何年でも、何十年でも
翌日もサラは子どもの姿のままで、俺は朝から彼女とともにのんびりとした時間を過ごしていた。
朝食をとった後は、庭を散歩したり近所の店を見て回ったり。何でも喜ぶサラを見ていると、こちらまで笑顔になる。
そして昼食を終えた今は、俺が子供の頃、サラによく遊んでもらったカードゲームをして遊んでいた。
「わあ、やったあ! またわたしの勝ち!」
「はい。サラは強いですね」
一度わざと負けてみたところ、それはもう嬉しそうな反応をするものだから、それが可愛くてつい負け続けていた。
……俺が子どもの頃、サラが常に真剣勝負をしてくれていたお蔭で、毎回負けては悔しがっていた記憶がある。
けれど大人になってからは常に俺が勝っていて、立場が完全に逆転していた。何でも顔に出るところや、悔しがる姿がかわいくて、つい全力を出してしまう。
「ルークおにいちゃんといると、すっごくたのしい!」
「本当ですか? ありがとうございます。俺もサラと一緒にいると、とても楽しいですよ」
こんなにもかわいいサラが、大人になるまで無事に育ってくれたことに心の底から感謝した。かわいすぎるあまり、危険な目に遭っていてもおかしくはない。
そんな中、子どもが好きそうな玩具を用意するよう頼んでいたレイヴァンが、屋敷を訪れた。
「サラちゃん、こんにちは。今日も可愛いね」
「こんにちは。ありがとう!」
「ルークはやめて、俺にしない?」
「口説くな」
けらけらと笑うと、レイヴァンは袋から取り出した玩具をサラに手渡した。魔導具と同じ仕組みで魔法が組み込まれた高価なもので、貴族の子どもに人気の品らしい。
サラの世界には魔法はないため、キラキラと七色に光ったり勝手に動いたりする玩具を不思議そうに眺めながら、夢中になって遊んでいるようだった。
「サラちゃん、ルークはどう?」
「ルークおにいちゃんは、優しくてかっこいいよ」
「だって。良かったね」
その傍らで、そんなことを時々サラに尋ねては、レイヴァンは含みのある笑顔を向けてくる。
「ルークはね、昔からずっとサラちゃんが好きなんだよ」
「きのう会ったばかりなのに?」
「サラちゃんはそうでも、ルークは違うんだ」
そうなんだと首を傾げた彼女もまた、俺へ視線を向けた。
「好きって、わたしとけっこんしたいってこと?」
「そう、ですね。したいです。とても」
サラのストレートすぎる問いに頷けば、視界の端でレイヴァンが吹き出したのが見えた。
子どもの姿をしていても、サラはサラなのだ。たとえ嘘でも彼女と結婚したくないなんてこと、言えるはずがない。
「うん、いいよ。ルークおにいちゃんなら」
「────」
「わたしが大人になったらね」
やがてサラはそう言って、照れたように微笑んで。あまりのかわいさに、俺は思わず口元を片手で覆い、俯いた。
「あれ? ルーク、泣いてる?」
「……泣いてない」
サラにとって深い意味はないと分かっていても、正直、泣きたくなるくらいには嬉しかった。子どもの頃の行き場のなかった想いが、少しだけ報われたような気さえしてしまう。
「サラが大人になるまで、待っていますね」
「でも、わたしが大人になるまでまだまだかかるよ」
「大丈夫です。俺は、待つのは得意なので」
俺はソファに座るサラと目線を合わせるようにしゃがみ込むと、小さな手を両手で包み込んだ。
「俺は何年でも何十年でも、サラだけを好きでいますから」
そう告げたところ更に照れてくれたのか、サラの柔らかな頰が赤く染まる。そんな姿もかわいくて、笑みが溢れた。
すると一部始終を見ていたレイヴァンは、再び吹き出す。
「ほ、本当にごめんね。すごい良いシーンなんだろうけど、絵面的にはルークが危ない奴にしか見えなくて」
「…………」
昨日も、カーティス師団長に同じようなことを言われた覚えがある。レイヴァンを睨んだ後、俺は首を傾げるサラに「あいつの言うことは気にしないでください」と微笑んだ。




