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天空の城を貰ったので異世界で楽しく遊びたい  作者: 井上みつる/乳酸菌/赤池宗


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店が建った

天空の城、コミカライズ版がもうすぐ発売です!

わたくしが一番楽しみにしております!

 何かが起きている。


 それは現地を通過した旅商人だけでなく、見回りの兵士や一部町民にも徐々に噂として広がっていた。


 いや、事実何かが起きているのだから噂とは少し違うのだが、肝心の何が起きているのかが分からないのだから仕方がない。


 ただ一つ言えることは、僅か五日で街道に建物が建った、ということだ。


 それも、作ったのは数十体からなるゴーレムである。


 当初、騎士団が周囲を取り囲む事態にもなったが、ゴーレム達が意に介さずに建築業に勤しんでいた為、争いにはならなかった。


 上から何か言われたのか、三日目は騎士団だけでなく千人以上の傭兵団まで組織されたが、結果は変わらなかった。


 そうこうしているうちに、何処からか建材を運び、眩い光を指先から発するゴーレム達により、建物は出来上がっていた。


 大量のゴーレムを保有すると噂のブラウ帝国がカルルク王国を滅ぼす為に砦を建設しただの、カルルク王国の経済力を根こそぎ奪う為に周辺諸国が結託しただの、例の天空の国が圧力を与えているだの、さまざまな憶測が飛び交う。


 だが、出来上がった建物の入り口に掛かったのは、奴隷売買を象徴する首輪のマークの看板だった。


「……何処の奴隷商人だよ」


「いや、あんな大量のゴーレム、どこぞの大国が絡んでいないと集められないだろう」


「そもそも、なんでこんな街道の途中に……」


 謎が謎を呼ぶ奴隷販売店の出現は人々の好奇心を煽り、噂は瞬く間に広がった。


 六日目の朝、謎の奴隷販売店の前には行商人を中心とした人だかりができた。


 そこに、ニコニコと笑顔の商人らしき男が顔を出す。


「やあやあ、皆様。よくぞ参られました。この店はある国が経営する奴隷屋です。カルルク王国の許可を得ましたので、カルルク王を通さずにこちらで売り買いさせていただくこととなりました」


 男がそう告げると、周りの人々がざわめく。


「国が経営だと?」


「このカルルク王国の中心で、他の国がそんな商売出来るものか。そんなことをすれば、第三国から睨まれるのは間違いない」


「いや待て、そもそもあの男はカルルク王国の奴隷商人じゃないか。確か、レジニシオン商会の……」


 にわかに騒がしくなった観衆を前に、ディエゴは得意げに胸を張り、口を開いた。


「私はレジニシオン商会の商人に間違いありませんが、同時にこの店を、天空の国の店を運営する店長でもあるのです」


 ディエゴが口にした言葉に、人々は様々な反応を見せる。素直に驚く者もいれば、嘘と判断して顔を顰める者もいた。


 その様子を楽しそうに眺め、ディエゴは咳払いを一つする。


「うぉっほん。今は開店直後ということもあり、扱う奴隷はレジニシオン商会の奴隷ばかりですが、いずれ多種多様な奴隷を扱うことになるでしょう。その際には是非お立ち寄り下さい」


 そう口にしてから、ディエゴは片手を顔の高さに上げ、人差し指だけを立てた。


「ただし、この店の奴隷には一つだけ、他の奴隷店とは違うことがあります……それは、奴隷は全て最上級奴隷として契約することです」


「最上級奴隷?」


「なんだ、それは?」


 ディエゴの言葉はその場にいる皆を困惑させる。顔を見合わせる人々の中から、一人の女性が前に出た。見事な赤い衣装を纏った高貴さを漂わせる女性だ。少女とも呼べそうな若々しさだが、その女性は他の観衆とは明らかに一線を画す格のようなものがあった。


 黒い艶やかな髪を揺らし、その女性、ユーリは口を開く。


「つまり、出自が確かな奴隷、ということでしょうか? 例えば……元貴族の子女、といった……」


 ユーリがそう口にすると、周りにいた者たちからさざ波が広がるように声が上がった。


 だが、ディエゴはそれに一言否定の言葉を発して押し留める。


「いえいえ、たしかにそういった身分の方もおりますが、それだけではありません。村娘、戦争孤児、捕虜など、本来であれば大した価値にならない奴隷もおります。しかし、当店では全て最上級奴隷です」


 と、ディエゴが説明すると、周りの者達の頭の上に疑問符がいくつも浮かんだ。


 その表情を確かめるように順番に確認し、ようやくディエゴは解説をする。


「ここでいう最上級奴隷の意味は、奴隷自身が最も多くの、そして最大限の権限を持っているということです。それは同時に契約者に責任が生じるということでもあります。契約者は奴隷のために生活環境を整え、必要な分の食事を与えなければなりません。もちろん、死ぬような労働をさせてもいけません」


 それだけ一気に話すと、ディエゴは両手を広げて笑った。


「つまり、最上級奴隷とは奴隷契約をしただけの一労働者であり、家族や友ともいえる存在なのです」


 自信たっぷりにそう告げたディエゴに、周りの商人らしき者達は唖然と目を瞬かせ、小さく呟く。


「……いや、売れないだろ、そんな奴隷……」



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