリ様が?」


 ギラリとディツェンの目が光った。爛々としたディツェンの眼光から目を外し、僕は首を左右に振る。


「まだ分からないからな? だが、確かにユーリが不自然なほど上機嫌なのは間違い無い」


 そう答えると、ディツェンは目を糸のように細めた。


「……怪しい」


 呟き、外への扉を開けるディツェン。


「む、何処へ行く?」


「ユーリ様の下に……問いただしにいかねば!」


「あ、ああ。分かった」


 もう夜だぞ、とも思ったが、ディツェンの剣幕に負けてしまった。


 だが、ディツェンの言葉にも一理ある。ユーリ一人だけが空飛ぶ島に行ってしまったら悔しい。


 そう思った時、不意に疑問が湧いた。


「……ディツェンに招待状が届いたらどうする?」


「誰にも言わずに一人で向かいますとも」


 間髪容れずにそう答えたディツェンに苦笑する。自分と同じ意見だったからだ。


 じっくりタイキ殿と話すなら、やはり一人で行きたいのが本音だろう。


 まぁ、ディツェンは正直過ぎるが。


 前を大股で歩くディツェンを見てそんなことを考えつつ、二人で足早に帰り道を歩いていると、ディツェンが奇声を発する。


「あっ、ああっ!?」


 空を見上げるディツェンに釣られて顔を上げると、明るい月夜の中に白い何かが浮かんでいた。


 ふわりと揺れる布のようなそれは、月の光を浴びて薄っすらと輝いてみえる。


「ユーリの気に入っていた白いドレスか?」


「ユーリ様とタイキ様のゴーレムですよ!」


「むむ」


 言われてみれば、確かに白いドレスの向こう側にはタイキ殿のゴーレムらしき姿があった。


「まさか、夜に迎えに来るとは……」


「考えが甘かった……夜の方が人の目につかないので騒ぎになり辛い!」


「なるほど。確かに、タイキ様はあまり目立つことはしなさそうな人物だった」


 ディツェンの言葉に納得して頷き、深く息を吐く。


「……仕方ないな。タイキ殿は友好的だったから、またユーリが戻ってから改めて招待状が届くことだろう。それを待つとするか」


「いやいやいや、それはいつですか!? 私は一秒も早く行きたいのに!」


「仕方がないだろう。あの高さはどう考えても間に合わない」


 僕がそう言った直後、ディツェンは慌てて飛翔術を使って空へと飛んで行ったのだった。


次回は物語が進みます…!

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