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天空の城を貰ったので異世界で楽しく遊びたい  作者: 井上みつる/乳酸菌/赤池宗


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暗躍する者達

 多少は落ち着いたエイラを連れて食堂に戻ると、皆が食堂と厨房を掃除していた。


 俺とエイラの料理も下げられてしまったようで、少し残念に思いながらも皆に声を掛ける。


「ただいま」


 そう声を掛けると、ラントがシュネーに背を押されて歩いてきた。


「さ、先程はすみませんでした。俺の軽率な発言で……」


「あ、い、いえ、大丈夫です。私も、いきなり食事中に出て行くなんて、本当に申し訳ありませんでした」


 二人が謝り合い、俺はホッと息を吐く。そこへ、皿を両手に持ったトレーネとメーアが歩いてくる。


「あの、温め直した、です」


 メーアがそう言うと、トレーネが皿をテーブルに並べながらこちらを振り向いた。


「お二人でお話したいことがあるかと思いましたので、我々は一度下がらせていただきます。またお食事が終わった頃に片付けに参りますので」


 トレーネがそう言うと、ラント達も一礼して出て行ってしまった。


 確かに、エイラと込み入った話をするには有り難いのだが、気が利きすぎである。


 湯気が立った料理や飲み物の入ったコップを見て、エイラと目が合った。そのキョトンとした顔を見て、どちらともなく吹き出してしまった。


 二人で笑い合い、ナイフとフォークを手にする。


「いただこうか。食べたら、詳しい話をしよう」


「……はい」


 エイラは頷き、返事をしたのだった。






【王都の酒場にて】


 三十代程の金髪の男と、それよりも少しだけ若く見える茶髪の男が二人、テーブルを挟むようにして座っていた。


 料理の皿も、果実酒もテーブルの上に並んでいるが、誰も手を付けようとしていない。


 金髪の男が不機嫌そうに二人を睥睨すると、睨まれた二人は無言で顎を引いた。


「……情報は?」


「いや、何も……」


「こっちもあれから進展は無いな」


 二人の返答を聞いて細く息を吐くと、金髪の男は静かに辺りを見回した。客は疎らで、店員もカウンターの奥に引っ込んでいる。


「……空を飛ぶ島、か。王国では全く噂にもなっていないが、帝国ではどうだろうな」


「そろそろ帝国に潜り込んでいる奴らから連絡がある筈だろう?」


「しかし、取り逃がした王女が帝国に行ってたら……」


 二人のうち、気の弱そうな方がそう呟く。


「その時は仕方ない。別の方法でまた帝国を煽るしか無いだろうな」


「王国を煽るのは?」


「無駄だ。帝国相手に戦争を仕掛けるほど馬鹿じゃあるまい。それに、もし戦争を仕掛けたとしても王国から攻めたのでは瞬く間に潰される」


「……理想はやはり、帝国が王国を攻め、王国は守りを固める。それが一番戦争が長期化するか」


「ああ。王国に相当数の兵力を割けば帝国が数ヶ月で王国を落とす可能性もあるが、その時はむしろこちらからしたら有り難いだけだ。帝国の守りが減るんだからな」


 男達が話に熱中していると、酒場の入り口を外から勢い良く開けられる音が響いた。


「て、て、帝国だ! 帝国軍が攻めてきたぞ!」


 スキンヘッドの男がそう叫び、酒場のカウンター近くで飲んでいた二人の男が椅子を蹴って立ち上がる。


「何だと!? この王都にか!?」


「い、いや、国境付近に布陣して戦争の準備を進めてるみたいだ。噂では、傭兵も雇って布陣に組み込んでるって……」


「くそ、それが本当なら本気じゃねぇか!」


 俄かに騒がしくなった酒場の中で、金髪の男は姿勢を低くして酒に口を付けた。


「……どうやら、王女は失踪のまま、みたいだな?」


「ああ。それに、帝国の動きが想像以上に早い。傭兵まで雇って人数を揃えたなら、ただ圧力をかけるだけってことは無いよな?」


「圧力を掛けるだけならゆっくり兵を準備して、時間を掛けて戦力を見せつけるだろうさ」


「何週間と見る?」


「帝国の動きが早すぎる。王国が兵を集めるなら王都と国境の間にある城塞都市ファルベしか無い。王都に最大戦力を残しつつ、三割はファルベに兵力を集中したいだろうな」


「ファルベを無視したら王都での攻城戦で背後を突かれるわけか」


「そうだ。そして、帝国がもし南部の兵を本気で掻き集めたなら、随時兵を投入して一カ月。即座に攻め込んで王国に準備をさせないというなら、一週間後には攻めて来る」


 金髪の男がそう推測すると、他の二人は目を見開いた。


「……そんな早さの兵の運用など聞いた事もない」


「ちょっと待て。国境付近に陣を敷いているという情報は行商人や冒険者から流れたに違いないぞ。そうすると、国境付近から王都まで馬で飛ばしても一週間以上掛かる。もしかしたら……」


「早ければ、もうファルベに向けて進軍しているな」


「こ、こうしちゃいられねぇ!」


「こっちも動かないと!」


 慌てて立ち上がる二人を見て、金髪の男はようやく料理に手を付けた。


 肉の切れ端をフォークで刺して口に運び、急かしてくる二人を見る。


「落ち着いて飯を食え。食事の時間を削ったところで、大して時間は変わらない」


男はそう言って、また肉を口に入れた。


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