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いつか陛下に愛を 小話集  作者: 朝野りょう


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ミヤ様の描いてくださったファンアートと、ミヤ様への御礼小話

2015年05月19日活動報告に掲載していますが、こちらにも載せることにしました。

小話の方は悪ゴキ○リが登場しますので嫌いな方は読まれないようご注意ください。

↓ミヤ様のファンアートです。(^▽^)


挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)



↓ファンアートを描いてくださったミヤ様への御礼小話です。

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■国王ファミリーのある日■


 王宮奥の居間には明るい陽射しの差し込んでいる。その窓近くの椅子に王妃ナファフィステアが腰掛けていた。

 その居間へ小さな影が駆けこんで来た。


「母様ぁ」


 て軽やかな足取りで王太子ヴィルフレドが母へと駆け寄る。額に汗を滲ませ満面の笑みを浮かべる王太子は、その手に大事そうに布張りの箱を抱えていた。

 王妃に仕える女官達や警護の騎士達は親子を微笑ましく見守っている。


「これ、母様にあげる!」

「この箱を母様にくれるの? まあ、何かしら?」


 王妃は息子から箱を受け取った。中には小さな物がいくつか入っているらしく、軽い。

 綺麗な石でも見つけたのかと蓋を開けると。

 ブンッ、という羽音をたて、何かが箱から飛び出した。

 結構大きな物体が王妃の眼前を掠め、それが何かを認識する前に、王妃は笑みを張り付かせたまま蓋を閉じた。

 これは、ヤバいヤツ……。王妃は蓋を手で上から押さえる。絶対に開かなようにと。

 そうしながらも箱の中のガサガサという音と振動は、箱を持つ王妃の手に伝わり続ける。ヤバいものが、動いているのが、その手に……。

 箱を開けた僅かの間に見えたのは、薄茶の木屑と、その木屑に埋もれるようにして黒っぽいヤツがいた。

 艶やかな焦茶の甲殻、細長い触角を持つ、ギジャっとした節のある足。木屑の山がザワザワと蠢くたびに見え隠れする怪しげなヤツ。

 王妃は顔をこわばらせはしたが、悲鳴はぐっと我慢した。ブーンッと時折耳に届く羽の音が、背筋に寒気を呼ぶ。

 不気味に振動する箱を窓の外に投げ捨てたい衝動にかられるのを、必死で留める。

 今、この手を放したら、一体何匹のヤツがこの部屋に放たれてしまうことになるのか。そんな恐ろしい事態だけは、避けなければ。

 王妃の箱を押さえる指先は震えていた。


「こ、れは……なぁに、かしらぁ?」


 王妃は何とか口端を引き上げて笑みを作り、息子に問いかけた。一応聞きとれはするが、変な声である。王妃としてはどうなのか。

 しかし、王太子ヴィルフレドは顔を強張らせている母には気付かない。母の前で誇らしげに自身の戦果を語った。


「大きなゴキブリを捕まえたんだ! すごくカッコいいのを母様にあげようと持って来たんだよっ」


 すごいでしょう。褒めて褒めて!

 そう訴える息子の瞳はキラキラと輝き、母を見上げている。

 しかし。

 五匹! 箱の中にまだ四匹もいるの!?

 王妃は倒れそうになっていた。息継ぎが苦しい。

 箱を持つ手には妙に力が入りすぎてしまい、指の筋がおかしくなりそうになっている。その手にはサワサワと小刻みに動く気配が、知りたくもないのにつぶさに感知できてしまい。手から全身へぞわぞわとした不快感が走る。耳は飛び去ったヤツの羽音を捕らえ続け、いつ近くに来るのかと神経を研ぎ澄まされていて。

 全身を強張らせた王妃は、期待を込めた瞳で待つ息子へ向けて何とか言葉を紡ぎ出した。


「り……立派な、……………………ゴッ……ね」

「ゴッ、じゃないよ、ゴキブリだよ」

「……そ、そう……」


 ヤツ名などフルネームでは呼びたくはない王妃である。この事態をどう乗り切るべきかと必死で考えながらも、その表情は胡乱だった。考えることを放棄しかかっているかのように。

 冷や汗が背筋を伝い、手が揺れ、箱が揺れる。身体が小刻みに震えているのだ。

 今すぐ大声をあげてこの場を走り去りたい衝動が込み上げる。

 しかし、目の前で嬉しそうに待っている我が子を落胆させるのも忍びなく。早く何とかしなくてはと焦るが、王妃は声が出ない。

 そんな緊張の居間に救世主が現れた。


「ナファフィステア、ヴィル」

「父様!」


 王の登場であった。

 まだ昼過ぎであり、通常であれば王は執務中の時間だ。だが時間に余裕がある時にはこうして居間を訪れ、家族団欒をこまめに取る。歴代の王とは違う方針だった。

 王太子は父王へと走り寄った。王太子も幼いながら公の場で父と会う時は距離が遠いことを理解している。そして、母もいるこの場では甘えても大丈夫だと知っているのだ。

 王は駆けよる息子を軽々と抱えあげると振り回した。

 あははは、と楽しそうな父子だったが、母は椅子に座ったまま動かない。視線すら上げようとせず硬直している。

 それに気づいた王は王妃へと声をかけた。


「どうした、ナファフィステア?」


 王は息子を降ろすと、大股で王妃に近づく。その後を小さな息子が追った。


「母様にゴキブリをあげたんだ! すごく立派な奴なんだよ!」

「そうか」


 その息子の言葉に、王は王妃が硬直している理由を概ね把握した。

 周囲の女官達は困った様子で王妃を見つめている。

 王妃が虫が苦手であることはわかっていても、息子の手前、頑張って我慢している王妃にどこでどう助けを出すべきか悩んでいるのだ。

 王は硬直したままの王妃の手から箱を取り上げた。


「ヴィル、これは余が貰おう。母の髪色に似ているので髪飾りにはなるまい。母には、母の好きな花を渡すがよい」

「髪飾り?」

「男が女に贈る時は、その身を飾る物がよいのだ」

「はい、父様っ」


 微笑ましい会話が繰り広げられる中、王妃は青ざめたままだった。その身を飾る物をゴッ……で想像してしまったために。


「母様の髪、ゴキブリと同じだね!」

「違うわっ! ヴィル。よーーーーく見てちょうだいっ、ぜんっぜん違うからっ。ねっ、ねっ、陛下っ!」

「……」


 王妃は、違うでしょっ、変な事を教えないでちょうだい、とギンッと眼を見開き陛下を睨みつけた。

 そして、引き攣り笑顔で母の髪とヤツとは全然違う色だと息子に何度も言い聞かせた。何度もゴッ……とは全く似ても似つかない!と。

 あまりの必死さに、息子もよくわからないながら頷いた。そうしなければいけないような母の迫力だったので。


 王は箱を官吏に預け、息子と剣術の練習に出かけた。もちろん、王妃もその後を追う。

 私が戻るまでに逃げたヤツを部屋から絶対に追い出しておいて頂戴と女官に強く念を押して。




「へ~いかっ……今夜は陛下の部屋で寝てもいい?」


 こっそり王妃は笑顔で王に告げた。にこにことした笑顔だが、絶対断らないでねという目力を込めている。

 王は驚いたものの黙って頷いた。王妃がこんなことを言うのはそうあることではない。先程の虫が原因なのだろうとわかっていたが、それには何の対処もせずにおく。

 それから十数日間は、日が暮れると王妃は陛下の部屋を訪れることになった。


 昼間なら目や耳で警戒できるけど、寝ているときに現れたらどうするの!

 とは王妃の言である。

 部屋から捕らえて出したという女官の言葉を信じたいけど信じきれず、王妃にはそれはそれで苦悩の種だった。自分に仕えてくれる女官達の言葉を信じられないなんて、と。しかし、もしもヤツが寝ている時に顔にとまったりしたら……恐ろしくてならなかったのだ。眠っていれば鈍い王妃にはわからないだろうに。

 だが、女官達にしてみれば王妃の行動に不満などあろうはずもなかった。夜に部屋へ戻った陛下の腕にべったり張り付く王妃に、いたく満足している陛下を見ることができるのだから。


 王太子ヴィルフレドに次は別の虫をお勧めしようと、官吏によって王妃が嫌いな虫から選定が密かに行われていたとかいないとか。

 平和な王宮奥は今日も明るい。



~The End~

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