21-6 乱戦
「…あなた達と共闘、という訳ね。不本意だけど」
《5》がぬいぐるみ達に声をかける。めぇともっちーは、
「おう!」
「ヨロシクですメ!」
返事をすると、《5》は、
「悪いけど、攻撃はあなた達に任せるわよ」
「メ!?」
「何で!?」
《5》は《9》を見据えながら、
「…私はそもそも戦闘タイプじゃないのよ。そのかわり、防御に徹するわ。………その前に」
《9》の笑顔が目の前に見える。《5》は自分の前に見えない壁を作りながら、
「………《9》」
「…なぁに?」
一応会話を試みる。
「天使達を解放する気はないの?」
「あるわよぉ。人間達を全て洗い流したら、解放してあげないとね。この地球の再生には欠かせないものぉ」
そう話している間を割って、飛行形態のもっちーが《9》に向かって行った。
「ぬおぉ! みー君達を出せー!」
《9》は自分をバリアボールで包み、防御する。刃が弾かれ、チィン! と鋭い音が響く。
「お話し中よぉ。邪魔しちゃダメでしょ?」
《9》が能力で水分を固め、氷の刃をもっちーに向けた。…が、それは地面に、ボトボト、と落ちていく。
「!? あらぁ…?」
すると《5》が微笑んで、
「…成程ね。あなたにはまだ『神』に手を出すな、という命令が生きているのね」
「! この子達、『神』なのぉ?」
めぇともっちーが叫ぶ。
「ワタクシ達は!」
「付喪神なんだぞ!」
《9》の顔が僅かに歪んだ。が、すぐさま何やら指で合図をする。すると、
「!? 何…!?」
《9》は数十体の軍人姿の人間型を召喚した。
「一応拾っておいて良かったわぁ。《6》兄さんのところにいた人形達よぉ。…まぁ、もう人間部分なんか残ってないけど」
人間型達は銃を持っている。武器を構え、ぬいぐるみ達に発砲してきた。
「「ヒャアァ!」」
…だが、《5》が張ったバリアの膜で、ぬいぐるみ達は無事だった。
「…もう、《5》姉さん、つまらない意地なんか張らないで、こちらに戻って来なさいよぉ。今なら許してあげるわよぉ」
「私はもう、戻る気は無いわ。…でも、一つ教えてもらって良いかしら?」
《9》が笑顔で、なぁに? と訊くと、《5》は、
「…人間を流した後に天使達を解放しても、たぶん彼等の怒りに触れて、消されるだけよ。あなた達、それでも良いの?」
聞いて《9》は微笑んで、
「私は別に構わないのよぉ。《2》兄さん、…あの人の望み通り、穢れた人間達を消して、美しいものだけ残る世界を作れれば、ね。…きっと天使達も、《2》兄さんが《1》と《最後の番号》を吸収すれば、敵う訳ないでしょぉ?」
《5》は少し驚きながら、
「…それは、………あなたは《2》のためだけに、こんな事をしていると言うの?」
「フフ…、そうよぉ。私は、彼を現在の『ノア』に…、ううん、この世の頂点に押し上げたいの。…そう、彼のためなら何でもするわよぉ」
そう聞いて、《5》はため息をつきながら、
「………あなたも大概、歪んでるわね。でも、私はあなたのそんなところ、嫌いじゃないのだけれどね」
《5》と《9》の周りで、めぇともっちー、それからぬいぐるみ達と同様に《5》にバリアの膜を張られたヴァレリーと李、キーラとオリヴィアも、人間型達と格闘している。
《5》は、自分にもバリアの膜を張り、全てのバリアを更に強化する。
◇ ◇ ◇
「めぇチャン………、私、…お母様、って…」
風月が戦いの様子を、離れたところから見て呟く。月岡も一緒だ。月岡は、
「三枝、もう少し下がれ。銃を持っている奴らがいる」
「で、でも…! …わ、私も戦えます! へーさん! 私も…!」
すると、風月に銃を向けた人間型が発砲した。
「! 危ない!」
思わず風月を庇った月岡の背を、弾丸が貫いた。
「月岡さん!」
風月が叫ぶ。だが、弾丸に貫かれたはずの月岡の体が一瞬、カッ! と光った。
「………?」
月岡は胸元に熱を感じ、懐を探る。
胸ポケットに入れた警察手帳に挟んだ、ミスターがくれたカードから図柄が消え、真っ白になっていた。
「…まさか、これが………?」
すると《5》から月岡達に声がかかる。
「あなた達、遅れてごめんなさい。今、バリアの膜を張ったわよ」
そう聞いて、風月が人間型達に向かっていく。月岡も拳銃を構え、援護にまわった。
風月は格闘に加わりながら、
「めぇチャン! ここは私達が! …あなた達は、あの女のところへ!」
そう聞いて、めぇともっちーが《9》に向かっていく。
めぇともっちーの身体が、一瞬青く光り、その光が強く、白く変化していった。
「!? 何…!?」
《9》が僅かに動揺する。
「その箱、開けて下さいですメ!」
自分に向かってくるぬいぐるみ達を、バリアボールで防御する。
「…開ける訳ないでしょぉ? まさか、私を倒すつもり? 私じゃないと箱は開けられないわよぉ?」
一瞬、くっ、と攻撃を躊躇するぬいぐるみ達だったが、
((―――――もっちー!))
「! みー君!?」
もっちーに、ミカエルからの精神感応が届いた。




