14-2 《一桁》達の能力
『―――そうねぇ。《5》姉さんで間違いないわよぉ』
ハチと連絡を取っているのは、《9》だ。No.666に更新を促したのは《5》で確定、という連絡をもらった。
「…ふぅん。理由、分かるか?」
スマホの通話でハチが聞くと、
『《5》姉さんは多分、人間達と『暇つぶし』してるのよぉ。昔は人間との連絡って、鳥なんかに手紙持たせてたらしいし? でも今は、姉さんも人間の道具を使ってるから、No.666への、お礼のつもりだったみたいよぉ』
そう言われ、ハチはとりあえず、分かった、と頷いた。
『《3》姉さんもいなくなっちゃって、寂しくなったわ…。また何かあったら、連絡ちょうだいねぇ』
《9》はそう言って、通話を切った。
◇ ◇ ◇
ハチは《最初の番号》にも精神感応で連絡を入れる。すると、ミスターが、
((…ふむ。すると《5》は、自分で行かずに《7》を動かしたという事か…))
((まぁ、そもそも《5》のヤツに長距離の瞬間移動は無理ですよ。アイツは万能型だけど、特化した能力ってのを持ってないですからね))
ミスターも、そういえば、と思い出したらしい。ハチは続けて、
((昔から《5》は、《7》を都合よく使ってたじゃないですか。《7》のヤツも、文句言いながら《5》の言う事聞いてたし…))
((…そうだったな。私と《2》、それから《5》は万型能、《3》と《4》は思念伝達型…))
((《4》は回復型でもありますからね。俺と《6》、《9》は念動力特化型…、俺達はマイクロ型だけど、《7》は同じPK特化型でも、マクロ型ですしね))
((…そうだな。《7》は別として、マイクロ型の中でも、君ほど精密な能力の持主はいないだろう。おまけに『鑑定眼』持ちだ))
念動力特化・マイクロ型の中でも、ハチは特別だ。彼の透視とPKは、原子レベルで対応できる。
特別な機材も使わず、生体と機械を繋げる奇跡の技は、この能力によるものだ。
そして『鑑定眼』。
彼らの『錬金術』は、PKによる元素の融合によって成されている。
《6》と《9》も分子レベルでほぼ同様のことが出来るのだが、ハチには及ばない。
ハチは『鑑定眼』により、素材の鑑定はもとより、素材同士を組み合せて、新たな素材を生み出すことも可能なのだ。
((《7》は我々万能型に近いが、そういった意味では、久吾も《7》と類似しているのだろうね。《7》と私の中間、というところか…))
ミスターが言うと、ハチは、
((型的にはそうですけどね。…アイツの場合、潜在ESPが桁違いだ。もしかすると、我々《一桁》を超えているかも知れません))
ふうむ、とミスターが呻く。
((…《2》が欲しがるのも無理はないな。あやつが久吾を吸収すれば、《0》をも凌駕し、我等の頂点に立つことも可能だ))
聞いてハチが顔をしかめながら、
((それは困りますね。奴は人間を嫌っている。《0》の意思に反して、人間を根絶やしにしかねない))
((………そうだな。正に『方舟』の再来だ))
ミスターはそう言ってため息をつき、
((《0》は『ノア』としての生を終えてから、人間に干渉しない生き方を選択した。我々もそれに倣い、極力人間と関わらずにいるが…))
ハチは苦笑しながら、
((久吾が人間相手に、霊薬で商売してるのはどうなんですかね?))
((一応は気をつけているんだろう? 我々は『傍観者』だ。…詰まるところ、我々が人の上に立ったり、人を滅ぼすようなことがなければ良いのだ。人間同士の諍いでも、どちらかの味方をしてはいかんのだよ))
((………))
ハチは聞きながら、今現在宮殿にいる《一桁》達が、『人』を圧倒する能力に重きをおいて更新していることに疑問を感じていた。
ミスターは、
((まぁ疑念は残るが、《5》の行動に関しては様子見で良いだろう。彼女はどちらかというと穏健派だ。《3》も消滅した今、後は《0》の目覚めを待つしかないな))
ハチも、そうですね、と頷く。
とりあえずハチは、ミスターとの話を終わらせ、一息つく。
―――それよりも、今現在、ハチには大きな気がかりがあった。
ファリダが研究所から姿を消したのだ。




