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天空の城を貰ったので異世界で楽しく遊びたい  作者: 井上みつる/乳酸菌/赤池宗


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戦争の始まり

【城塞都市ファルベ】


 見上げるような巨大な城壁と、物々しい雰囲気を醸し出す大きな門。城壁の上には所狭しと兵が並び、弓を手にしていた。


 王国内部、王都から馬を走らせれば二日で着くほどの距離に城塞都市ファルベはあった。


 街全体を城壁が囲んでおり、街の中は不自然なほど静まり返っている。通りには兵や魔術師の姿はあれど、住民は見当たらない。


 そんな街中で、豪華な鎧を着た男が指示を出しながら歩いていた。


「人手が足りないな。何処からか兵を増員出来ないか?」


「ハイラート将軍。既にこの国境常駐軍も含めて二万の兵がおります。更に、各地に飛ばした伝令が一カ月もすれば二万以上の兵を連れて帰って来るでしょう。一カ月耐えれば良いのでは?」


 疲弊した様子の初老の男がそう尋ねると、ハイラートと呼ばれた男は苦虫を噛み潰したような表情で首を左右に振った。


「ゲルプ卿。長年このファルベを見てきた貴方がこの街の防衛力を信じていることは承知しております。確かに、ファルベは王都と並ぶ最高の防衛力を保持しているでしょう」


 歩きながら同意したハイラートは立ち止まり、ゲルプという男を振り返った。


「ですが、それも帝国の用意した軍を見さえすれば揺らぐでしょう。どれ程準備しても万全などあり得ません。篭城に勝機は無いのです」


「で、では、何故このファルベに各地の兵を集めているのです……? 守り切る自信があるからではありませんか?」


 ゲルプが食い下がると、ハイラートは鋭く目を細める。


「囮と奇襲、そして挟撃の為です。それ以外に、活路はありません」


「そ、そ、それはどういう……あ、は、ハイラート将軍、話を……!」


 不安そうに質問を重ねようとするゲルプに背を向け、ハイラートは城門へと歩いていった。慌ててゲルプが追い掛けるが、ハイラートはもう振り返らなかった。







【帝国軍】


「ヴィオレット将軍! ファルベより返答がありました!」


 馬に乗り槍を手にした騎兵の列の中を走り抜けた兵が、屋根の無い二頭立ての馬車に向けてそう叫んだ。


 馬車の上には白銀の鎧を着た美しい紫色の髪の二十代中頃に見える女の姿がある。青い瞳で兵を見下ろし、女は身長よりも大きな背もたれから身体を起こす。


 紫姫(しき)とも称される帝国軍の将軍の一人であるヴィオレットは、兵を見下ろしたまま口を開いた。


「どんな返答でしょう?」


 優しげな声でそう聞かれ、兵は緊張した面持ちで顔を上げる。


「はい! ヴィオレット将軍殿の言わんとされることは承知したが、それは皇帝陛下の意思なのか確認をして欲しいとのことです! 尚、依然として王女の行方は分からず、王国も総力を挙げて捜索している、と!」


 兵がそう報告して口を噤むと、ヴィオレットは目を細めて口の端を上げた。


「見え透いた時間稼ぎですねぇ。時間稼ぎする必要が無い筈も無いのですが……さては、数日間城塞を攻めさせておいて、背後から? そんな分かりやすい手には出ないでしょうか。理想としては遠征してきている我々の補給路を断つことでしょうが、そんな長期間もファルベが保つとは考えていないでしょう」


 椅子に座り直してぶつぶつと一人呟くヴィオレット。


「……無視できない程度の軍を囮に使い、我々を小分けに処理するつもりですか。戦力差を考えるなら、それくらい無茶をしなければ勝機は見出せません」


 そこまで呟き、ヴィオレットは笑みを浮かべる。


「一か八か……と、言うには随分と厳しい賭けですね。なら、他にも策を講じていることでしょう」


 ヴィオレットがそれきり黙考していると、騎兵の一人が口を開いた。


「ヴィオレット様」


 騎兵がヴィオレットの名を呼ぶと、ヴィオレットは顔を上げて頷く。


「敢えて、軍を三つに分けます。一つはファルベを攻め、一つは王都を攻めましょう。兵力差に物を言わせた強引な攻めですが、手が足りないアツール王国には一番良い嫌がらせになるでしょう」


「なるほど。どう分けますか?」


「ファルベは早急に攻略する必要があります。王都には守りに徹してもらう為に兵を多く見せるだけで良いでしょう。故に各五万ずつ。私は奇襲を警戒して自由に動きますから、ゴーレムは半分ずつファルベと王都に振り分けましょう」


「しかし、それでは魔術師が殆ど出払うことになります。ヴィオレット様のおられる本隊にも魔術師は必要では……?」


 騎兵がそう尋ねると、ヴィオレットは獰猛な笑みを浮かべて手のひらを上に向けた。


 ボウッと音を立てて、青紫色の炎が宙に出現する。炎に照らされたヴィオレットに、騎兵達は息を呑む。


「……私がいますでしょう?」


 ヴィオレットがそう告げると、騎兵は乾いた笑い声を上げて深く頷いた。


「ご無礼を……」


 騎兵はそう口にすると、そっとヴィオレットの乗る馬車の後ろに目を向けた。


 馬車の後を、金属特有の鈍い光を放つ黒い巨人が付き従っていた。


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