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危険な森で目指せ快適異世界生活!  作者: ハラーマル
第7章

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第334話:移住者たち

興奮冷めやらぬボンブたちだったが、一先ずは他の難民たちと同様に、まずは移住者説明会に参加してもらう。

呼び方や口調は、ドランドと私の互いの様子を見て、同じ扱いになった。私は「嬢ちゃん」だ。



「傾聴せよ!」


レーノの声に、広場で振る舞った簡単な食事を終えたばかりの難民たちの視線が集まる。

うう、やりたくない・・・

とはいえ、最初ばかりはね。


偉そうな正装に身を包み、壇上に上がる。黒を基調とし、金ピカの刺繍が複雑に織り込まれた軍服調のパンツスタイル。この刺繍は、カベアさん渾身の作品らしい。フォレストタイガーの毛を丁寧に染色したらしい。・・というか、このマントはいるの?

にしてもさ、最初のインパクトとはいえ、呆れるほどの騎士ゴーレム並べてるのね。威圧感半端ないって。


ふぅー・・・


「・・・私は、コトハ・フォン・マーシャグ・クルセイル。この地を治める、カーラルド王国のクルセイル大公よ」


私の言葉に、一部の難民が一斉に、反射的に頭を下げた。それを見て、見よう見まねで頭を下げる他の者たち。

最初に頭を下げた人たちは、貴族なんかと会うのに慣れてるのかな?


「此度は殿下のご配慮により、過ぎた礼は不要です。頭を上げなさい」


再びレーノ。

そのむず痒くなる感じのやつ、やっぱ苦手だ。


「私はあなたたちを歓迎します。私の名において、あなたたちをクルセイル大公の保護下に置き、外敵から保護することをここに宣言します」


私の言葉に、「おおっ」とざわめきが起こる。

一応、この辺はカイトが説明しているとは思うんだけどね?


何よりも、これが大切とのこと。

彼らは、ダーバルド帝国の侵攻を受け、ジャームル王国を、故郷を追われた者たち。

この地には保護を求め、家族の安全を求め、全てを捨てて移住を決断した。だからこそ、まずはその保証を宣言する。


「今日より、あなたたちはクルセイル大公領の領民です。これまで暮らしていたジャームル王国とは、違うところが多いでしょう。過去を全て捨てろとはいいません。ですが、ジャームル王国での暮らしと違うところは受け入れてもらう必要があります。今日よりあなたたちは、ジャームル王国の国民ではなく、カーラルド王国の国民であり、クルセイル大公領の領民なのですから」


私の言葉に、再度頭を下げる人たち。

ダーバルド帝国により故郷を追われ、ジャームル王国を出た。死に物狂いでカーラルド王国へと逃げ出したはいいが、難民として邪険にされる日々。

彼らの中には、ジャームル王国の民として過ごした日々は残る。けれど、今日からはクルセイル大公領の領民だ。

郷に入れば郷に従え。

クルセイル大公領ってのはいろんな場所から集まった者たちから成る。最近では、長らくクライスの大森林で暮らしてきた獣人族すら仲間になったしね。

けれど、そんな領民がこれまで生み出し育んできた領の風土がある。それには、従ってもらう必要がある。


「今後の詳しい話は、レーノから説明を受けてもらうわ」


そう言って、私は壇上から姿を消す。

後はレーノたちのお仕事。

最初にするのは住民登録。前世でいう、戸籍かな?

せっかく我が領は人が少ないのだから、しっかり領民を管理できる体制を整えることにしている。

領民は全てが住民として登録されている。生年月日に、父母の名前。そして住所なんかが記録されている。

ゆくゆくは、税金を納めてもらう際に利用することや、持ち家の登録と紐付けたり、こちらから何か補助を出す際の管理に用いたりする予定だ。

日本のシステムを知り、そして一から制度を作れるからこそ導入できたわけだ。



 ♢ ♢ ♢



「魔法を使える者が多い?」


移住組の諸々の登録が済み、順に仕事の希望を確認していった。

何よりも望まれていたのが文官。万年人手不足の中、仕事をここぞとばかりに増やす領主のせいで、文官たちは悲鳴を上げていた。・・・ごめん。

そんな中、移住組の中に2種類の文官希望者が、それなりの数いた。


まずは、商会で働いていた人たち。

商人は売り物さえあればどこでも活動できるとはいえ、中小規模の商会では本拠とする場所とその周辺でしか活動はできない。

そんな本拠を捨てざるを得ない状況になれは、必然、廃業だ。

築いた地盤を捨て、自身の、家族の命を優先した商人たち。彼らは、我が領で待望の文官となった。

後々、設立予定の領直轄の商会の担当となってもらうのも手かもしれない。


次に、元々文官だった者たち。

ダーバルド帝国軍により陥落した町々で、文官として働いていた人たちだ。

さすがに幹部クラスは貴族ばかりなため、移住組は下級の文官出身者が多かったが、言い換えれば実働部隊。

まさに戦力となり得る人材だ。


レーノやヤリスの下で働く文官たちが泣いて喜んでいたのを見て、さすがに申し訳なくなった。

とはいえ、どんどん頑張ってもらうほかないのだけれど・・・



文官として任官する者はいち早く確保されたが、次に人員の確保に動いたのは騎士団だ。

それこそ、


「騎士団がテストしたところ、うちの騎士団でも十分に通用するレベルへの成長が見込める者が多数おりました。カーラルド王国、旧ラシアール王国の基準で考えても、この数は異常です」



「うーん・・・。種族は?」

「ほとんどが『人間』です。一部、『エルフ』や『魔族』とのハーフであると申告した者もおりましたが・・・」


何やら心当たりがありそうなレーノ。


「なんか思いついたの?」

「はっ。推測の域は出ないのですが・・・」

「大丈夫。そもそも、原因よりも、魔法を使える有望な人材が多かったってのが本題だし」

「そうですね。ジャームル王国は、私の知る限りでも、ここ200年ほどの間に複数回の政変を繰り返しているのです」

「政変?」

「はい。要するに、王家が変わっています」

「貴族が、国王を倒してってこと?」

「その通りです。派閥争いが激しく、次代の国王を選ぶたびに揉めてきました。その結果、王家が倒れること幾度か」

「・・・それが、魔法使いが多いことに繋がるの?」

「はい。ジャームル王国でも、魔法を使える者は重宝されます。そして、魔法を使える者は貴族やその縁者に多いのです。政変の末、貴族が没落することも多かったのでしょう」

「なるほど。魔法に精通した者が貴族から平民になって、そのまま平民として暮らしていって・・・」

「十分に考えられるかと」

「そうだね。まあ、それが理由なら、こっちが気にすることはないね。有望な人材ゲットだ」

「はい」


そんなわけで、騎士団の戦力も大幅アップ。

もちろん、魔法を使えても、戦闘職には就きたくない人もいる。そんな人たちには、土木工事や研究の手伝いをしてもらう。


農業をしていた者、多くの家畜の世話をしていた者、ボンブたちのように物作りをしていた者、などなど・・・

人手不足のクルセイル大公領では、人手を余すことはない。


こうして、問題なく移住組の働き先は決まっていった。



そんな報告を受け終わると、カイトとキアラ、そしてオプスが部屋へ入ってきた。


「いらっしゃい、3人とも」


私の呼び出しに応じてくれた3人だ。


「まずは、カイト。改めて移住組の選定と移動、お疲れ様」

「ありがとう、コトハお姉ちゃん」


私が褒めると素直に頷くカイト。


「キアラもサポートお疲れ様」

「はい」


キアラは真っ直ぐと。


「それでね、2人に新たな任務」

「任務?」

「うん。飛空団を率いて、王都へ行ってきてくれる?」

「「へっ!?」」


よしよし。

いいリアクションだよ、2人とも。


「そう。まずは、飛空団のお披露目ね。今回、ジャームル王国との国境沿いに飛空団を派遣したことは、ぼちぼち王都のハールさんたちにも伝わったでしょ?」


レーノに確認する。


「はい。最重要の場所ですし、日常的に情報共有は行っていると思われます。やり取りの時間を考慮しても、既に伝わっているかと」

「うんうん。それでね、今後はもっと遠慮なく、飛空団を使うつもり。それこそ、カイトたちが王都の学院に通うときとかね」

「・・・うん」

「だから、一応、きちんと紹介しておこっかなって。カイトも最初にそれを提案してたでしょ?」

「・・・そうだね。いや、飛空団はうちの貴重な戦力だし、移動速度が比べものにならないから。利用するべきだと思う」

「うん。でさ、どうせ驚かれるからね。できれば、王都のうちの居屋敷にノンストップで乗り入れられるようにしたい。混乱を避けるために、王都の近くで降りて、そっから馬車とか面倒だしね。ああ、でも、マーラたちには先に説明しないと・・・」


マーラたちは、森の中で活躍してもらうつもりだけど、先に説明しないと絶対拗ねるよね・・・


「・・・コトハ様」

「ああ、ごめん。それが1つね。後は、オプス」

「じ、自分ですか?」

「うん。あなたは、カイトの側近として、カイトと一緒にいてくれるんだよね?」

「はっ。誠心誠意、カイト様のサポートをさせていただきます」


オプスはカイトと年が同じこともあり、カイトの側近となった。

つまり、一緒に学院に行く予定だ。


「オプス。あなたたち『ワーロフ族』は、おそらくカーラルド王国では知られていない種族」

「はっ。承知しています」

「うん。だからね、カイト。オプスたち『ワーロフ族』、そして獣人族を、我が領の領民であり、私の保護下にあることを、説明してきてほしいの。馬鹿なことを考える奴らがでないように」



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