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天使の魂色  作者: 豆月冬河


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18-3 二人の《二桁》

咳だけ止まんないorz

 「…《(ベート)》、私はあなたの意に賛同します。この地球(ほし)が浄化されるなら、多少の犠牲は止むを得ないでしょう」


 ―――久吾が千里眼で見た光景は、《(ベート)》にひれ伏すマイシャの姿。


 「…! マイシャさんが、《(ベート)》さんの下へ…」


 「「!?」」


 ミスター達が驚く。ミスターはマイシャに精神感応(テレパシー)を送る。すると、


 「………駄目だ。ブロックされた」


 ミスターが言う。ハチもマイシャに精神感応を送ってみるが、こちらも駄目だった。


   ◇   ◇   ◇


 ―――マイシャは、以前緑の結界を張っていた周辺の様子を、プライベートステージ後に鳥を使って観察していた。その能力は、人間がドローンを使うようなものだ。

 果物の収穫を一緒に行っていた人間の家族が、その後どうしているのか、と。


 …だが、その家族は、同じ集落の人間達に殺されていた。

 理由は、果物の供給が出来なくなったからだ。

 集落の人間達は、家族を殺し、家に火をつけ、


 「…いいか、コイツらは火事で死んだんだ。俺達が喋らなきゃ、それで済む話だからな」


 「ああ。…しかし『果樹園』は結局見つからず、か…、クソッ」


 ―――マイシャは憤る。

 所詮、人間の本質というものは、そういうものだ、と痛感する。


   ◇   ◇   ◇


 「―――よろしい。それでは邪魔の入らぬうちに、ひとまず貴様を方舟へと案内しよう」


 《(ベート)》はマイシャにそう言って、マイシャの手を取った。

 一瞬、久吾は地球の裏側にいる《(ベート)》に睨まれた気がした。

 《(ベート)》が自分とマイシャをバリアボールに包み移動しようとする際、突然、久吾に向かって精神感応(テレパシー)が送られてきた。


 ((…《最後の番号(ラストナンバー)》、南極で待っていてやろう。皆で来るが良い))


 「!」


 驚く久吾を余所に、《(ベート)》達は瞬間移動で宮殿に戻ったようだ。


   ◇   ◇   ◇


 「…南極に来い、と?」


 ミスターに問われ、久吾は「ええ」と返事をする。ミスターは、


 「だが、今すぐという訳にはいかぬ。先程から言っている通り、作戦を………」


 ―――ふいに、何者かの気配が感じられた。


 「!? 何でだ!? この家には結界が張ってあるのに…」


 ハチが言うが、これに答えたのは《(ヘー)》だった。


 「………来たわね」


 そう《(ヘー)》が言うと、気配の元が姿を現す。

 久吾達と同じ顔…。全身黒ずくめだが、久吾と違いスーツではなく、もっとラフで動きやすい服装だ。


 「む…、君は?」


 ミスターが問うと、代わりに《(ヘー)》が答えた。


 「彼はロシア周辺を拠点に世界を暗躍する『ホシェフ(闇の)イルグン(組織)』の総帥…、…そして、かつて私達の前から姿を消した《二桁(ドゥープレクス)》、…No.56よ」


 全員が驚く。

 No.56は鋭い目つきでミスター達を見つつ、静かに言った。


 「…初めまして、《(アレフ)》。それから《(ヘット)》と、《最後の番号(ラストナンバー)》」


 ミスターは《(ヘー)》に、


 「これは一体…、どういうことなんだ?」


 すると《(ヘー)》が、


 「…私が持つ『人脈』、とでも言うのかしら…。世界中に人間の協力者を作ってきたのだけれど、それは『彼』…、No.56と繋がりが出来たからなの」


 No.56が頷く。ミスターは、


 「何故私に何も言わなかった?」


 「言う必要あったかしら? あなたはいつも、それどころじゃなかったでしょう? 魔法の研究だの、女神の捜索だの…」


 《(ヘー)》にそう言われ、ミスターは、ぐっ、と喉を詰まらせる。《(ヘー)》は、


 「とにかく彼も、…《(ヘット)》、あなたと同様に他の複製(コピー)達の情報を集めてくれていたのよ。そして…」


 《(ヘー)》の次の言葉は、No.56が引き継いだ。


 「…《(ヘット)》。君が分かっている仲間の情報は、No.93、No.382、No.432、No.588、No.596、No.611、No.686、No.707、No.723、No.733 、No.742…、そしてNo.795。合っているか?」


 ハチが驚く。


 「あ、ああ…。この間のプライベートステージに来られなかった奴らを入れて、そうなるが…」


 No.56はため息をつき、


 「………それで全部だ」


 「!? 全部、とは?」


 ミスターに言われ、No.56は、


 「言葉通りだよ。No.93が保護していた13体は、寿命で死んだのも含め全滅。…それから、それをやらかしたNo.666は《最後の番号(ラストナンバー)》に殺られ、No.37も寿命で死んだだろ? だから残っているのは、さっき言った12体で全部だ」


 「……………」


 全員が息を呑む。No.56は続けて、


 「…まぁ、俺も《(ヘー)》から事情を聞かなけりゃ、あんた等に会うつもりはなかったんだけどな。実際、相当不味い状況だろ」


 「? どういうことだ?」


 ミスターが聞くと、No.56は顔をしかめ、


 「…察しが悪いな。ホントにコイツら大丈夫なのか?」


 《(ヘー)》に尋ねる。《(ヘー)》もため息をつき、


 「仕方ないわよ。この人達、自分が興味を持てない物事には、あまり関心が無いのだもの」


 ミスター・ハチ・久吾が「?」と狼狽える。No.56は、仕方ない、とため息をつき、


 「《(ヘット)》、今からすぐに全員を集めろ。出来たら俺達に関わった人間達も一緒に」


 「? 何でだ?」


 ハチが言うと、No.56は、


 「恐らく、これから始まるのは、俺達の吊るし上げだ。《(ベート)》は人間達を使って、お前ら《一桁(ウーニウス)》とNo.795以外の複製(コピー)を排除しようとするだろう」


 「「!?」」


 驚く三人を余所に、No.56は続ける。


 「こうなったからには、《(ベート)》にとって複製()達は邪魔だからな。まずは人間達に俺達を吊るし上げさせるため、見せしめに何処か…、そうだな、ホワイトハウスかクレムリン辺りが妥当か?」


 「!? それはどういう…」


 ミスター達が驚いていると、急に久吾の家のテレビやハチのスマホなどの画面が開き、映像が流れる。

 そこに映ったのは《(ベート)》の姿。それから《(テット)》…、《(テット)》の髪の色は誕生の時と同様の黒髪に戻っていた。


 「「!?」」

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