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flappers 1〜black side〜  作者: さわきゆい
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翼の折れた者

パン!という破裂音、そして、

「うわっ…」

「ひっ…!」

バラバラと落ちてきた天井の破片に、あたしと本郷は、思わず頭を抱えてしゃがみ込んだ。

と、もう一度、パン!と同じ音、そしてそこに、ボスッと鈍い音が重なった。


な…に?嫌な、音。

埃の中、目を開けたあたしが見たのは、白い半円状のモノが、ゆっくり回転しながら宙を舞って…


突然、()()は、光った。

燃え上がるような、一瞬の光。

宙に描き出される、光の片翼。そして、その一瞬で、花火みたいに飛び散った。

ただし、何も音はない。静寂の中の光の飛散。


その片隅で、あたしは絶望的な光景を目にしたいた。


片翼になった、ナオさん…

光となって砕け散ったのは、ナオさんの右の翼。

銃弾で、吹き飛ばされた翼…

ウィンガーの翼が折れたら…


「!!」

飛び散った光が消えると同時に、全身に圧力と悪寒が覆い被さってくる。

毛穴から、金属の粒子が入り込んでくるような感覚。

それは、体の中で共鳴して、耳の中で甲高い、不快な絶叫を産んだ。

思わず息を止めて頭を抱え込む。

本郷も、全く同じ姿勢になってたから、同じものを感じているに違いない。


「あ…ぐ…あぁ…」

体をこわばらせて倒れ込むナオさんの背中から、左の翼も溶けるように消えた。

床に倒れた体がビクビク痙攣し始める。


ナオさんはそれでも、必死にあたしと本郷の方へ顔を向けて、何か言おうとした。


さっきまで、あたしたち同様に、頭を抱えていた須藤さんが、本郷に銃を向けている。

「初めて実際に見たよ、翼が()()()ところ…さあ、これからどうなるか…君たち、知ってるかい?」


あたしは、ナオさんから目を離さなかった。

喘ぐような呼吸、震えが止まらない体…

「ナオさん!しっかりして!」

呼びかけることしかできない。どうすることもできない。


「お前…わざと…」

本郷の怒りを含んだ声に、

「いや、いや、いや」

半笑いの須藤さんが応じる。


「撃っちゃったのは偶然。まさか、翼に当たるとはね。聞いてはいたけど、ホント、即効やられるんだね。はは…脆いなぁ…」


脆い。ああ、そうだ。ウィンガーなんて…

その翼は力であり、最大の弱点でもある。

あたしも、聞いた知識だけだけど。


「つば…さ…が…折れたら…」

あたしの声はかすれていた。


「ああ、彼は死んじゃうね。もって10分か、15分てとこでしょ」

あたしの絶望を嘲笑うかのように、須藤さんはあっけらかんと言う。

人の生き死になんて、この人にはその程度の軽さで扱うものらしい。

あたしの目に映った須藤さんの顔は、新しいおもちゃをもらった子供のように、興味と期待で輝いていた。


「目の前でこんなものを見られるとはね。まったく…予想外のことばかり起こる日だ」

銃は構えたまま、チラリとあたしを見て、須藤さんは滔々と続けた。

「翼がはえていた場所から、急速に組織の壊死がすすむ。そのまま、内臓までやられればもちろん手の施しようがないし、まあ、その前にショックを起こして息絶える可能性が高い。少なくとも、今まで報告された症例はそうだったよ」


途中から、何を言われているのか聞いてなかった。。

ウィンガーとして、そのくらいの知識は仕入れてる。わざわざ講釈されるまでもない。なにより、得意げに語るその表情が許せなかった。

沸々とした怒りとかいうより、どす黒い嵐があたしの中で渦巻いている。


「翼は、超人的な運動能力を与えるくせに、折れれば苦痛を伴う死をもたらす。消えてしまえば、痕跡も残らないくせに、折れた時はその存在があったことを激しく主張する。意味が分からないよね」


…意味がわからない?ああ、そうだ。わからない。

なんで、ナオさんがこんな目に合わなきゃいけない?

ただ、真実を知りたかっただけだったはずなのに。

巻き込まれた彩乃さんや、未生ちゃん。

誰も、こんな状況を予想すらしてない。ありえない。


それなのに、この状況を作り出した人間は、薄笑いを浮かべて、ナオさんを観察している……

ただただ、興味深そうに、嬉々として。


その先は、考えるより前に体が動いていた。

何を言ったか、よく覚えてない。

ただこの人に、思い知らせてやりたかった。

完全にこの場を掌握したつもりのこのウィンガーに、あんたの思い通りにはいかないんだって。


あたしは、翼を出すと同時に、須藤に向かって突っ込んだ。



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