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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第3875話 滅びし者編 ――条件――

 暗黒大陸へ向かう航路の最中に発見された幽霊船により構築された幽霊船団。この対応のため、各地から霊力や退魔の力を操る者を招集。それでも足りないと考えたカイトはソラやセレスティアらも動員する事にする。

 そうして彼らの簡単な訓練を終えて1週間後と少し。カイトは今回の作戦で使用する船へと幽霊船との交戦を睨んだ仕上げを施すと、再び海賊島へと渡航。船の到着を待って、作戦会議を行うとその更に翌日。海賊島から幽霊船団の出没海域へ向けて出発する事になる。が、当然当て所もなく出発した所で見付かる事はない。なので今はまだ出発せず、全員港に用意された建物にて待機だった。


「さって……名残惜しくもなんともない海賊島ですが」

「にぃ、相変わらずだねー」

「オレは賊が嫌いだ。海賊も盗賊も、最近出てきたっていう空賊もな」


 楽しげに笑うソレイユの言葉に、カイトはどこか恥ずかしげに笑う。


「ま、そりゃそれで良い。ウチの領土にゃ滅多な事で盗賊も海賊も出ん。オレが出来るのは所詮手の内の事だけだからな」

「んー」

「で、ソレイユ。背中を貸してやってるんだから、きっちり海域は見張ってるな?」

「んー」


 カイトの問いかけに、彼の背に勝手に負ぶさっているソレイユがいつも通りの調子で頷いた。そうして彼女が状況を報告する。


「とりあえず今だけど、まだバルっちの言ってた最初の一隻も出てない。兆しもない……多分この様子だと今日は無理っぽいかなぁ」

「この様子、か……確かに今日は厳しいかもなぁ……」

「良いお天気だねー」


 ソレイユに続けて、カイトとユリィが上を見上げる。そこに広がるのは、雲一つない快晴。カンカン照りの太陽。思わず呑気に釣りの一つでもしたくなるような天気であった。というわけで上を見上げた二人だが、すぐにユリィが顔を顰めた。


「あっつい。ねぇカイト、あーつーいー」

「マジでな……こっちは初夏の陽気だ。てかお前らひっつくな。暑いんだよ」

「んー、にぃ、ユリィ、一口食べる?」

「「貰う」」


 ソレイユが差し出したアイスキャンデーに、カイトとユリィが堪らず齧り付く。彼女が先程から変な返事だったのは、単にアイスキャンデーを齧りながら話していたから、というわけだった。というわけで一口アイスキャンデーを口にして、カイトが一息ついた。


「はぁ……すでに雪がチラつくウチと違ってこっちはこれから夏か……こりゃ、暗黒大陸も暑そうだな」

「あっちに着く頃には夏本番っぽいねー」

「疫病には注意せんとならんそうだな……虫除けスプレーと蚊取り線香、準備しておこう」


 暗黒大陸がどういう状況か、というのは誰もわかっていない。ジャングルなのか草原なのかも全く不明だ。まぁ、わかっていないからこそ誰もが正式名称ではなく、地図上の黒塗りの部分。暗黒の大陸と表現するのである。


「ま、それはそれとしてだな。冷凍庫にアイスキャンデーは用意しておくか」

「さんせーい」

「やった!」

「うおっと! おまっ、アイス振り回すな!」

「あ、ごめん」


 喜んだ瞬間に反動でソレイユの持っていたアイスキャンデーがカイトの顔面へ一直線だったようだ。というわけでそんな他愛もない一幕を挟みつつも、カイトは改めて上を見上げる。


「はぁ……ただそれはさておいても、この天候じゃ幽霊船も出そうにないな」

「駄目だねー……これはもう絶対に無理」

「無理無理って、なんで無理なんだ? ティナちゃんも今日はダメそうとか言って飛空艇に戻ってたけど」

「「「んぁ?」」」


 元々三人で話をしていただけで、この港には当然三人以外にも人はいる。というわけで出発は無理となって建物に戻った者も少なくないが、ソラはそのまま残っていたようだ。


「ああ、それか……まぁ、こんなカンカン照りの太陽で、しかも今は夏だろ?」

「こっちはな」

「まぁな……それで夏と冬、太陽と月……生命力云々の話になってくるんだが、夏は生命力が満ちていると言われている。いや、言われているってか、この太陽を見りゃそりゃそうだろ、って話ではあるだろうけどさ」


 ソラの問いかけに、カイトは笑いながら三度上を見上げる。それに釣られて、ソラもまた太陽を見る。が、すぐに顔を顰めた。


「……うへ」

「あはは……ま、そんな塩梅で太陽がカンカン照り。気温もむっちゃ高い。夏を、生命を感じさせる陽気だろ?」

「そうだな」

「そういうわけで、夏になると流石に太陽の力が強すぎて、日中に冥府が溢れ出す事は出来ないんだ」

「溢れ出そうにも上から生命力が降り注いで掻き消える、ってわけか」

「そういうこと……ま、そういうわけでここまで太陽がカンカン照りになっちまうと、流石に幽霊船も表に出てこない。ソレイユ、周囲100キロぐらいの雲は?」

「あるけど、多分そこを限定しては難しいかな」


 カイトの問いかけに、ソレイユは肩を竦める。というわけで、カイトがはっきりと断言した。


「それでも雲があれば、太陽が隠れれば幽霊船も出られるが……流石にこの様子だと無理だな。多少隠れる程度じゃ流石に無理だ。もう少し雲が出てくるかしないとな」

「夜は駄目なのか?」

「これだけ晴れちまうと、残留する生命力で夜も厳しい。今日は一日無理だな」


 ソラの問いかけに、カイトは肩を竦める。というわけで、そんな彼がため息混じりに教えてくれた。


「幽霊船ってのはそもそも存在し得ない存在だ。それが存在している以上、色々と特殊な条件が重なった上での事になる。そんな幽霊船が出てくるには色々と条件が必要なんだ」

「面倒くさいんだな」

「面倒だぞ。それこそ運が悪いと一ヶ月足止めなんて事もあったそうだ……ま、流石にオレはそんな事になった事はないが……夏と晴天に阻まれて行動不能なんて良くある……まぁ、この快晴で自然消滅してくれりゃとは思うが……流石にそう都合良い話はないだろうな」

「あ、やっぱり無理なのか」

「流石にな。ま、そんな塩梅だから、今日はお前も適当に休んでろ。今日の出発はない」

「そか」


 カイトの断言に、ソラは一つ笑う。そもそも彼が冒険者ユニオンで一番の専門家と断言しても過言ではないのだ。その彼が今日は無理だと断言する以上、今日の出発はないと断言して良い。

 というわけで、ソラもまた他の退魔師・除霊師達と同様に今日の出発は諦める事にして、建物に戻っていく。そしてカイト達も流石に今日は無理と諦めたのか、それとも暑くなったのか、飛空艇へと戻る事にするのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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